狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 敵兵二人を気絶させ、ギデオンの所へ向かう最中、リオがアンの背中で途切れそうになる意識を何とか保っていると、急に揺れがおさまった。アンが足を止めたのだ。
 早くギデオンに会いたいのに、なぜ止まる?

「アン…?」
『どういうことだ?』

 リオは、いつもの倍、重たく感じる頭をゆっくりと上げアンを見る。
 アンが首を伸ばして対岸を凝視している。

「どう…」したの?と口を開きかけたその時、恐ろしい咆哮が響いた。対岸の魔獣の声だ。それも強大な魔獣の。
 デックの体力が戻り、魔獣を操っているのか?どうする?今襲われたら困る。俺は何もできない。
 リオは焦った。命に替えてもギデオンを守ると誓ったのだから、どうにかして身体を動かせないかと力をいれるが、腹に力が入らないせいか、モゾモゾとしか動けない。
 そのうち、今度は対岸から太鼓の音が聞こえてきた。攻撃の合図か?と更に焦っていると、不思議なことに、敵が一斉に戻っていく。岸に寄せていた小舟に乗り離れていく松明の火を見て、リオは深く息を吐きだした。

「よかっ…た…早く…ギデオン…」

 もう口を開くのもしんどい。リオがアンの毛をギュッと掴む。
 アンはチラリとリオを見て、振動が伝わらないよう静かに歩き始めた。



「リオ!リオ!」
「…ん」

 耳元で名前を呼ばれている。しかも大きな声で。そんなに呼ばなくても聞こえているよ。誰?…あ、ギデオンか。そっか、ギデオンの所へ連れてきてくれたんだね、アン。ありがとう。

『リオの頼みは断れぬ』
『それよりも覚悟しろ。かなりの激痛だ』
『それを抜けば、あとは俺が治してやる。安心しろ』

 矢継ぎ早にアンが頭の中に話しかけてくる。一体なんのことだろうと考える間もなく、脇腹に激痛が走り、全身が跳ねた。

「うあっ!や…っ、いたっ」
「リオ!耐えろっ、辛いならこれを噛め!」
「ぐっ…」

 両手両足を押さえられているらしく、暴れたいのに動かせない。痛みに耐えられなくて、唇を噛もうとすると、口に何かが当てられた。リオは躊躇ちゅうちょせずにそれを噛んだ。とんでもない激痛の後に、じくじくとした痛みが続く。矢を抜いたであろう箇所に、生温なまぬるい感触が続き、やがて痛みが落ち着いた。
 噛んでいた物を離し、水を飲まされてからの記憶がない。後で聞いた話によると、治癒後に気を失い、丸一日眠っていたらしい。
 次に目を覚ました時、ギデオンがリオの手を握り、ベッドの端に頭を乗せて眠っていた。目の下には、うっすらと隈が出ている。顔色が悪い。疲れた顔をしている。
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