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赤築先生の話を聞いて、俺の身体を震えが突き抜けた。
ーールカ様が…隣町にいる?意外にもそんな近くにいたのか…。なら、今すぐに取り返しに行こう。
無言で立ち上がった俺につられて、赤築も立ち上がる。
「まさか、そんなに近くにいるとは思わなかったよな。昨日にこの話を聞いてさ、すぐにでも飛び出そうとしたら、姉ちゃんに止められたんだ。でも、もう我慢出来ない。俺は今から行くぜ。先生だってそうだろ?」
「当たり前だ。こんな話を聞いて、待つことなど出来るわけがない。…赤築先生、ありがとうごさいます。ようやく、手掛かりが掴めた。それと、あなたの弟を…赤築 リツを、少しお借りします」
「いくらでも扱き使ってやって。必ずルカ君を無事に連れて帰って来て。あなた達も、気をつけて」
「わかってるよっ」
赤築先生に頭を下げて、部屋を出ようと襖に手を掛けた時だった。
「マイ様っ、リツ様っ、ナチ様が…っ!」
赤築家の若い男が、転がるようにして、叫びながら部屋へ飛び込んで来た。
赤築姉弟が、急いで男の傍に寄る。
「どっ、どうしたのっ?父様に何か?」
「おやじ、夜に四大名家が集まる会合があるとかで、出掛けてたよな?」
飛び込んで来た若い男は、真っ青な顔をして、この暑い中、ガタガタと身体を震わせていた。
「…は、はい…。会合の前に白蘭家の当主と会う約束をされていて、赤築家が所有するホテルに行ったのです…。ホテルの一室で白蘭様とお話をされていた時に、突然部屋の鍵が開いて、黒服を身にまとった数人の人狼が入って来て…」
「はあ?そんなの、父様が絶対に誰も入れないように指示してる筈じゃないっ。誰が鍵を開けたのっ?」
「…鍵を開けたのは、ホテルで働く赤築の者でした。とても真面目でよく気の付く人狼です…」
「どうして…彼は開けたの?」
「わからないのです。鍵を開けて入って来た時の彼の様子…。目はどこも見てなくて、ナチ様が怒鳴っても何の反応も示さなかった」
「その後に、黒服の人狼達が入って来たのね?」
「はい…っ。そ、そいつらの中の一際小柄な人狼が、ナチ様と白蘭様の前に立って…。何かを呟いたと思ったら、突然、ナチ様と白蘭様が狼の姿で戦い出したのです…っ」
小柄な人狼…。その言葉に反応して、俺の全身に鳥肌が立った。
ーールカ様だ。ルカ様が現れた。…そうか、俺は後手に回ってしまったのだ。遅かったっ。ルカ様はもう、黒条の矛として動き出してしまった。
「なんだよっ、それ!そ、それで、おやじはどうしたんだよっ」
「ナチ様と白蘭様…、噛み付き合うお二方を周りの者達で必死に止めて、それ程の大事には至りませんでした。けれどかなりの怪我をされまして、お二方共に赤築家の病院で治療を受けておられます」
「で、その黒服の人狼達は?」
低く呟いた俺を、三人が一斉に振り返る。
「その中の一番大柄な男が、『まあ、こんなものだろう』と言って、小柄な人狼の肩を抱いて部屋を出て行きました」
「小柄な人狼の顔は見たのか?」
「いえ、フードを深く被っていたので、顔はよくわかりませんでした。でも、振り向いた時にチラリと見えた瞳は…、あなた様と同じ、青かったような…」
「そうか…。ありがとう」
「姉ちゃん!今すぐおやじの所に行こうっ。先生もだっ」
「俺も?」
「そうね…。父様からどんな様子だったか、直接聞いた方がいいわ。だって、その小柄な人狼って、たぶんルカ君でしょう?」
赤築姉弟が、俺を挟むようにして立つ。
正直、今俺の頭の中はパニックになっていて、何をすればいいかを考えられなくなっている。
だが、ついに黒条が動き出してしまった。ルカ様の力を使ってしまった。これ以上の被害を出さない為にも、ルカ様を止めるのが俺の使命だ。
俺は微かに頷いて、赤築姉弟と共に、赤築家の当主がいる病院へと向かった。
ーールカ様が…隣町にいる?意外にもそんな近くにいたのか…。なら、今すぐに取り返しに行こう。
無言で立ち上がった俺につられて、赤築も立ち上がる。
「まさか、そんなに近くにいるとは思わなかったよな。昨日にこの話を聞いてさ、すぐにでも飛び出そうとしたら、姉ちゃんに止められたんだ。でも、もう我慢出来ない。俺は今から行くぜ。先生だってそうだろ?」
「当たり前だ。こんな話を聞いて、待つことなど出来るわけがない。…赤築先生、ありがとうごさいます。ようやく、手掛かりが掴めた。それと、あなたの弟を…赤築 リツを、少しお借りします」
「いくらでも扱き使ってやって。必ずルカ君を無事に連れて帰って来て。あなた達も、気をつけて」
「わかってるよっ」
赤築先生に頭を下げて、部屋を出ようと襖に手を掛けた時だった。
「マイ様っ、リツ様っ、ナチ様が…っ!」
赤築家の若い男が、転がるようにして、叫びながら部屋へ飛び込んで来た。
赤築姉弟が、急いで男の傍に寄る。
「どっ、どうしたのっ?父様に何か?」
「おやじ、夜に四大名家が集まる会合があるとかで、出掛けてたよな?」
飛び込んで来た若い男は、真っ青な顔をして、この暑い中、ガタガタと身体を震わせていた。
「…は、はい…。会合の前に白蘭家の当主と会う約束をされていて、赤築家が所有するホテルに行ったのです…。ホテルの一室で白蘭様とお話をされていた時に、突然部屋の鍵が開いて、黒服を身にまとった数人の人狼が入って来て…」
「はあ?そんなの、父様が絶対に誰も入れないように指示してる筈じゃないっ。誰が鍵を開けたのっ?」
「…鍵を開けたのは、ホテルで働く赤築の者でした。とても真面目でよく気の付く人狼です…」
「どうして…彼は開けたの?」
「わからないのです。鍵を開けて入って来た時の彼の様子…。目はどこも見てなくて、ナチ様が怒鳴っても何の反応も示さなかった」
「その後に、黒服の人狼達が入って来たのね?」
「はい…っ。そ、そいつらの中の一際小柄な人狼が、ナチ様と白蘭様の前に立って…。何かを呟いたと思ったら、突然、ナチ様と白蘭様が狼の姿で戦い出したのです…っ」
小柄な人狼…。その言葉に反応して、俺の全身に鳥肌が立った。
ーールカ様だ。ルカ様が現れた。…そうか、俺は後手に回ってしまったのだ。遅かったっ。ルカ様はもう、黒条の矛として動き出してしまった。
「なんだよっ、それ!そ、それで、おやじはどうしたんだよっ」
「ナチ様と白蘭様…、噛み付き合うお二方を周りの者達で必死に止めて、それ程の大事には至りませんでした。けれどかなりの怪我をされまして、お二方共に赤築家の病院で治療を受けておられます」
「で、その黒服の人狼達は?」
低く呟いた俺を、三人が一斉に振り返る。
「その中の一番大柄な男が、『まあ、こんなものだろう』と言って、小柄な人狼の肩を抱いて部屋を出て行きました」
「小柄な人狼の顔は見たのか?」
「いえ、フードを深く被っていたので、顔はよくわかりませんでした。でも、振り向いた時にチラリと見えた瞳は…、あなた様と同じ、青かったような…」
「そうか…。ありがとう」
「姉ちゃん!今すぐおやじの所に行こうっ。先生もだっ」
「俺も?」
「そうね…。父様からどんな様子だったか、直接聞いた方がいいわ。だって、その小柄な人狼って、たぶんルカ君でしょう?」
赤築姉弟が、俺を挟むようにして立つ。
正直、今俺の頭の中はパニックになっていて、何をすればいいかを考えられなくなっている。
だが、ついに黒条が動き出してしまった。ルカ様の力を使ってしまった。これ以上の被害を出さない為にも、ルカ様を止めるのが俺の使命だ。
俺は微かに頷いて、赤築姉弟と共に、赤築家の当主がいる病院へと向かった。
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