炎の国の王の花

明樹

文字の大きさ
125 / 432

日の国ディエス 16

しおりを挟む
土を踏み固めた森の中の道を馬を走らせてしばらく進み、森を抜けて今度は石畳の道を進む。すぐに街が見えて来て、俺は思わず感嘆の声を上げた。
街の一番端にある建物が、鮮やかなオレンジ色をしていたからだ。


「わぁ、すごいな」
「派手だな」


俺の声に被せて、後ろからリオの声が聞こえる。


炎の国エン国は、赤色のイメージだけど、街の建物は、白色で統一されていて、とても落ち着いた雰囲気だ。赤色の建物は、今のところ見たことがない。
一方日の国ディエスは、黄色のイメージで、たいていの建物は、薄い黄色をしている。でも、こんなに鮮やかなオレンジ色の建物は、この国に来て初めて見た。


馬の速度を落として歩かせながら、サッシャが俺の隣に並んで言う。


「目立つだろ?店の主人の好きな色なんだって。あそこが、これから食事する店だよ」
「へぇ、明るそうな店だね。どんなのがあるんだろ?楽しみ」


壁の色や外観から、元いた世界の南国の地域をイメージする。
俺は、ワクワクしながら手綱を絞り、馬の脇腹を軽く蹴った。ごく軽く蹴った筈だった。
その瞬間、馬が前足を上げていななき、すごい勢いで走り出した。


「え?なんでっ!」


叫び声を上げて慌てて手綱を引き、馬を止めようとする。
一瞬速度を緩めた馬が、いきなり方向転換をして、街の外へと駆け出した。
その間、俺はずっと強く手綱を引いていたのだけど、馬が全く言うことを聞いてくれない。
俺は恐怖と焦りでびっしりと身体中に汗を流しながら、振り落とされないように身体を倒して、固く目を閉じて馬の首にしがみついた。


「カナデっ!」
「待てっ!どうしたんだっ!」


後ろからサッシャやリオの叫ぶ声が聞こえるけど、後ろを振り向くことも出来ない。
馬の尋常ではない速さの中、薄らと目を開けて前を見た。
本来なら森の中を走ってる筈なのに、俺の周りが白い霞に包まれて何も見えない。


「ちょっ…!え?なにこれっ。マロン!止まれっ!」


馬の耳に向かって名前を呼ぶけど、聞こえないのか反応しない。
全く止まる気配のない馬に、どんどんと不安が募る。


このままじゃ、マロンがどこかにぶつかるまで止まらないんじゃないだろうか?
そうしたら、俺もマロンも怪我だけじゃ済まない気がする。
だけど馬を止める魔法なんて知らないし…。


もう一度、何とか身体を起こして手綱を引くけど、やっぱり言うことを聞いてくれない。
気がつくと、馬が大きく道を逸れて、草や大きな石がゴロゴロと転がる草地へと入っていた。


「マロンっ!どこに行くんだよっ。止まれーっ!」


喉が裂けたかと思うほどの大きな声で叫ぶ。
すると、あれ程言うことを聞かなかった馬が、嘘のように速度を緩めてピタリと止まった。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

処理中です...