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一瞬でカッ!っと頭に血が上った俺は、瞬時に少年に飛びつき、首元に噛み付いた。
赤築も俺に続いて、少年の背中に牙を立てる。
俺は、あまりの怒りで目が眩み、周りの景色が白く濁って見えなくなっていた。だから、気付けなかったのだ。
それは、突然だった。
このまま少年を弱らせて青蓮家に連れ帰り、ルカ様の居場所を聞き出そうと考えていた。その俺の背後から、最も聞きたかった声が聞こえてきた。
「やめろっ!」
透き通るような少しハスキーな声。
その声を聞いた瞬間、俺と赤築がビクッと身体を震わせる。ほぼ同時に少年を離して、弾かれたように振り返った。
振り向いた先に、俺の手の届く位置に、ずっと捜し求めていた、ルカ様がいた。
一瞬ためらった後に、赤築がルカ様に近寄ろうとする。だが、ルカ様の鋭い視線と声に遮られた。
「来ないでっ!…ねぇ、ロウにリツ、何をしてるの?僕の大事な弟に、何をしてたのっ」
「ち、違う…っ、ルカっ」
「ルカ様…ご無事で」
ルカ様が、目の前にいる。俺の前からいなくなって、狂ってしまうかと思う程、求め続けたルカ様が。
少年に近づこうとするルカ様の前に立って、俺は心からルカ様の無事を喜んだ。
このままルカ様と共に、あの小さな家に帰ろうと一人頷く俺を、ルカ様が睨んでくる。
ーーふ…、そんな顔も可愛くて愛おしい。…ああ、そうか。ルカ様は、少年がルキ様だと勘違いしておられるのだな。ちゃんと説明して、この少年の姿をよく見れば、すぐに別人だとわかる筈だ。
そう思っている俺の横をすり抜けて、「手当をする」と少年に手を伸ばすルカ様を慌てて止める。
「は?そんなことをする必要はない。こいつに近づいてはなりません」
そう言うと、俺はトドメを刺す為に再び少年に噛み付こうとした。
咄嗟に俺の身体を押し退けて、ルカ様が少年の上に被さる。危うくルカ様の肩に牙を食い込ます寸前で、俺はピタリと動きを止めた。
「…ルカ様、邪魔をするな」
「ルキ、大丈夫?すぐに手当をしてあげる」
「僕、この二人に殺される…。怖いよ、助けて…っ」
「ルキ…」
「ルカ様っ、ダメですっ!そいつから離れろっ」
少年を庇うルカ様を、俺と赤築が取り囲む。
俺は、どうしても少年から離れようとしないルカ様の脇に頭を入れて、強い力で押した。
少年からルカ様の身体が少しだけ離れた隙に、赤築が少年の顔を、前足で踏みつけた。
それを見たルカ様の身体が、ピクンと揺れた気がした。
「…やめろ。二人とも、僕とルキから離れろ…」
「…!」
静かに震えるルカ様の声が聞こえた瞬間、背中にゾクリと悪寒が走り、その場から飛び退いた。
それは俺だけでなく赤築も同じだったようで、俺と同時に二人から離れる。そして俺と赤築は、地面に尻をつけて、まるで上から強い力で押さえつけられたかのように、頭を下げた。
頭を下げたまま、目だけを動かしてルカ様を見た。
ルカ様の身体の周りを、青い炎が揺らめいて見える。
ーーなんだ?あれは…。
今、自分の身に起こっている異変に首を傾げながら、ブルブルと身体を震わせる。苦しげに声を絞り出す俺と赤築には見向きもせずに、ルカ様が少年に近寄った。
「もう大丈夫だよ」
そう優しく囁いて、少年の背中を撫でると、ルカ様は俺達の前に立って、見下ろしながら言い放った。
「ねぇ…、例えどんな理由があったとしても、僕の大事な弟を傷つけるなんて許さない。今すぐ、僕とルキの前から消えて」
「…違うっ。ルカ様、そいつは…。…っ!やめ…っ」
静かに話すルカ様の後ろで、少年がゆらりと立ち上がり、大きく口を開けてルカ様に飛びかかろうとした。
俺は素早く立ち上がり、咄嗟に少年の首元に牙を食い込ませる。しっかりと咥えると、大きく頭を振って少年を投げ飛ばした。少年の身体が弧を描き、ドシンッと大きな音を立てて地面に落ちた。
そのままピクピクと痙攣して動かなくなる。だが、まだ油断はならない。念には念をと牙を剥いた瞬間、ルカ様の、悲痛な叫び声がした。
「やめてーっっ!」
普段より少し高いルカ様の声が頭の中で響き、脳天から足の裏にかけて、ビリリと電気が走った。キーンと高い音が鼓膜を震わせ、一瞬にして身体の力が抜ける。
俺はグラリと横に倒れながら、ルカ様を見た。
