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門を入って城に向かう途中で、近くにいた使用人にロロとリアムの馬を預けた。ここには大きな厩舎があり、しっかりと世話をしてくれるらしい。
ゼノを先頭にリアムと僕が並んで歩く。城に沿うように石畳の上を進んで行くと、たくさんの花や木が植えられた大きな庭に出た。
僕の国では見たことがない花があり、珍しくてキョロキョロとしてしまう。僕好みの可愛らしい赤い花に顔を近づけていると「あとで連れて来てやるから」とリアムが僕の手を引きながら笑った。
「ごめん。珍しくてつい…」
「時間はたっぷりとあるんだ。フィーが来たい時に連れてきてやる」
「うん、ありがとう」
僕は素直に頷いた。
まだ僕はこの城の人達に紹介されていない。なのにフラフラしていたら怪しまれてしまうじゃないか。
足を止めてしまってゼノにも悪いことをしたと前を見る。その時、僕を見つめるゼノと目が合ってドキリとした。
何か…疑われてる?ゼノは信頼している人だとリアムに紹介されたけど、少しだけ不安になる。そして急に不特定多数の人に姿を見られることが怖くなってきて、早く部屋に入りたいと、それからは無言で足を動かした。
「こちらです。リアム様、扉を…」
「ああ」
庭の中をひたすら歩き、城の端近くにある扉から中に入る。入ってすぐの所に、白地に金や赤、緑や青で模様が描かれた大きな扉があった。その扉の横でゼノが止まり、頭を下げた。
リアムがマントの中に手を入れて何かを取り出す。それを扉に当てるとカチリと音がした。
ゼノが取手を引き扉を開ける。
中はとても広い。僕が暮らしていた部屋よりも広い。そして部屋の奥に大きな窓があり、陽の光が注ぎ込まれてとても明るい。
「明るくて暖かい…。ここは?」
「俺の部屋だ。気に入ったか?」
「うん。僕の部屋も同じ白い壁だったけど、こんなに明るくなかったから羨ましい。それにすごく広いね」
「そうだな。二人でも充分な広さだろ」
「二人?」
「おまえもここで暮らすのだろ?」
「あっ…そっか…」
急に恥ずかしくなってリアムから目を逸らす。
リアムが意地悪な顔をしてマントを脱いでいる。
「ふっ、早く慣れてくれよ?フィー、おまえもマントを脱げ。ここでは隠す必要はないからな」
「うん…」
僕はチラリとゼノを見て、マントを脱いで傍にある椅子にかける。
「美しいだろう」とリアムが僕の髪を撫でながら、ゼノに話しかけた。
「…驚きました。このように美しい銀髪は初めてです。もしやフィル様は、高貴なご出身で…」
「そうだ。おまえにはそのうち詳しく話す。とりあえず腹が空いたから、軽食を持ってきてくれ」
「わかりました。ではその間に、リアム様とフィル様は旅の汚れを落としてください」
「ああ」
頭を下げて出て行くゼノを見送って、リアムが僕を抱きしめた。
「リアム?」
「フィーがここにいることが不思議だ。本当に俺の国に来てくれたんだな。この先はずっと一緒だぞ」
「うん…傍にいるよ…わあ!」
リアムの背中に腕を回そうとして、いきなり抱き上げられて大きな声を出してしまった。
リアムは僕を抱えたまま、部屋の中に三つある扉の一つを開ける。そこは大きな鏡がある小さな部屋で、部屋の奥に更に扉がある。
「ここは?」
「風呂場だ。ゼノが旅の汚れを落とせと言ってただろう?」
「あっ…じゃあっ、先にリアムが入ってよ」
「なぜ?一緒に入ればいいだろう」
「え?それは…ちょっと…」
「前に筋肉を見せてくれると言ってたじゃないか」
「そ…だけど」
リアムの腕から降りようと身体をよじるけど離してくれない。
僕が小さく息を吐いて仕方なく「わかった、入る」と言うと、ようやく離してくれた。
ゼノを先頭にリアムと僕が並んで歩く。城に沿うように石畳の上を進んで行くと、たくさんの花や木が植えられた大きな庭に出た。
僕の国では見たことがない花があり、珍しくてキョロキョロとしてしまう。僕好みの可愛らしい赤い花に顔を近づけていると「あとで連れて来てやるから」とリアムが僕の手を引きながら笑った。
「ごめん。珍しくてつい…」
「時間はたっぷりとあるんだ。フィーが来たい時に連れてきてやる」
「うん、ありがとう」
僕は素直に頷いた。
まだ僕はこの城の人達に紹介されていない。なのにフラフラしていたら怪しまれてしまうじゃないか。
足を止めてしまってゼノにも悪いことをしたと前を見る。その時、僕を見つめるゼノと目が合ってドキリとした。
何か…疑われてる?ゼノは信頼している人だとリアムに紹介されたけど、少しだけ不安になる。そして急に不特定多数の人に姿を見られることが怖くなってきて、早く部屋に入りたいと、それからは無言で足を動かした。
「こちらです。リアム様、扉を…」
「ああ」
庭の中をひたすら歩き、城の端近くにある扉から中に入る。入ってすぐの所に、白地に金や赤、緑や青で模様が描かれた大きな扉があった。その扉の横でゼノが止まり、頭を下げた。
リアムがマントの中に手を入れて何かを取り出す。それを扉に当てるとカチリと音がした。
ゼノが取手を引き扉を開ける。
中はとても広い。僕が暮らしていた部屋よりも広い。そして部屋の奥に大きな窓があり、陽の光が注ぎ込まれてとても明るい。
「明るくて暖かい…。ここは?」
「俺の部屋だ。気に入ったか?」
「うん。僕の部屋も同じ白い壁だったけど、こんなに明るくなかったから羨ましい。それにすごく広いね」
「そうだな。二人でも充分な広さだろ」
「二人?」
「おまえもここで暮らすのだろ?」
「あっ…そっか…」
急に恥ずかしくなってリアムから目を逸らす。
リアムが意地悪な顔をしてマントを脱いでいる。
「ふっ、早く慣れてくれよ?フィー、おまえもマントを脱げ。ここでは隠す必要はないからな」
「うん…」
僕はチラリとゼノを見て、マントを脱いで傍にある椅子にかける。
「美しいだろう」とリアムが僕の髪を撫でながら、ゼノに話しかけた。
「…驚きました。このように美しい銀髪は初めてです。もしやフィル様は、高貴なご出身で…」
「そうだ。おまえにはそのうち詳しく話す。とりあえず腹が空いたから、軽食を持ってきてくれ」
「わかりました。ではその間に、リアム様とフィル様は旅の汚れを落としてください」
「ああ」
頭を下げて出て行くゼノを見送って、リアムが僕を抱きしめた。
「リアム?」
「フィーがここにいることが不思議だ。本当に俺の国に来てくれたんだな。この先はずっと一緒だぞ」
「うん…傍にいるよ…わあ!」
リアムの背中に腕を回そうとして、いきなり抱き上げられて大きな声を出してしまった。
リアムは僕を抱えたまま、部屋の中に三つある扉の一つを開ける。そこは大きな鏡がある小さな部屋で、部屋の奥に更に扉がある。
「ここは?」
「風呂場だ。ゼノが旅の汚れを落とせと言ってただろう?」
「あっ…じゃあっ、先にリアムが入ってよ」
「なぜ?一緒に入ればいいだろう」
「え?それは…ちょっと…」
「前に筋肉を見せてくれると言ってたじゃないか」
「そ…だけど」
リアムの腕から降りようと身体をよじるけど離してくれない。
僕が小さく息を吐いて仕方なく「わかった、入る」と言うと、ようやく離してくれた。
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