たゆたう青炎

明樹

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青と青の攻防

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僕がリビングで寛いでいるところへ、ロウが帰って来た。先に帰った僕に特に何も言わず、自分の部屋へと消える。
ラフなTシャツとズボンに着替えて戻って来たロウは、キッチンに入って手を洗い、夕食の準備を始めた。


二人で向かい合って夕食を食べて、終わるとすぐに、僕は風呂場に向かった。
洗面所で服を脱いで風呂場へ入り、シャワーをかけて身体を洗う。左手で右肩を擦った時に、ズキリと痛みが走って顔を歪めた。


「っつ…ぅ、なに?」


鏡で肩を確認して、思わず息を詰めた。右肩が、結構な範囲で紫色に変色している。


「ああ…あれか」


昼間の、リツに思いっきり突き飛ばされた時のことを思い出した。もう一度鏡に映る肩を見て、僕は苦笑を漏らす。


「あいつ…、僕に傷一つつけたくないとか言って、こんなのつけてるじゃないか。あいつはいつも、言ってることとやることがチグハグなんだよ。でも、ふふ…これを見たらどんな顔をするんだろう…」


紫色の打撲痕を軽く押すと、ズキリと痛い。僕は、その痛みを愛しく感じて、変色した箇所を何度か撫でた。


あまりお風呂が好きではない僕は、ほんの一瞬だけ浸かって、すぐに風呂場を出た。ドアの前で、ロウがバスタオルを持って立っていた。


「なにしてるの?」
「着替えとタオルを持って来たのです。ルカ様、こちらへ…」
「……」


僕がロウに近寄ると、僕の肩にフワリとバスタオルがかかる。でもすぐに、ロウはバスタオルをずらして、僕の肩を覗き込んだ。


ーーああ…、ロウに知れると面倒臭い。


僕は小さく舌打ちをして、視線を泳がした。僕の足を伝い落ちた雫が、珪藻土のマットに染みを作っていく。
ロウが怖い顔で低い声を出した。


「これは何ですか?あとで…ゆっくりと話を聞きます。今は、早く拭いて服を着て下さい。風邪を引いてしまう…」


拭けと言いながら、ロウが全身を拭いてくれる。拭き終わると、再び僕の肩にタオルをかけて、「ちゃんと髪も乾かすのですよ」と言って、まだ濡れてる髪にキスをした。
 僕が小さく頷いて、服を着ている間に後ろでガチャリと音がして、ロウが風呂場へ入っていった。


適当にドライヤーを当てて、歯磨きも済ませて、さっさと洗面所を出る。


ーー絶対にロウはしつこく聞いてくる。すごく、面倒だ。


憂鬱な気分で溜め息を吐いて、僕は自分の部屋へ行くと、ベッドに潜り込んだ。


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