前世馴染と来世でも絶対に一緒になるハナシ

赤茄子橄

文字の大きさ
2 / 19
第1章 最期の別れの後、最初に出会うまで

第2話 アナタの居ないハジマリ その1

しおりを挟む
手に感じる温かさが優しく私を包み込んでくれている。

あぁ、私は今、夢を見てるなぁ。

「......世で......ならず......キミの......てを、僕のものに......」

それに、またこの夢だ。
物心ついた頃からたまに見るこの景色。

私の手を握りながら必死にも幸せそうにも見て取れる様子で、きちんと聞き取れない何かを叫ぶ、誰ともわからない、多分男の人の夢。
この夢を見られているときは、その内容も意味もわからないのに、なぜか心が満たされる。

だからお願い、もう少しだけ、この幸せな気持ちのままで居させて。
目を覚まさせないで......。







ピピピピピピピピピピッ。

無情にも私とお布団の深い仲を阻害しようとする悪魔の鳴き声が聞こえてくる。

まだ大丈夫......。もう1回、さっきの幸せな夢の続きを、見させて......。

ぼんやりともう一度夢の世界に入りたい気持ちと、純粋に布団との愛を育みたいという気持ちが、その鳴き声の主である時計さんの頭を叩かせる。

あぁ、時計さん。叩いちゃってごめんなさい。でも、私の機嫌を損ねるうるさいあなたが悪いの......。だからせめて......あと、5分だけ......zzz。

「夕愛ちゃーん!そろそろ起きないと遅刻するわよ~。下りてきてご飯食べましょー!」

再び夢の世界に入ろうと布団を被り直そうとしたとき、大好きなお母さんが私を呼ぶのが聞こえてきた。
大好きなお母さんとはいえ、この瞬間だけはちょっと嫌いになりそうになる。
だけどお母さんに呼ばれちゃったら起きるしかない。

「はぁい」

私は気だるげに返事をして布団との強い絆を渋々なげうち、2階にある自分の部屋から1階のダイニングへと移動する。
途中で洗面所に寄って顔を洗い、ダイニングに入るとエプロン姿のお母さんと、テーブルに座って新聞を広げるお父さんの姿が目に入った。

「おはよう、夕愛 (ちゃん)」

いつもと変わらない朝の景色と2人からの挨拶に、意識も半覚醒の寝ぼけ眼を擦っていつもと同じ挨拶を返して席につく。

「おはよぉ」

そうしたらすぐにお母さんが「はいどうぞ」といって朝ごはんを出してくれた。
いつもと同じメニュー。ハムエッグにトースト、それと牛乳が提供されている。
手を合わせて「いただきまぁす」と宣言してから、ゆっくりとモシャモシャと食べ始める。

お母さんも自分の分のご飯をテーブルに並べてエプロンを外すと、席についてすぐ話しかけてきた。

「夕愛ちゃん、今日は終業式だっけ?持って返ってこなきゃいけない荷物がいっぱいだったりしない?ちゃんと持って返ってこれそうかしら?」

そう、今日は終業式。
私、皇夕愛すめらぎゆあの小学校3年生最後の登校日なのだ。

終業式の日は学校に置いている荷物を全部持って返ってこないといけない。
私はこれがとても嫌だ。

私は一部の男子たちから学校でちょっとだけ嫌がらせされている。
教科書にハートマークとその男子たちの名前を勝手に書かれたり、気づかない間にかばんやお道具箱の中に、たくさん噛んだ跡が残ったストローが入れられていたりとか。

文字は鉛筆で書かれてるだけだから、ある程度は消しゴムで消せるんだけど、よく見たらわかっちゃうくらいの跡が残ってしまう。
ストローなんかは純粋に気持ち悪くて、見つけたときには泣いちゃったこともある。
それに文字は消しても、消している間に凄く惨めな気持ちになるし、嫌がらせを受けている自分の弱さが情けなくもなる。

何が嬉しくてこんな嫌がらせをするのか、私には本当にわからない。
男子たちに理由を聞いても、「お前がかわい過ぎるのが悪い」とか「仲良くなりたいだけ」だとか、本当に意味がわからない適当なことを言うだけで、本当のことを教えてくれはしない。

周りの子たちも、なぜか「あー、かわいそうだけど、しょうがないよー」とか、「彼氏を作ったらなくなるんじゃない?」とか、こちらも何を言ってるのか理解できないことだけ言ってきて、私のことを助けてはくれない。

ただ、私の昔からの大親友の2人だけは、気づいたときには助けてくれる。
だから私はまだ元気に学校に通うことができている。2人には本当に感謝してるし、ずっと大好きだ。

ともかく、そんな状況なわけで、意地悪された荷物を家に持ち帰って、万が一にでも両親に見られたりしたらと思うとすごく気が重くなる。
だから私は終業式の日が嫌いだ。荷物を持ち帰る風習が嫌いだ。

長く回想しちゃったけど、お母さんに聞かれたことに答えないと。
持って返ってくることはできるんだから、いつまでも子ども扱いしないでほしいよ、まったく!

「もちろん、ちゃんと持ってこれるよ!」
「......そう?でも、何か大変なこととか困ったことがあれば、お母さんとお父さんに相談してね?」
「そうだぞ、お父さんたちは何があっても夕愛のことを助けるからな!普段全然甘えてくれない夕愛のことだ。遠慮しているのかもしれないが、何でも俺たちに甘えるんだぞ!はっはっはっ!」

努めて明るく返したけど、お母さんの表情を見ると、私が何か隠していることには気づいているように見える。
でも、それに気づかないふりをして、私に気を遣ってくれる。
もしかしたらお父さんは何も気づいてないのかもしれないけど、いつもこうやって豪快に笑い飛ばして安心させてくれる。
そんな2人のことが、本当に大好きだ。

「うん、ありがとぉ!何かあったらお話するねぇ」といって朝のルーティンである2人との雑談と食事を終えて食器を片付けた後、2階の自分の部屋に戻って、さっと身支度をする。
私が通う小学校は制服があるので、それに着替える。

ある程度準備ができたころ、ピンポーンと軽快なベルの音が家の中に鳴り響く。
お母さんがでてくれたみたいだ。

毎朝のことなので、誰が尋ねてきたかは聞くまでもない。
それでもお母さんはいつも私に伝えてくれる。

「夕愛ちゃーん、理人りひとくんとはるかちゃんが来てくれたわよ~」

良い時間なのでそろそろ来ると思っていた。

さっき話した私を助けてくれる数少ない大親友の2人だ。
隣のおうちに住んでいて、昔からいつも一緒の2人は、毎朝私を迎えに来てくれる。

お母さんの呼びかけに「はぁい」とお返事して、階段を下りて玄関に向かう。
靴を履いて、両親に「いってきまぁす」と挨拶して、家を後にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです

しーしび
恋愛
「結婚しよう」 アリーチェにそう約束したアリーチェの幼馴染みで勇者のルッツ。 しかし、彼は旅の途中、激しい戦闘の中でアリーチェの記憶を失ってしまう。 それでも、アリーチェはルッツに会いたくて魔王討伐を果たした彼の帰還を祝う席に忍び込むも、そこでは彼と王女の婚約が発表されていた・・・

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

処理中です...