銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹

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 ノアの馬は足が遅かった。走るように調教されていないらしいから仕方がない。でもノアと話しながら進むのは楽しかった。余計なことを考えなくて済む。
 僕一人なら昼も食べずに進んだのだが、ノアが腹が減ったと言うから道を逸れて街に入った。
 その街はノアの家がある街よりも大きな街だった。昼間だからか人通りも多い。でも人が多いところでは特に注意が必要だ。
 僕の銀髪が珍しいとノアに指摘された。でもノアに指摘される前から、僕は常にマントについたフードを深く被り顔を隠している。追いかけては来てないだろうが、イヴァルの者やリアムに見つからない為だ。
 ある店の道に面した席に座って料理が出てくるのを待っている間に、僕は気になっていたことをノアに聞いた。

「ねぇ、そういえばノアの街の人はどうしてまだ日も暮れてないのに誰も歩いてなかったの?」
「え?ああ。いつもは賑やかだぞ?二日前にさ、街に偉そうな騎士が来たんだ。俺と歳が近そうなのに偉そうだった。そいつが逃げた悪い奴を捜してるって」
「悪い奴?怖いね…。じゃあ家にリコを一人にしない方がよかったんじゃ…」
「大丈夫だ。その悪い奴?どこに逃げたかよくわからないらしいぞ。その背の高い偉そうな騎士が『こんな遠くまで来てないと思うが』って言ってたしな」
「ふーん」
 
 だから街の人達は用心して早くに戸締りをしていたのか。
 僕は運ばれてきた鳥肉を美味しそうに齧るノアを見て、呆れながら言う。

「それなのにノアは出歩いてたの?危ないよ?」
「大丈夫だって。それに俺が出歩いてたからフィルは俺ん家に泊まれただろ?」
「ふふっ、そうだね」

 僕も鶏肉をフォークに刺して口に入れる。すごく好みの味で美味しい。
 肉を咀嚼していると視線を感じて顔を上げた。
 ノアがこちらをジッと見ている。

「なに?」
「いや…おまえ、もっと笑えばいいのに。笑った方が可愛いぞ」
「可愛いって…なに。僕は男だよ」
「そうだけど。うーん…かっこいいとも違うんだよな。とにかく笑え。笑うと幸せが寄ってくるんだぜ」
「ほんとに?」
「おう!姉ちゃんがそう言ってたし」
「そう…」

 幸せか。幸せってどういうことを言うんだろう。僕は今、幸せなのだろうか。城を出されて、殺されるはずだったのに助けられてまだ生きてる。この先どうなるかわからないけど、食べ物は美味しいしノアと話してると楽しい。ここにリアムがいればもっと…。
 僕は慌てて首を振る。リアムとはもう会うこともない。明るくて眩しくて太陽のような人。そんな人と少しでも一緒に過ごせたことが幸せだというのかもしれない。

「どうした?」
「ううん。僕、笑うのが苦手なんだ。でもなるべく笑うようにするよ」
「笑うのが苦手ってなんだよ。やっぱおまえって変な奴だな」
「…そうだね」

 小さく頷いたその時、僕の背後に目を向けたノアが「あっ」と声を上げた。

「どうしたの?」
「…あいつだよ。悪い奴を追いかけて来たっていう偉そうな騎士…」
 
 僕はゆっくりと振り返ってその男の顔を見た。瞬間、即座に顔を戻してフードを引っ張り更に深く顔を隠した。
 
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