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「フィー、おまえが何をしたか、だいたいの見当はつく。別に怒ったりしないから大人しくしててくれ」
「……うん」
僕が素直に頷くと、リアムが頬にキスをした。
こちらを見ているラズールが、険悪な顔をしている。あまり感情を表に出さないのに、気に食わないことだけは、すぐに顔に出すんだ。特にリアムに対しては顕著だ。
ラズールは大きなため息をつくと、少し顎を上げて口を開いた。
「フィル様は、あなたに体力回復の魔法をかけたのです。あなたが中々目を覚まさないからと膨大な量を。フィル様は、あなたに腕を斬られたあの時から、体力も魔力も落ちてます。それなのに魔法を使ったことで、俺が戻ってきた時には倒れる寸前でした」
「…え?フィー!大丈夫なのかっ…」
「ご心配には及びません。俺がフィル様に体力回復の魔法をかけましたので。しかし今日はもう無理はなさらず、安静にしていただきたい。フィル様もリアム様も。夕餉も部屋へ運んでもらうよう、頼んできます」
「そうか。伯父上に…」
「ラシェット様にも俺が話してきます。お二人は、明日のために休んでいてください。特にリアム様…フィル様が疲れることは、決してなさらぬよう願いますよ」
「……わかってる」
ラズールの圧がすごい。とても怖い顔で見下ろしてくる。
僕には何のことを言ってるのかわからなかったけど、リアムはわかったのか渋々頷いてラズールから目をそらした。
「ラズール、ラシェットさんによく謝っておいてね」
「はい。彼はお優しいので大丈夫ですよ」
「うん…でもいろいろと話したかったのに」
「明日の式の後に、ゆっくりと話せますよ」
「そうだね」
僕が笑うと、ようやくラズールも微笑んで、僕の髪を撫でた。
昔から何かあると撫でてくれるラズールの手が好きだった。いつか僕もラズールと同じ大きな手になるかなと期待したけど、全然追いついない。身長も手も足も、ラズールより小さいままだ。あと数年すれば追いついたのだろうか。
「やはりお疲れのようですね。フィル様の好きな甘いものも用意してもらいましょうか」
「…うん、お願い」
ラズールが頷きベッドから離れる。部屋を出る前に振り返り心配そうに僕を見て、静かに扉を閉めた。
パタンと扉が閉まる音と同時に、強く抱きしめられる。
僕は顔だけ後ろに向けて、リアムの金髪に触れる。
「どうしたの?まだ眠い?」
「違う…。フィー、ごめんな。謝っても仕方のないことだけど、ごめん」
「なにが?」
「おまえの腕を斬ったこと。そのせいで体力と魔力が落ちたこと」
ああ、リアムには知られたくなかったんだけどな。でも隠しごとはしないと決めたから、いつかは話さなくてはならないことだった。
僕は前を向いてリアムきもたれ、身体に巻きつくリアムの手を右手で掴むと、僕の左腕に触れさせた。
「……うん」
僕が素直に頷くと、リアムが頬にキスをした。
こちらを見ているラズールが、険悪な顔をしている。あまり感情を表に出さないのに、気に食わないことだけは、すぐに顔に出すんだ。特にリアムに対しては顕著だ。
ラズールは大きなため息をつくと、少し顎を上げて口を開いた。
「フィル様は、あなたに体力回復の魔法をかけたのです。あなたが中々目を覚まさないからと膨大な量を。フィル様は、あなたに腕を斬られたあの時から、体力も魔力も落ちてます。それなのに魔法を使ったことで、俺が戻ってきた時には倒れる寸前でした」
「…え?フィー!大丈夫なのかっ…」
「ご心配には及びません。俺がフィル様に体力回復の魔法をかけましたので。しかし今日はもう無理はなさらず、安静にしていただきたい。フィル様もリアム様も。夕餉も部屋へ運んでもらうよう、頼んできます」
「そうか。伯父上に…」
「ラシェット様にも俺が話してきます。お二人は、明日のために休んでいてください。特にリアム様…フィル様が疲れることは、決してなさらぬよう願いますよ」
「……わかってる」
ラズールの圧がすごい。とても怖い顔で見下ろしてくる。
僕には何のことを言ってるのかわからなかったけど、リアムはわかったのか渋々頷いてラズールから目をそらした。
「ラズール、ラシェットさんによく謝っておいてね」
「はい。彼はお優しいので大丈夫ですよ」
「うん…でもいろいろと話したかったのに」
「明日の式の後に、ゆっくりと話せますよ」
「そうだね」
僕が笑うと、ようやくラズールも微笑んで、僕の髪を撫でた。
昔から何かあると撫でてくれるラズールの手が好きだった。いつか僕もラズールと同じ大きな手になるかなと期待したけど、全然追いついない。身長も手も足も、ラズールより小さいままだ。あと数年すれば追いついたのだろうか。
「やはりお疲れのようですね。フィル様の好きな甘いものも用意してもらいましょうか」
「…うん、お願い」
ラズールが頷きベッドから離れる。部屋を出る前に振り返り心配そうに僕を見て、静かに扉を閉めた。
パタンと扉が閉まる音と同時に、強く抱きしめられる。
僕は顔だけ後ろに向けて、リアムの金髪に触れる。
「どうしたの?まだ眠い?」
「違う…。フィー、ごめんな。謝っても仕方のないことだけど、ごめん」
「なにが?」
「おまえの腕を斬ったこと。そのせいで体力と魔力が落ちたこと」
ああ、リアムには知られたくなかったんだけどな。でも隠しごとはしないと決めたから、いつかは話さなくてはならないことだった。
僕は前を向いてリアムきもたれ、身体に巻きつくリアムの手を右手で掴むと、僕の左腕に触れさせた。
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