炎の国の王の花

明樹

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事件 3

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「奏、話があるんだ」
「なに?あ、前に言ってたそろそろ一緒に住むという話?」
「…ごめん。俺、来月結婚するんだ。だから俺と別れてほしい…」
「え…?結婚?だ、誰と…。え?」
「会社の上司の娘。3ヶ月前に見合いをしてさ。奏がいるし、一回だけ会って断ろうと思ってたんだ。だけどその子、すごく可愛くていい子で。やっぱり本来は、こういう子と一緒にいるのが普通だよな…って思ったんだ。ごめんな。でも、奏のこと本気で好きだったよ。奏もさ、俺なんかより可愛い女の子見つけな。奏は綺麗な顔をしてるから、すぐに彼女が出来るよ」
「…やめろ。それ以上何も喋んな。…わかった。別れる。その子と幸せに。今まで、ありがとう」
「奏も、ありがとう」





「カナ?どうしたっ。俺はここにいるぞ」


強く抱きしめられて、俺は目を覚ました。
すぐ目の前で、アルファムが心配そうに俺を見ている。アルファムの顔が近づいて、俺の頬に流れる涙を吸っていく。


ーーこの世界での暮らしに慣れて忘れていたのに…。なんで今頃あんな夢を…。


俺はズズっと鼻をすすると、アルファムの名前を呼んだ。


「アル…。俺、熱出てたの?」
「…いや。落ち着いて聞けよ?おまえが食べた甘い菓子の中に、毒が入っていた。弱くはない毒だ。少ししか食べてなかったから助かったが、全部食べていたら危なかった。俺が傍にいたのに、気づけなくて悪かった…」


アルファムの顔が、痛そうに歪む。
俺は、まだ少し震える手を伸ばしてアルファムの頬を包み、首を伸ばしてチュッと唇にキスをした。


「ううん…、アルが懸命に俺を助けようとしてくれてたの、知ってるよ。アルだけじゃなく、シアンやリオも…。俺こそごめんね。また、心配かけさせちゃったね…」
「…シアンがひどく責任を感じてな。自分が用意するように言ったから、自分の責任だと言って。カナが落ち着いた直後に自害しようとしたから止めた。今は牢屋に繋いである。そうでもしないと、隙があれば死のうとするからな」
「えっ!なんでっ!?シアンは悪くないのに…」
「ああ。だからカナ、体調が回復したら、シアンに許すと言ってやってくれないか?」
「許すも何も…。わかった。シアンが考え直すように言うよ」
「頼む。カナ、何か食べるか?腹が減っただろう」


そう言って、アルファムが俺から離れてベッドから降りる。
温もりが離れて寂しく感じたけど、テーブルに置いてあった物を持って、すぐに戻って来た。
アルファムが持つ皿には、日本で言う桃のような果物が切られて乗ってある。
アルファムが、一つをフォークで刺して半分食べた。そして残りの半分を、俺の口元に当てる。


「ほら、これは大丈夫だ。安心して食え」


微笑むアルファムを見て、小さく口を開ける。口の中に入った果実はすぐに溶けて、甘い果汁が広がって、とても美味しかった。
コクンと飲み込むと同時に、目尻から涙が零れ落ちる。


「どうした?何も不安になることはないぞ。これからは、おまえの口にする物は、全部俺が安全か確かめてやるからな」


うん…と頷く俺の目からは、次から次へと涙が溢れ出した。


だってアルファムが、国の一番上に立つ王様のアルファムが、自分の身が危険に晒されるかもしれないのに、俺の為に毒味をしてくれる。それって、自分の命よりも俺が大切だと言ってくれてるようで、すごく嬉しかったんだ。


元いた世界で、あいつに…颯人にフラれて絶望して死のうと崖を飛び込んで良かった。
未だになんで来たのかわからないけど、この世界に来れて、アルファムに出会えて良かった。
色々辛いこともあるけど、そんなことは些細に思える程、今が最高に幸せだ。
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