たゆたう青炎

明樹

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ロウが僕を優しく抱きしめて、髪の毛を撫でる。その手が頬を撫で下ろした瞬間、先程のことを思い出して、ロウの手を強く掴んだ。
顔を上げて、眉間に皺を寄せてロウを睨む。
ロウは、何のことかわからないという風に首を傾げて、目を丸くした。


「何か?俺は、あなたのそんな顔も好きですよ」
「そっ、そうじゃなくて…っ。ここ見てっ。これ、ロウが付けたんだろっ?」


僕が顔を横に向けて首を伸ばすと、ロウが「ああ」と呟く。


「もうっ、こんな所に付けたら見られてしまう…。付けるなら、みっ、見えない所にしてよ…っ」
「申し訳ありません。夢中でしたので、配慮が足りませんでした。一応、服で隠れる部分だけにしたつもりだったんですが…」
「え?他にもあるの?」
「もちろん。俺と愛し合ったという証ですから。今夜、風呂の時にでも見てみて下さい。白い肌に赤い花が咲いたようで、とても綺麗ですよ」
「な…っ…」


ロウから身体を離して、シャツを引っ張って覗き込む。
僕の胸からお腹にかけて、おびただしい数の赤い点が見えた。
途端に顔を熱くして、潤んだ瞳でロウを見る。ロウは、甘い目をして、もう一度僕を抱きしめた。


「俺の、あなたへの執着の証です。それが消えないうちに、また新しく付けなければ。出来れば、ルカ様にも俺の身体に付けて欲しい」
「う…ぅ…」


恥ずかしいのだけれど、嬉しい気持ちも湧き上がってくる。
僕は、初めての感情に戸惑いながらも、ロウの胸の中で小さく頷いた。


「ルカ様…」
「なに…?」


呼ばれて顔を上げた僕の唇に、ロウが軽く口づける。
今までよりも格段に甘くなったロウに、つい照れて素っ気ない態度を取ってしまう。
僕は「もう…っ」と頬を膨らませて、ロウの胸を押した。


「ロウってば、場所を気にしなさ過ぎ…。僕、教室に戻るから。ロウも早く行きなよ」
「俺は、いつだってルカ様に触れていたい。我慢出来ないので、仕方ありません」
「今までは、我慢してたじゃないか…」
「ん?何か?」


ニコリと微笑むロウに首を振って、僕は扉に向かう。後ろから、思い出したようにロウが声をかけてきた。


「ルカ様、最近、白蘭と黄麻はどうですか。あなたに近づいて来てませんか?」
「白蘭と黄麻?どっちも僕を襲って以来、見かけることはあるけど、近寄っては来ない」
「そうですか…ならいいですが。最近、あいつらが一緒に居るところをよく見るものですから。またルカ様に何かするのかと気になったのです」


僕は、振り返りながら答えてロウを見た。
今は、ロウが僕を愛してくれていることがわかったから、もう自分を役立たずなんて思わない。どうなってもいいなんて、投げやりにはならない。もし白蘭と黄麻が襲って来ても、僕は全力で立ち向かう覚悟だ。それに…。


「大丈夫だよ。だって、ロウが守ってくれるんだろ?」


僕の言葉に、ロウが力強く頷いた。


「当たり前です。俺の、たった一つの大切なあなたですから」
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