炎の国の王の花

明樹

文字の大きさ
上 下
93 / 432

事件 2

しおりを挟む
身体が熱くて息が苦しい。
俺は今、何をしてるんだろう。
確かアルファムと一緒に城に戻って来た筈だ。アルファムの傍で幸せな時を過ごしていた筈だ。
それとも…。
今までのこと、全部夢だったのかな?
俺は、あの日崖から落ちて、今は地獄にいるんだろうか。
地獄の釜で焼かれてるから、こんなにも熱くて苦しいんだろうか。
生きていても苦しかったのに死んでも苦しいなんて、俺はどうすればいいんだろう…。


…あれ?でも微かに聞こえる「カナ!」と呼ぶ声。あれはアルファムの声だ。
やっぱり夢じゃなかった?じゃあなんで俺はこんなに苦しんでるんだ?
えーと…、アルファムの部屋に戻って来て、アルファムとキスをして。シアンが来てアルファムが出て行ったから、テーブルに置かれていたプリンに似たデザートを食べて…。え?あっ!あのデザート?あれを食べてからおかしくなった気がする…っ。もしかして、何か入ってた…?





「カナっ!大丈夫だ!必ず助けてやるから頑張れっ!」
「まだ身体が熱いっ。もう少し解熱薬を持ってきなさい!」
「はいっ」


頭がガンガンと鳴って気分が悪い。目を閉じてるのにグルグルと目が回る。手足の先も痺れていて、何よりも呼吸が苦しい。
意識はハッキリとして、すぐ傍にいるであろうアルファムやシアン、リオの声が聞こえる。
ただ身体が動かせないから、口も開くことが出来ない。


俺の額から流れる汗を拭う大きな手…。アルファムの手だ。熱い顔に冷やりとした手がとても気持ちよくて、俺は自分からその手に擦り寄った。


「カナ?気がついたか?大丈夫だからな。すぐに良くなる。だから頑張るんだぞ」


アルファムの言葉に、俺は何とか頷いてみせる。瞼を開けようと力を入れるけど、ピクピクと震えるだけで開けることが出来ない。
不意に瞼に柔らかい感触がして、「愛してるぞ」と愛しい声が響いた。


「薬持って来ました!」
「ありがとう」


走って来る足音とリオの大きな声がして、シアンがお礼を言う。
すぐに俺の口の中に粉薬が入れられ、口移しで水を飲まされた。


ーーあ…アルファムの唇…。


俺はもっと水が飲みたくて、微かに唇を動かしてもっと…と懇願する。
それに気づいてくれたのか、続けて数回、アルファムが口移しで飲ませてくれた。


俺は、ホッと息をついて身体を弛緩させる。
今の薬が効いてきたのか、水を飲んだからか、少し身体が楽になって、俺は再び眠りについた。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

度を越えたシスコン共は花嫁をチェンジする

恋愛 / 完結 24h.ポイント:852pt お気に入り:1,943

幸子ばあさんの異世界ご飯

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:491pt お気に入り:135

転生少女は異世界でお店を始めたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,434pt お気に入り:1,712

篭の中の愛しい人

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:695

【R18】高飛車王女様はガチムチ聖騎士に娶られたい!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:596pt お気に入り:252

明日はきっと

BL / 連載中 24h.ポイント:1,079pt お気に入り:1,102

百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:191pt お気に入り:707

【R18】花嫁引渡しの儀

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,357pt お気に入り:93

処理中です...