炎の国の王の花

明樹

文字の大きさ
19 / 432

俺の王様 5

しおりを挟む
「アル…まだ…?」
「あと少しで終わる。まだ動くなよ?」
「うぅ…」


俺は、アルファ厶の肩に顔を埋めて我慢する。
俺のお尻を治癒している筈のアルファ厶の手が、撫でるように動く度、腰が揺れて恥ずかしい。


「なぁ…、アルの手、なんで動いてるの?」
「ん?早く治るように揉みこんでいるんじゃないか。ふっ、どうしたカナ。腰が揺れてるぞ?」
「ちがっ…!アルが変に触るからくすぐったいんだよっ。もういい。治ったから離してっ」


アルファ厶の肩を押して離れようとする俺に溜息を吐きながら、ようやくアルファ厶が手を下着の中から出した。
俺はズボンを引っ張り上げて、アルファ厶を熱くなった顔で睨む。
でもアルファ厶は、全く気にする素振りもなく、逆に甘い目をして俺を見てきた。


「カナ、そんなに赤くなった顔で睨まれても可愛いだけだ。おまえの尻の痛みを取ってやったというのに、何を怒ってるんだ?」
「だって…っ。必要以上に触ってなかった?」
「そんなことは無い。きっちりと治すには、丁寧にしなければならない」


アルファ厶は、何でも自信たっぷりに話すから、俺は微塵も疑わずに信じてしまう。
だけど2週間近く傍にいて、何となくわかってきた。
アルファ厶は、俺を丸め込む為には平気でくだらない嘘を吐く!


いつまでも睨み続ける俺に困った顔をして、アルファ厶が俺の頭を抱き寄せた。


「カナ。怒った顔もいいが、いつもの笑った顔が見たい。しつこくした俺が悪かった。だから、機嫌を直してくれ」
「…わかったよ。アル…、治してくれてありがとう」
「ふっ…、おまえは本当に素直で可愛いな…。カナ、スイ国の奴に他には何もされてないか?」


俺の頭にキスを落として、アルファ厶が聞いてくる。
俺はアルファ厶の肩から顔を上げて、首を傾げて考えた。


「うん…。あっ、そうだ。あの人、手で触れるだけで俺の痛めた腰を治してくれたよ?」
「手?触れる?」
「うん、そう。思いっきり氷を押しつけられたみたいに冷たくなったと思ったら、もう治ってた。もしかしてアルも、泉の水がなくても治せ……アル?」


炎のような赤い髪をして、炎を操る力を持つアルファ厶の周りの空気が、まるで冷蔵庫に入ったかのようにひんやりと冷えている。
俺は、怯んで少しだけ身体を離そうとして、アルファ厶の広い胸にガッチリと抱き込まれてしまった。


「アル…?ど、どうしたの…」
「スイ国のアイツ…カナに触れたのか?」
「え…?まあ…。俺が腰が痛いと言ったら、治してくれたよ?その時に痛む腰に手を…」
「腰だけか?もしや…尻を…」
「いっ、いや!腰だけだからっ!お尻も触られそうになったけど、断固拒否したからっ」
「なにっ?触られそうに?…アイツ、今からでも殺りに…」


俺の頭の上で、アルファ厶が物騒なことを呟き始めた。
俺は慌ててアルファ厶の首に抱きつき、鼻の頭にキスをする。


「アル!大丈夫だから。不本意だけど、あの人に腰を治してもらったから、俺は2階から飛べたんだよ?ね?利用できるものは利用しなきゃ!それよりも!俺、ヴァイスに翼があるなんて知らなかったっ。すっごくかっこよかったっ!ねぇ、他の馬もヴァイスみたいに翔べるの?」


俺のキスに機嫌を良くしたのか、綺麗な緑色の目を蕩けさせて、アルファ厶が俺を見た。
ゆっくりと顔を近づけると、唇に2、3度触れて「カナ」と低く囁いた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

ブラッドフォード卿のお気に召すままに

ゆうきぼし/優輝星
BL
第二章スタート!:イブキと婚約をして溺愛の日々を送ろうとしていたブラッドフォード。だが、国の情勢は彼の平穏を許さず、王の花嫁選びが始まる。候補者が集まる中、偽の花嫁(♂)が紛れ込む。花嫁の狙いはイブキの聖獣使いの力で。眠りについた竜を復活させようとしていた。先の戦においての密約に陰謀。どうやらイブキの瞳の色にも謎があるようで……。旅路にて、彼の頭脳と策略が繰り広げられる。 第一章:異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

処理中です...