ルカ様は、真っ青な顔をして、珍しく滝のように汗を流していた。
赤築も俺に続いて、少年の背中に牙を立てる。
俺は、あまりの怒りで目が眩み、周りの景色が白く濁って見えなくなっていた。だから、気付けなかったのだ。
それは、突然だった。
このまま少年を弱らせて青蓮家に連れ帰り、ルカ様の居場所を聞き出そうと考えていた。その俺の背後から、最も聞きたかった声が聞こえてきた。
「やめろっ!」
透き通るような少しハスキーな声。
その声を聞いた瞬間、俺と赤築がビクッと身体を震わせる。ほぼ同時に少年を離して、弾かれたように振り返った。
振り向いた先に、俺の手の届く位置に、ずっと捜し求めていた、ルカ様がいた。
一瞬ためらった後に、赤築がルカ様に近寄ろうとする。だが、ルカ様の鋭い視線と声に遮られた。
「来ないでっ!…ねぇ、ロウにリツ、何をしてるの?僕の大事な弟に、何をしてたのっ」
「ち、違う…っ、ルカっ」
「ルカ様…ご無事で」
ルカ様が、目の前にいる。俺の前からいなくなって、狂ってしまうかと思う程、求め続けたルカ様が。
少年に近づこうとするルカ様の前に立って、俺は心からルカ様の無事を喜んだ。
このままルカ様と共に、あの小さな家に帰ろうと一人頷く俺を、ルカ様が睨んでくる。
ーーふ…、そんな顔も可愛くて愛おしい。…ああ、そうか。ルカ様は、少年がルキ様だと勘違いしておられるのだな。ちゃんと説明して、この少年の姿をよく見れば、すぐに別人だとわかる筈だ。
そう思っている俺の横をすり抜けて、「手当をする」と少年に手を伸ばすルカ様を慌てて止める。
「は?そんなことをする必要はない。こいつに近づいてはなりません」
そう言うと、俺はトドメを刺す為に再び少年に噛み付こうとした。
咄嗟に俺の身体を押し退けて、ルカ様が少年の上に被さる。危うくルカ様の肩に牙を食い込ます寸前で、俺はピタリと動きを止めた。
「…ルカ様、邪魔をするな」
「ルキ、大丈夫?すぐに手当をしてあげる」
「僕、この二人に殺される…。怖いよ、助けて…っ」
「ルキ…」
「ルカ様っ、ダメですっ!そいつから離れろっ」
少年を庇うルカ様を、俺と赤築が取り囲む。
俺は、どうしても少年から離れようとしないルカ様の脇に頭を入れて、強い力で押した。
少年からルカ様の身体が少しだけ離れた隙に、赤築が少年の顔を、前足で踏みつけた。
それを見たルカ様の身体が、ピクンと揺れた気がした。
「…やめろ。二人とも、僕とルキから離れろ…」
「…!」
静かに震えるルカ様の声が聞こえた瞬間、背中にゾクリと悪寒が走り、その場から飛び退いた。
それは俺だけでなく赤築も同じだったようで、俺と同時に二人から離れる。そして俺と赤築は、地面に尻をつけて、まるで上から強い力で押さえつけられたかのように、頭を下げた。
頭を下げたまま、目だけを動かしてルカ様を見た。
ルカ様の身体の周りを、青い炎が揺らめいて見える。
ーーなんだ?あれは…。
今、自分の身に起こっている異変に首を傾げながら、ブルブルと身体を震わせる。苦しげに声を絞り出す俺と赤築には見向きもせずに、ルカ様が少年に近寄った。
「もう大丈夫だよ」
そう優しく囁いて、少年の背中を撫でると、ルカ様は俺達の前に立って、見下ろしながら言い放った。
「ねぇ…、例えどんな理由があったとしても、僕の大事な弟を傷つけるなんて許さない。今すぐ、僕とルキの前から消えて」
「…違うっ。ルカ様、そいつは…。…っ!やめ…っ」
静かに話すルカ様の後ろで、少年がゆらりと立ち上がり、大きく口を開けてルカ様に飛びかかろうとした。
俺は素早く立ち上がり、咄嗟に少年の首元に牙を食い込ませる。しっかりと咥えると、大きく頭を振って少年を投げ飛ばした。少年の身体が弧を描き、ドシンッと大きな音を立てて地面に落ちた。
そのままピクピクと痙攣して動かなくなる。だが、まだ油断はならない。念には念をと牙を剥いた瞬間、ルカ様の、悲痛な叫び声がした。
「やめてーっっ!」
普段より少し高いルカ様の声が頭の中で響き、脳天から足の裏にかけて、ビリリと電気が走った。キーンと高い音が鼓膜を震わせ、一瞬にして身体の力が抜ける。
俺はグラリと横に倒れながら、ルカ様を見た。
ルカ様は、真っ青な顔をして、珍しく滝のように汗を流していた。
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