56 / 89
青 27
しおりを挟む
夏休みが終わり二学期が始まって一ヶ月が過ぎた。もうすぐ文化祭だ。だけど今年は昊がいないから楽しくない。昊に来るかどうか聞いたら「行かない」と即答されてしまった。
夏休みのあの日、昊と映画を観た後に佐藤さんに声をかけられた日から、昊の様子がおかしい気がする。昊に聞いても「なんでもない。今までと同じだろ」とはぐらかされる。
あの日、昊と手を繋いで歩いて、まるで恋人のようだと嬉しくて幸せだったのに、邪魔が入って腹が立った。佐藤さんは悪くないけど、声をかけないで通り過ぎて欲しかったと、ずっと思ってる。あの後、昊に「すげー勢いで手を離したじゃん」と言われて、複雑な心境になった。俺は本当は、手を離したくなかったんだ。ずっと繋いでいたかったんだ。だけど男同士で、しかも兄弟で手を繋いでいるところを見られて、昊に何か言われることが怖かった。俺は何を言われてもいい。軽蔑されてもいい。でも昊が傷つくことがあっては絶対にダメだと思って、咄嗟に離してしまったんだ。でもあんな風に言うってことは、昊も離したくなかった?俺と同じ気持ちだった?そう都合のいいように考えて、昊の気持ちを確かめたいと思った矢先、昊が俺を避けるようになった。
俺はショックだった。昊の気持ちを確かめたいなどと欲を出したから、いけなかったのか?俺の気持ちに気づいて、昊は逃げたくなったのか?悶々と悪いことばかりを考えて、気持ちが落ち込んで、耐えきれなくなって昊に聞いた。
「なんで俺を避けるの?俺のこと、嫌いになった?」
自分で言ってて、情けなくなった。ダメな恋人みたいなセリフを吐いてる。昊にとってはただの弟なのに、俺って気持ち悪いよな。
昊はチラリと俺と目を合わせ、すぐに逸らせてしまう。逸らせたまま、俺に掴まれた腕を振りほどく。
「は?なに言ってんの?別に避けてないけど。それに家族なんだから、嫌いになるも何もねーよ」
「でもっ」
なおも言い募る俺を置いて、昊は部屋の扉を閉めてしまった。それ以上、しつこく追いすがることができなくて、俺はしばらくその場に立ち尽くした。
その日から、俺と昊はギクシャクしている。同じ家に住んでいるから毎日顔を合わせる。会えば他愛のない会話もする。だけど昊は俺を見ない。目を合わせようとしない。そんな昊の態度を目にする度に、俺は欲を出して手を繋いだことを、ひどく後悔した。
夏休みのあの日、昊と映画を観た後に佐藤さんに声をかけられた日から、昊の様子がおかしい気がする。昊に聞いても「なんでもない。今までと同じだろ」とはぐらかされる。
あの日、昊と手を繋いで歩いて、まるで恋人のようだと嬉しくて幸せだったのに、邪魔が入って腹が立った。佐藤さんは悪くないけど、声をかけないで通り過ぎて欲しかったと、ずっと思ってる。あの後、昊に「すげー勢いで手を離したじゃん」と言われて、複雑な心境になった。俺は本当は、手を離したくなかったんだ。ずっと繋いでいたかったんだ。だけど男同士で、しかも兄弟で手を繋いでいるところを見られて、昊に何か言われることが怖かった。俺は何を言われてもいい。軽蔑されてもいい。でも昊が傷つくことがあっては絶対にダメだと思って、咄嗟に離してしまったんだ。でもあんな風に言うってことは、昊も離したくなかった?俺と同じ気持ちだった?そう都合のいいように考えて、昊の気持ちを確かめたいと思った矢先、昊が俺を避けるようになった。
俺はショックだった。昊の気持ちを確かめたいなどと欲を出したから、いけなかったのか?俺の気持ちに気づいて、昊は逃げたくなったのか?悶々と悪いことばかりを考えて、気持ちが落ち込んで、耐えきれなくなって昊に聞いた。
「なんで俺を避けるの?俺のこと、嫌いになった?」
自分で言ってて、情けなくなった。ダメな恋人みたいなセリフを吐いてる。昊にとってはただの弟なのに、俺って気持ち悪いよな。
昊はチラリと俺と目を合わせ、すぐに逸らせてしまう。逸らせたまま、俺に掴まれた腕を振りほどく。
「は?なに言ってんの?別に避けてないけど。それに家族なんだから、嫌いになるも何もねーよ」
「でもっ」
なおも言い募る俺を置いて、昊は部屋の扉を閉めてしまった。それ以上、しつこく追いすがることができなくて、俺はしばらくその場に立ち尽くした。
その日から、俺と昊はギクシャクしている。同じ家に住んでいるから毎日顔を合わせる。会えば他愛のない会話もする。だけど昊は俺を見ない。目を合わせようとしない。そんな昊の態度を目にする度に、俺は欲を出して手を繋いだことを、ひどく後悔した。
7
あなたにおすすめの小説
弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?~本編~
荷居人(にいと)
BL
俺の家族は至って普通だと思う。ただ普通じゃないのは弟というべきか。正しくは普通じゃなくなっていったというべきか。小さい頃はそれはそれは可愛くて俺も可愛がった。実際俺は自覚あるブラコンなわけだが、それがいけなかったのだろう。弟までブラコンになってしまった。
これでは弟の将来が暗く閉ざされてしまう!と危機を感じた俺は覚悟を持って……
「龍、そろそろ兄離れの時だ」
「………は?」
その日初めて弟が怖いと思いました。
死神に狙われた少年は悪魔に甘やかされる
ユーリ
BL
魔法省に悪魔が降り立ったーー世話係に任命された花音は憂鬱だった。だって悪魔が胡散臭い。なのになぜか死神に狙われているからと一緒に住むことになり…しかも悪魔に甘やかされる!?
「お前みたいなドジでバカでかわいいやつが好きなんだよ」スパダリ悪魔×死神に狙われるドジっ子「なんか恋人みたい…」ーー死神に狙われた少年は悪魔に甘やかされる??
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
完璧な計画
しづ未
BL
双子の妹のお見合い相手が女にだらしないと噂だったので兄が代わりにお見合いをして破談させようとする話です。
本編+おまけ後日談の本→https://booth.pm/ja/items/6718689
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した
あと
BL
「また物が置かれてる!」
最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…?
⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。
攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。
ちょっと怖い場面が含まれています。
ミステリー要素があります。
一応ハピエンです。
主人公:七瀬明
幼馴染:月城颯
ストーカー:不明
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる