たゆたう青炎

明樹

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黄色い狂気

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太陽の下で煌めく金色の髪。額にかかるその髪の下に、同じ色をした妖しく光る瞳が覗く。


「黄麻…」
「そうだよ。僕は、黄麻(おうま) ハルト。君は、青蓮ルカ君だよね?」


人懐こい笑顔で話してくるハルトに、僕は迷惑だと言わんばかりの大きな溜め息を吐いた。


「なに?用なら早くして」
「え~?冷たいなぁ。僕らは同じ仲間なんだから、仲良くしようよ」
「……」


こいつもリツと同じタイプかと、思いっきり渋い顔をした。ハルトは僕の反応などお構い無しに、ペラペラと話し続ける。


「だってさぁ、去年はどの家の者も、お互い干渉しません、って態度だったじゃん?なのに今年は、いきなり青蓮と赤築が仲良くしてるし、そこに白蘭までちょっかい出してるし?なんか、僕だけ仲間外れみたいじゃん?ねぇねぇ、だから僕も仲間に入れて?」
「勝手に赤築や白蘭と仲良くしてればいいじゃないか。僕は、誰とも関わらない。あいつらは、僕につきまとって来ただけだ」


僕の言葉に、ハルトは大げさに両手を広げて驚いた顔をした。


「へぇ~?赤築と白蘭は、なんで君につきまとったんだろ?やっぱりあれ?君が、変身出来ない変わり者だから?」
「…あんたがそう思うならそうなんだろ。こんな何も出来ない僕に興味なんて湧かないだろ?もう行っていいかな」
「あっ!待って待ってっ。でもさぁ、君も名門青蓮の者なんだから、きっかけがあればきっと変身出来るよ?」


僕は、半分行きかけた身体を戻して、きつくハルトを睨んだ。


「しつこい…。僕は変身出来なくてもいいんだ。だから、もう放っておいてよ。じゃあ行くから」


教室に戻る為に歩き出した僕の背後で、ハルトの低く笑う声が聞こえた。


「く…くくっ。だめだよ。すっごく気になるから、試してみるね?」
「は?なにを…」


いつまでも僕を解放してくれないハルトに苛立って、文句を言おうと振り向いた僕は、大きく目を見開く。ハルトが、僕に向かって突進して来たのだ。
ハルトの右手が狼化して、鋭く尖った爪がギラリと光る。


ーーチッ。もう避けれない。


早々に覚悟を決めた僕は、微動だにせず、向かって来るハルトを睨んだ。と、そこへ、横からものすごい勢いで体当たりをされて、僕の身体が廊下の端へ飛ばされた。


「あっ、つぅ…」


強く肩を打ちつけて、顔をしかめて身体を起こした僕の目に、ハルトにお腹を突き刺されたリツの姿が映る。


「リツっ!」


僕の声にリツが振り向き、ニヤリと笑う。笑みを作る唇の端から、血がタラリと垂れた。


「バカ…っ!何やってっ!」
「なんだよ、最悪。なんで赤築が出て来んの?せっかく青蓮ルカを半殺しにして、変身出来るかどうか見ようと思ってたのにぃ…。なんだかシラケちゃった」


ハルトが呟いて腕を引く。リツがお腹を抑えて跪き、そのまま前にパタリと倒れた。


「あ~あ、無駄に汚れちゃったよ。ねぇルカ君、また今度試そうね?じゃあね」


ズボンのポケットからハンカチを出して、血で汚れた手を拭くと、それをリツの上に投げ捨てて、ハルトが去って行った。
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