狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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 ミラは「怖っ」と苦笑して、隠れるようにデックの後ろにさがる。
 ギデオンがリオに顔を近づけ、「大丈夫か」と囁く。
 リオは小さく頷いたが、怒りで荒くなる呼吸を止められない。
 その時、ローランが口を開いた。

「ずいぶんと非人道的なことをする。魔法とは、人を助けるためにあるのでは?」

反論しようとするミラを制して、フランツが答える。

「非人道的とは思わない。貴重な人材である魔法を使う者を蘇らせたんだ。むしろ褒められるべき行いだ」
「なるほど。あなた方とは意見が合わないな」
「それは残念だ」

 ビクターの顔つきが厳しくなる。ローランを守るために、警戒を強めたのだ。
 ギデオンも険悪な顔になり、リオを後ろにさげようとする。しかしリオは動かずに、ミラを睨みながら言った。

「一度死んだ者を蘇らせることが褒められるわけないだろう。禁忌の魔法は危険だから禁忌なんだ。そんな魔法を使って君も無事ではすまないよ」
「僕は無事だよ。魔法の力が強いから平気だ。それにさ、一度やってみたかったんだよね。だからデックを蘇らせることが成功して、ひどく興奮したよね」
「は?なんだそれ。デックを実験体にしたのか?アンタの欲望のために?なあ、静かに眠らせてやれよ。デックはアシュレイ王子の傍で眠りたかったんだよ。デックは生き返りたいなんて望んじゃいない。まさかロンにもその魔法を使ったのか?」
「そんなに怒らないでよ。隣の狼領主みたいに怖い顔になってるよ」
「ミラ、答えろ」

 ミラが更に後ろにさがった。リオの気迫に押されたかのように。

「守護獣と魔法を使う者は一心同体ってことは知ってるよね?だからデックが蘇ったと同時に、守護獣も目を開けたんだよ。そして君達の主はオルフェス王子だと暗示をかけた。だからデックとその守護獣は、王子の命令しか聞かないよ」
「デックが俺と目が合ってるのに、反応しないのはどうして?」
「生前の記憶がないから。人形と同じだから」
「クソっ!」

リオはギデオンから手を離して拳を振り上げた。しかしその手は、下ろされる前にフランツに掴まれてしまう。

「野蛮な。俺のミラに何をする」
「離せっ!こいつは許せないっ」
「ミラを殴ろうとするなら、この手首を折るが?」
「それはやめていただきたい」

 リオの手首を掴むフランツの腕を、ギデオンが掴んだ。どれほどの力なのか、フランツの顔が微かに歪む。

「リオ、こいつを殴っても、おまえの手と心が痛むだけだ。やめておけ」
「…ん」

 ギデオンに優しく諭され、リオはノロノロと手をおろした。
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