炎の国の王の花

明樹

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とりあえず男が魔法で姿を消している可能性を考えて、ナジャが再び牢に結界を張り直した。そして皆で城の中へと移動した。
客間へ案内され、一旦アレン王子とナジャが出ていく。二人が扉の向こう側へと消えた瞬間、俺は大きく息を吐き出した。

「あーあ…残念。ハオランを連れ戻す方法がわかると思ったのにな」
「そうですね。しかしあの男、気味が悪かった」

リオが俺の上着を脱がせ、きれいに畳んで棚の上に置く。自身の上着も脱いで棚の上に並べて置くと、ブルっと身体を震わせる。

「そう?気味の悪さなら、前に城を襲ってきた男の方が気味悪くない?」
「ああ、あいつですか?カナデやアルファム様やカエン様を襲った死神みたいな男。あれは気味悪さが突き抜けていたし、アルファム様や俺を傷つけたから、ただただ腹が立つだけですよ」
「ふふっ、なにそれ」

リオはたまに…いや、頻繁におかしなことを言う。でもそういう言動に、癒されていることは否めない。
俺はソファーに身を沈めると、「疲れた」と呟いた。
リオが部屋の中をうろうろとしながら「そうでしょうとも」と頷く。

「一昼夜を休まずに隣国にまで来たのですから」
「ふーん?おまえ、俺のことをバカみたいに体力があると言ってたじゃないか」
「…あれはですね、カエン様が一刻も早くハオランの手がかりを知りたいだろうと思いましてですね……ごめんなさい!失礼なことを言いました!カエン様の体調が心配なので休んでください!」
「調子のいいやつ」

そもそも怒る気はないけど、リオの下げた頭を見て全身の力が抜ける。俺は苦笑しながらソファーに横になった。

「あ、カエン様、休むならベッドに」
「寝ないよ。少し横になるだけ。ところでおまえ、さっきから何をしてるの?」

リオは俺と話している間も、部屋の中を歩き回っている。リオの行動の意図が読めなくて、俺は立てた肘に頭を乗せてたずねた。

「水の国は炎の国と正反対の属性じゃないですか」
「そうだな」

水と炎は相性が悪い。だが国交はどの国よりも順調だ。
リオがようやく観察をやめて、ソファーの前に来る。

「たぶん、炎の国にはない技術や魔法がたくさんあると思うんです。それがわかればいいなと思いまして、よーく観察してたんですよ」
「そんなことしなくてもナジャに聞けばいいだろう」
「カエン様。水の国の者に直接聞くと、炎の国の情報も教えねばなりません」
「水の国とは友好国だ。教えればいいだろう」
「ダメです。その国だけが持つ技術、魔法は、国家機密です。簡単に教えてはなりません。はあ…しっかりしてこられたと思いましたが、カエン様はまだまだ子供ですねぇ」
「よしわかった。リオ、国に戻ったら、俺の剣の稽古に付き合え。これは命令だ」
「……え、俺、死んでしまう…」

リオが情けない顔で肩を落とす。
俺を子供扱いした罰だと意地悪く笑っていると、外から低い声がした。



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