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孤独な青
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すぐ傍で物音がした気がして、静かに目を開けた。
月明かりすら入らない部屋は真っ暗で、僕は身じろぎもせず、ゆっくりと呼吸を繰り返す。暗闇に慣れてきた目が、微かに人影を捉えて、僕はその人影に向かって名前を呼んだ。
「ロウ、何をしてるの?」
人影が、僕のベッドのすぐ側に跪き、僕の頬をスルリと撫でる。
「ルカ様、この家の近くで狼の気配がします。あなたの様子を伺いに来たのかもしれません。俺は、ルカ様が心配で、守りに来たのです」
「それくらいで大げさだよ。それにロウの部屋は隣なんだから、わざわざ見に来なくてもいい」
僕の頬に添えられたロウの手を跳ね除けて言った。それでも懲りずにロウは、今度は僕の手を握る。
「そんな訳には参りません。他家の者は皆、ルカ様に目をつけている筈です。ルカ様には、常に危険が付きまとっているのです。俺が命に代えてお守りしますが、どうか、くれぐれも用心して勝手な行動はなさいませんよう…」
「僕が、一族の中では名門の青蓮(しょうれん)家の者でありながら、飛び抜けた出来損ないだから物珍しいだけだろ?それに、僕を攫いたいなら攫えばいい。どうせ出来損ないの僕など捕まえたところで、何の役にも立たないのだから…」
「ルカ様は、誰よりも優れています。それは、あなたがこの世に生を受けた時から傍にいる俺が、一番よくわかっている」
僕が異質な存在だということは、一族の中では広く知れ渡っている。こんな僕を褒め称えて傍にいる奴なんて、ロウくらいだ。
僕は少しイラついて、ロウの手を離そうと腕を強く引いた。だけど、引けば引くほど僕の手を握るロウの力が強くなった。
「ロウ…、僕は家族にも嫌われて見放されているんだ。おまえも、僕の守りなどやめて、何処へなりと行けばいいのに。おまえくらい優秀だと、喜んで迎え入れてもらえるのに…」
急にロウが腕を強く引くから、僕の身体が傾いてしまい、ロウの胸にぶつかった。
そのまま抱きしめられて抵抗しようとしたけど、昔から傍にある落ち着く匂いを感じて、僕はそっと瞼を下ろす。
「ルカ様、いつも言ってますが、俺はあなたの傍を決して離れません。ルカ様の傍を離れる時は、俺が死ぬ時です」
「…僕が死ぬ時かもしれないよ」
「俺がルカ様を先に死なすことなどあり得ない」
「相変わらず、変な奴だ…」
僕の髪を撫でる手が心地良くて、再び瞼がトロリと落ちる。意識が薄れていく僕の耳に、狼の遠吠えが聞こえてきた。近くで聞こえたそれが、だんだんと小さくなっていき、消える頃には、僕はロウの胸の中で眠ってしまっていた。
月明かりすら入らない部屋は真っ暗で、僕は身じろぎもせず、ゆっくりと呼吸を繰り返す。暗闇に慣れてきた目が、微かに人影を捉えて、僕はその人影に向かって名前を呼んだ。
「ロウ、何をしてるの?」
人影が、僕のベッドのすぐ側に跪き、僕の頬をスルリと撫でる。
「ルカ様、この家の近くで狼の気配がします。あなたの様子を伺いに来たのかもしれません。俺は、ルカ様が心配で、守りに来たのです」
「それくらいで大げさだよ。それにロウの部屋は隣なんだから、わざわざ見に来なくてもいい」
僕の頬に添えられたロウの手を跳ね除けて言った。それでも懲りずにロウは、今度は僕の手を握る。
「そんな訳には参りません。他家の者は皆、ルカ様に目をつけている筈です。ルカ様には、常に危険が付きまとっているのです。俺が命に代えてお守りしますが、どうか、くれぐれも用心して勝手な行動はなさいませんよう…」
「僕が、一族の中では名門の青蓮(しょうれん)家の者でありながら、飛び抜けた出来損ないだから物珍しいだけだろ?それに、僕を攫いたいなら攫えばいい。どうせ出来損ないの僕など捕まえたところで、何の役にも立たないのだから…」
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僕は少しイラついて、ロウの手を離そうと腕を強く引いた。だけど、引けば引くほど僕の手を握るロウの力が強くなった。
「ロウ…、僕は家族にも嫌われて見放されているんだ。おまえも、僕の守りなどやめて、何処へなりと行けばいいのに。おまえくらい優秀だと、喜んで迎え入れてもらえるのに…」
急にロウが腕を強く引くから、僕の身体が傾いてしまい、ロウの胸にぶつかった。
そのまま抱きしめられて抵抗しようとしたけど、昔から傍にある落ち着く匂いを感じて、僕はそっと瞼を下ろす。
「ルカ様、いつも言ってますが、俺はあなたの傍を決して離れません。ルカ様の傍を離れる時は、俺が死ぬ時です」
「…僕が死ぬ時かもしれないよ」
「俺がルカ様を先に死なすことなどあり得ない」
「相変わらず、変な奴だ…」
僕の髪を撫でる手が心地良くて、再び瞼がトロリと落ちる。意識が薄れていく僕の耳に、狼の遠吠えが聞こえてきた。近くで聞こえたそれが、だんだんと小さくなっていき、消える頃には、僕はロウの胸の中で眠ってしまっていた。
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