狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 横腹の傷は、アンが熱心に舐めていたら塞がったらしい。
 治療にあたった医師が驚いて騒ぎ出したために、ギデオンが「この犬は特別なのだ。決して他言してはならぬ」と金貨を握らせて帰したと悪い顔で話してくれた。
 え?賄賂わいろじゃん、いいの?とリオは心配になったが、「いい。必要悪だ」とあまりにも堂々としていたので、そんなものかと納得した。
 続いて「傷が塞がったとはいえ油断してはならぬ、安静にしていろ」と強く言われたので、二日は大人しくしていたリオだったが、三日目には我慢できなくなった。
 もう腹に力を入れても痛みがなくなり、軽快に動ける。リオは、ギデオンに頼み許しを得て、散策に出かけた。
 屋敷から遠く離れてはならぬとギデオンにしつこく言われ、渋々頷いたものの、リオは不満だった。見知らぬ土地に来たのだから、いろいろと見て回りたい。なので屋敷から出てすぐに、護衛としてついてきたアトラスとジス、ニコラに「近くの街まで行きたい」と願望を口にした。そして即座に断られた。

「ダメだ。屋敷が見える範囲からは出るなとギデオン様からきつく命じられている。それに街に行くとなると馬か馬車が必要だ」
「ええ~、でもほら、街はあそこに見えてるじゃん」
「近くにあるように見えるが、歩くと一刻はかかる」
「アトラスぅ」

 ニコラにビシッと否定されて、リオはアトラスを見た。
 アトラスにも「ギデオン様が怖いから無理!」と断られる。
 悲しげに項垂うなだれたリオを可哀想に思ったのか、いつもの如くリオの傍を離れないアンが、リオの手を舐めた。その手でアンの頭を撫でて、「アンの背中に乗せて連れていってくれる?」と聞くが、即座に「ダメだ」と再びニコラに否定される。
 アンは、好きにしろと言う様に、リオに頭を擦り付けている。
 リオもわかっている。わざわざ、ギデオンを心配させるようなことはしないししたくない。だけど少し希望を言っただけだ。だから諦めのため息をついた。
 リオの様子を見てジスが苦笑して言う。

「街に行きたいならギデオン様に頼んでみなよ。連れていってくれるよ」
「うん…でもさ、ギデオンは忙しくしてるから頼めない」
「まあな。ビクター様が、いまだ国境を見張っておられるから、ギデオン様が王に報告書を送らなければならないからな」

 ジスの言葉に「え?」とリオは顔を上げる。気絶していたから状況がよくわかっていなかったのだけど、今はどうなってるんだ?

「ビクターさんは、まだ国境に残っているの?」
「ああ。敵が撤退したように見せかけている可能性もあるからな。でも密かに対岸に人をって調べたところ、確かに撤退したようだと知らせが届いていたから、明日にもこちらに来られるんじゃないか」
「そっか…よかった。少数の所に魔獣が襲ってきたら怖いもんな」

 「そうだな」と各々が頷きながら歩き出した。
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