294 / 432
12
しおりを挟む
魔法や剣の練習をする為の、地面も壁も石で囲まれた広場に着くと、俺はシャツの袖をリオにめくってもらった。
「リオ、見てて」
両手を突き出し、掌に力を込める。
熱くなった掌から飛び出た赤い炎のかたまりが、石の壁に穴を開けた。
「さすが…すごい威力ですね」
「うん。でもこれを片手で出来るようになりたい。片手だと、まだ力が弱くてパンを焦がすくらいしかできない…」
「パン…そういや俺のパン…。いやっ、あれでも充分すごいと思いますけどね!俺がカエン様くらいの頃は、紙すら燃やせなかったですからっ」
「ふーん。リオと一緒にしないでよ」
「おうっ……、すいません…」
俺は、物心ついた頃から炎を使えて、さすが王と神の子の血を受け継いでいる、素晴らしいと褒められてきたんた。炎の国一番の力を持っているとも言われたんだ。
でも父さまも、小さな頃からすごい炎を使えたと聞いた。
父さまに勝ちたいとかじゃないけど、父さまに褒められたい、すごいと言われたい。
俺は、父さまみたいになりたいんだ。
「カエン様、魔法はアルファム様に見て頂くとして、先に剣の稽古をしましょうか?カエン様は、まだお小さいので、大人と比べるとどうしても力が弱い。前にも言いましたが、優れた剣士になるには、剣に慣れることも大切ですが、剣を振るう為に身体に力をつけなければなりません。なので、腕やお腹に力をつける練習をしましょう」
「えー、あれやだ。疲れるもん」
「あ、じゃあいいのですね?戦いの時に剣を弾かれて情けない思いをしても平気なのですね?王様になるあなたが、家来の前で、そんな恥ずかしい姿を見られても、いいのですね?」
「ううっ、リオのくせに生意気だ!」
「何とでも仰って下さい。俺は、カエン様の為に言ってるんです。さ、こちらに来て仰向けになって下さい」
リオが地面に絨毯を敷いて、ほっぺを膨らませて睨む俺に、その上に寝転ぶように言う。
この練習は、疲れるから嫌いだ。好きな魔法や剣の練習だけをしていたい。
俺はいずれ王様になる。王様なんだから、国で一番強くなりたい。家来の前で、恥ずかしい姿は見せたくない。
だからリオの言う通り、身体に力をつける練習も大事だとわかってる。
俺は、リオの指し示した場所で、しぶしぶと仰向けに寝転んだ。
「では始めましょう」と、リオが俺の足を両手で押さえる。
俺は、両手を頭の後ろで組むと、お腹の力だけで上半身を起こした。これをすると、父さまやリオみたいに、お腹が固くなって割れるんだって。あの割れたお腹はかっこいいから、俺もそうなりたい。
母さまのお腹も、薄らと割れてるように見えるけど、肌が白く輝いて見えるからよくわからない。
ぼんやりとそんなことを考えながらやっていると、リオが、「はい集中してっ。あと二十回はやって下さい」と言う。
俺ばっかり疲れて嫌だから、後でリオにもやらせようと、俺は気合を入れて残り二十回をやり終えた。
「リオ、見てて」
両手を突き出し、掌に力を込める。
熱くなった掌から飛び出た赤い炎のかたまりが、石の壁に穴を開けた。
「さすが…すごい威力ですね」
「うん。でもこれを片手で出来るようになりたい。片手だと、まだ力が弱くてパンを焦がすくらいしかできない…」
「パン…そういや俺のパン…。いやっ、あれでも充分すごいと思いますけどね!俺がカエン様くらいの頃は、紙すら燃やせなかったですからっ」
「ふーん。リオと一緒にしないでよ」
「おうっ……、すいません…」
俺は、物心ついた頃から炎を使えて、さすが王と神の子の血を受け継いでいる、素晴らしいと褒められてきたんた。炎の国一番の力を持っているとも言われたんだ。
でも父さまも、小さな頃からすごい炎を使えたと聞いた。
父さまに勝ちたいとかじゃないけど、父さまに褒められたい、すごいと言われたい。
俺は、父さまみたいになりたいんだ。
「カエン様、魔法はアルファム様に見て頂くとして、先に剣の稽古をしましょうか?カエン様は、まだお小さいので、大人と比べるとどうしても力が弱い。前にも言いましたが、優れた剣士になるには、剣に慣れることも大切ですが、剣を振るう為に身体に力をつけなければなりません。なので、腕やお腹に力をつける練習をしましょう」
「えー、あれやだ。疲れるもん」
「あ、じゃあいいのですね?戦いの時に剣を弾かれて情けない思いをしても平気なのですね?王様になるあなたが、家来の前で、そんな恥ずかしい姿を見られても、いいのですね?」
「ううっ、リオのくせに生意気だ!」
「何とでも仰って下さい。俺は、カエン様の為に言ってるんです。さ、こちらに来て仰向けになって下さい」
リオが地面に絨毯を敷いて、ほっぺを膨らませて睨む俺に、その上に寝転ぶように言う。
この練習は、疲れるから嫌いだ。好きな魔法や剣の練習だけをしていたい。
俺はいずれ王様になる。王様なんだから、国で一番強くなりたい。家来の前で、恥ずかしい姿は見せたくない。
だからリオの言う通り、身体に力をつける練習も大事だとわかってる。
俺は、リオの指し示した場所で、しぶしぶと仰向けに寝転んだ。
「では始めましょう」と、リオが俺の足を両手で押さえる。
俺は、両手を頭の後ろで組むと、お腹の力だけで上半身を起こした。これをすると、父さまやリオみたいに、お腹が固くなって割れるんだって。あの割れたお腹はかっこいいから、俺もそうなりたい。
母さまのお腹も、薄らと割れてるように見えるけど、肌が白く輝いて見えるからよくわからない。
ぼんやりとそんなことを考えながらやっていると、リオが、「はい集中してっ。あと二十回はやって下さい」と言う。
俺ばっかり疲れて嫌だから、後でリオにもやらせようと、俺は気合を入れて残り二十回をやり終えた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます!
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ブラッドフォード卿のお気に召すままに
ゆうきぼし/優輝星
BL
第二章スタート!:イブキと婚約をして溺愛の日々を送ろうとしていたブラッドフォード。だが、国の情勢は彼の平穏を許さず、王の花嫁選びが始まる。候補者が集まる中、偽の花嫁(♂)が紛れ込む。花嫁の狙いはイブキの聖獣使いの力で。眠りについた竜を復活させようとしていた。先の戦においての密約に陰謀。どうやらイブキの瞳の色にも謎があるようで……。旅路にて、彼の頭脳と策略が繰り広げられる。
第一章:異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。
*マークはR回。(後半になります)
・ご都合主義のなーろっぱです。
・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。
腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手)
・イラストは青城硝子先生です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる