ふれたら消える

明樹

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 高一の秋に昊と両想いだと知った。これからは兄弟としててはなく恋人として、ずっと一緒だと信じていた。なのに夏樹の家から戻ってきた日から、昊は少しずつ俺によそよそしくなり、大学生になった今では、俺と目すら合わせてくれなくなった。
 三年前のあの日、母さんは帰って来た父さんに何も話さなかった。話してはダメだと思ったのか、混乱していたからかわからないけど。その後もずっと父さんには話していないみたいだったけど、母さんはおかしくなり始めた。
 俺と昊が家で二人きりになることを、極端に嫌がるようになった。頻繁にメールや電話をかけてきて、俺達が二人でいないかを確認するようになった。夏樹や颯人にまで俺達の様子を聞いたりしていた。夏樹と颯人には迷惑をかけて悪いと謝ったけど、俺と昊のことを知っている二人だから、気にしなくていいし何かあれば頼ってくれと言ってくれて、嬉しかった。
 昊がよそよそしくなった理由に、母さんの変化もあると思う。昊は家族思いで優しいから、辛そうな母さんを見たくないんだ。
 それでも俺は、昊を諦めきれない。昊を俺のものにしたいという気持ちは消えない。
 それなのに昊は、同じ大学に進んだ柊木とつき合い出した。たまに出かけるくらいなら何とか我慢できたけど、昊の身体に明らかにセックスをした痕跡を見つけた時は、絶望した。
 昊も、まだ俺を好きなはずだ。なのに柊木に抱かれた…。きっと母さんを安心させるために。
 現に、昊は柊木を家に連れてきて、母さんに恋人だと紹介している。
 母さんは心底安堵した顔をして、「昊をお願いします」と柊木に頭を下げた。
 運悪く家にいてその現場を見てしまった俺は、家を飛び出して颯人の家に向かった。いや、運悪くじゃない。昊は、俺がいる日にわざと柊木を連れて来たんだ。
 いきなり訪ねたけど、颯人は家にいた。俺の顔を見るなりすぐに部屋に入れてくれた。何も聞かず、部屋に入るなり涙を流した俺を見守ってくれた。
 どうして俺は、報われない恋をしたのか。兄弟なんて、どうしたって無理じゃないか。でも…生まれて目を開けた瞬間から、昊を見ていたんだ。その瞬間から、昊に恋してしまったんだ。兄じゃなければ出会っていなかったかもしれない。兄弟として一番近くで過ごしてきたから、こんなにも深く昊を愛してるんだ。
 俺はこんなにも昊を愛しているのに、昊はそこまで俺を好きじゃなかったのかな。今は身体を許すくらいに、柊木を好きなのかな。もう昊は手に入らない。それでも好きだ。ずっと愛してる。
 俺は昊の名を呼び続けながら、颯人に背中を撫でられながら、涙が枯れるまで泣き続けた。
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