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「俺が、説明します」
ベッドの脇にしがみつく赤築を押しやって、俺はベッドに近づいた。
「はじめまして。青砥ロウと言います。赤築先生の同僚で、リツ…くんの担任をしています。そして青蓮家の眷属です。あなたが見た小柄な人狼は、俺の仕えるルカ様に違いありません。俺は、ルカ様が生まれた瞬間から、お傍でお仕えしてきました。ルカ様が、変身出来ないことに大変悩まれていた姿も見てきました。この世の全ての人狼が狼に変身出来て、変身出来なくとも耳や尻尾は出せる者がいる中で、ルカ様は全く変身出来なかった。でも俺はずっと、ルカ様は、選ばれた特別な存在だと思ってましたから、今回のことも驚きはしましたが、どこかで納得していました。ただ、黒条の存在は知らなかった。黒条家とは、五百年もの昔に人狼界のトップにいた一族だそうです。ルカ様と同じ能力の人狼がいて、他の一族を従わせていたらしい。でも他家から疎ましく思われて、罠に嵌められ人狼界の隅に追いやられてしまった。長年大人しくしていたが、ルカ様の存在を知って、その能力を利用する為に、再び出て来た。そして、ルカ様を連れ去って行ったのです…」
一息に喋って、俺は静かに長い息を吐く。
黙って耳を傾けていた赤築家当主は、「そうか…」と一言呟いて、俺を見た。
「今夜、四大名家の会合がある。君の所の当主も来る。きっとそこにも、その黒条という一族が現れる筈だ。その一族は、たぶん再び人狼界のトップに立ちたいのだろう?それなら、四大名家の当主を従わせるのが一番手っ取り早いからな。どうする?君も操られてしまうかもしれないが、そこに行くか?」
「もちろんです。ルカ様を止めることが出来るのは、俺だけだと思ってます」
「そうか…。うまくいくことを祈る」
「…ありがとうございます」
頭を下げて、俺はすぐに踵を返して去ろうとした。
そこへ、赤築が俺の腕を掴んで止める。
「待ってっ。俺も行く」
俺は、腕を掴んでいる赤築の手を離して睨みつけた。
「ルカ様と戦わなければならなくなるかもしれないぞ。ルカ様を攻撃出来るのか?」
「それがルカを助けることになるのなら…やる」
「あなたの息子が、こう言ってますが…」
解答を求めてベッドに座る人物を見る。彼は困ったように笑って、溜息を吐いた。
「好きなようにさせてやってくれ…。そいつは昔から頑固なんだ。こうと思ったら意思を曲げない。だが…リツ、あまり無茶はしてくれるなよ?」
「…わかってる」
「リツ、青砥先生の邪魔にならないようにね。二人とも気をつけて」
俺は、部屋の入り口で頭を下げると、赤築を一瞥して歩き出した。すぐ後を、慌てて赤築が追いかけてくる。
ボタンを押してすぐに開いたエレベーターに乗り込み、一階に降下する間、俺は壁に凭れて目を閉じていた。
ベッドの脇にしがみつく赤築を押しやって、俺はベッドに近づいた。
「はじめまして。青砥ロウと言います。赤築先生の同僚で、リツ…くんの担任をしています。そして青蓮家の眷属です。あなたが見た小柄な人狼は、俺の仕えるルカ様に違いありません。俺は、ルカ様が生まれた瞬間から、お傍でお仕えしてきました。ルカ様が、変身出来ないことに大変悩まれていた姿も見てきました。この世の全ての人狼が狼に変身出来て、変身出来なくとも耳や尻尾は出せる者がいる中で、ルカ様は全く変身出来なかった。でも俺はずっと、ルカ様は、選ばれた特別な存在だと思ってましたから、今回のことも驚きはしましたが、どこかで納得していました。ただ、黒条の存在は知らなかった。黒条家とは、五百年もの昔に人狼界のトップにいた一族だそうです。ルカ様と同じ能力の人狼がいて、他の一族を従わせていたらしい。でも他家から疎ましく思われて、罠に嵌められ人狼界の隅に追いやられてしまった。長年大人しくしていたが、ルカ様の存在を知って、その能力を利用する為に、再び出て来た。そして、ルカ様を連れ去って行ったのです…」
一息に喋って、俺は静かに長い息を吐く。
黙って耳を傾けていた赤築家当主は、「そうか…」と一言呟いて、俺を見た。
「今夜、四大名家の会合がある。君の所の当主も来る。きっとそこにも、その黒条という一族が現れる筈だ。その一族は、たぶん再び人狼界のトップに立ちたいのだろう?それなら、四大名家の当主を従わせるのが一番手っ取り早いからな。どうする?君も操られてしまうかもしれないが、そこに行くか?」
「もちろんです。ルカ様を止めることが出来るのは、俺だけだと思ってます」
「そうか…。うまくいくことを祈る」
「…ありがとうございます」
頭を下げて、俺はすぐに踵を返して去ろうとした。
そこへ、赤築が俺の腕を掴んで止める。
「待ってっ。俺も行く」
俺は、腕を掴んでいる赤築の手を離して睨みつけた。
「ルカ様と戦わなければならなくなるかもしれないぞ。ルカ様を攻撃出来るのか?」
「それがルカを助けることになるのなら…やる」
「あなたの息子が、こう言ってますが…」
解答を求めてベッドに座る人物を見る。彼は困ったように笑って、溜息を吐いた。
「好きなようにさせてやってくれ…。そいつは昔から頑固なんだ。こうと思ったら意思を曲げない。だが…リツ、あまり無茶はしてくれるなよ?」
「…わかってる」
「リツ、青砥先生の邪魔にならないようにね。二人とも気をつけて」
俺は、部屋の入り口で頭を下げると、赤築を一瞥して歩き出した。すぐ後を、慌てて赤築が追いかけてくる。
ボタンを押してすぐに開いたエレベーターに乗り込み、一階に降下する間、俺は壁に凭れて目を閉じていた。
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