炎の国の王の花

明樹

文字の大きさ
18 / 432

俺の王様 4

しおりを挟む
昨夜泊まった白い建物に着くと、すぐに部屋に入って手を洗う。
すでに料理が用意されているテーブルの前に座り、手を合わせてパンを掴むとパクリと齧り付いた。


「カナ」
「ふぁひ?」
「ふっ、そのまま食事を続けていい。ちょっと痛いが我慢しろよ?」


パンを咀嚼しながら、俺の横に立つアルファ厶を見上げる。
アルファ厶は、笑いながら俺の頭に手を置いて顔を前に向かせると、俺の耳に冷たい布を当てた。
布の冷たい感触と、レオナルトに噛まれた箇所のピリリとした痛みに、思わず肩を跳ねさせる。
耳に触れようと上げた手をアルファ厶に握られてしまい、俺は俯いて痛みに耐えた。


「我慢しろと言っただろ。怪我の治癒だ。これはアイツにやられたのか?」
「うん…。俺が文句ばかり言ってうるさいって噛まれた…」
「アイツ…やはりあそこで殺るべきだったか…」
「え?殺るっ?ダ、ダメだよっ。そんなこと、絶対にしたらダメだからなっ」


アルファ厶の方を見ようと動かした顔を、アルファ厶にぐいと押されてまた前を向かされる。


「まだ治癒の途中だ。カナは食事を続けていろ。…なんでダメなのだ?アイツはカナを攫おうとした悪人だぞ。しかも傷をつけた。悪人には罰を与えねばならない」
「…でも…」


俺は自分の意見を言おうとして、俯いて口を噤んだ。


俺がいた世界とこの世界では、きっと価値観が違うのだ。
悪人に罰を与えるのは当たり前。俺がいた世界でもそうだった。
ただここでは、アルファ厶の口調からすると、どうやら悪人をその場で成敗してもいいらしい。それが常識なのかもしれない。
だから俺が言うことは、たぶんおかしいと捉えられてしまうかもしれない。


俺は静かに息を吐くと、自分の意見を押し付けることを止めて、目の前の料理を順番に平らげることに集中した。





俺の耳の治癒を終えたアルファ厶も食事をして、すぐに出るのかと思っていたら、「少し待て」と言う。
俺のせいで出発が遅れたのに、悠長にしてていいのかとアルファ厶を見つめていると、アルファ厶が俺に綺麗な笑顔を見せた。


「カナ、そこのベッドにうつ伏せに寝ろ。また尻が痛いのだろう?」
「えっ!い、いや…大丈夫だからっ。いいから早く行こうよっ」
「いいのか?このまま行くと、尻を痛めたおまえを心配して、皆の歩みも遅くなる。となれば当然、もっと遅れることになるな…」
「そっ…!れは嫌だ…」
「じゃあ大人しく寝てくれ。なるべく早く治してやるから」
「あんまり…見ないでよ…」


俺は渋々ベッドにうつ伏せになり、顔をアルファ厶の反対側に向ける。
俺の頭上でクスリと笑う気配がして、アルファ厶がズボンと下着に手をかけた。
途端に俺はズボンを掴んで身体を起こす。
アルファ厶が、驚いた顔で俺を見た。


「やっぱり無理っ。こんな明るい所で見られるの、恥ずかし過ぎて無理…」
「…仕方がないな…。カナ、ここにおいで」


アルファ厶がベッドに上がってきて、俺の身体を抱えると、向かい合わせで膝の上に乗せた。


「え?こ?え…っ?」
「カナ、膝で立って俺の首に抱きついてろ」
「…こ、こう?」


アルファ厶に言われた通りに、首に腕を回して顔を寄せる。


ーーあ~、アルファ厶の匂い、やっぱり好きだなぁ…。


ぼんやりとそんなことを考えていると、俺の下着の中に手が突っ込まれて、お尻をスルリと撫でられた。


「なっ、なにすんだよっ…!」
「なにって治癒だろ」
「だって…俺のお尻…お尻に…あ!」


アルファ厶の温かい手が触れたお尻に、今度は冷たいものが当てられて、俺はビクンと腰を震わせた。


「ひゃあ?つ、冷たっ」 
「大人しくしてろ。すぐに終わる」


俺はアルファ厶の首元に顔を埋めたまま、「早くして…」と震えながら呟いた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...