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第2章
皇女殿下
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転移した先はとてつもなく広くて豪華なホールだった。
「なっなんだお前は!?」
「へーここが皇城か...広いな」
「お前は誰だ!?」
「でもなーなんかイメージと違うな」
「だからお前は誰だ!」
気がついたら周りに兵士がずらりと並び俺を囲んでいた。
奥の方をよく見ると玉座的な所に俺より少し年下そうな女がいる。
お偉いさんだな...
「あーもううっせえな。こいつが襲いに行った所の主だと言えば...分かるか?」
そう言い右手に持っていた甘栗を投げつける。
「なっこいつはムーガ様!」
「ムーガ様が行ってた所は伊吹島...となると...」
兵士の顔が青ざめていく。
「[鬼神 酒呑童子]だと!?」
「やっと分かったか」
「皆の者武器を下げてろ!」
奥にいるお偉いさんが声を上げる。
「しっしかしムルカ皇女殿下。相手は酒呑童子ですぞ!」
「いいから武器を下げぬか!」
「...はっ」
兵士が武器を下げていく。
「済まぬな。酒呑童子殿、うちの者達が迷惑を掛けたようだ。というかその...なんかゴツゴツした物を取ってくれぬか?」
「ああ。分かったが...くれぐれも手を出すなよ」
俺の一言で周囲の兵士やメイドが息を飲む。
兵士が手を出さないとなった所でようやく俺はバルログをぬいだ。
しかし警戒は解いた訳ではない。
「[モード ガーディアン]」
『[モード ガーディアン]ファイル解凍。ジェネラルコア再起動 人工知能封入。ヘルメットと頭部融合開始...融合完了。[モードガーディアン]オンライン』
『マスター お呼び頂き光栄です』
「おゎっなっなんだこいつは!?」
「安心しろ…てめぇ達から手を出さなきゃ動かない。まぁ手を出せば…ここら辺は焦土とかすからな」
「ッ!」
周りにいた兵士達が息を呑む。
そこで兵士達から視線を外し皇女に視線を向ける。
「ほぉこれが噂の酒呑童子か...して妾の所に何用できた?」
「そこのクソ甘栗が手を出してきたからな。苦情だよ苦情」
「貴様ムルカ皇女殿下に対してなんたる口聞き!「うるせぇ黙ってろクソが。こっちはお前らの所為で迷惑被ったんだよ。それに俺はこの国の国民じゃねぇんだよ。なのに尊ぶ必要ねーだろ」
...」
「...アッハッハッハ!久し振りに笑ったわ!妾は第一皇女のムルカ・キラークなのじゃ!よろしく頼むぞ」
「よろしくな。俺は黒幼ラトだ」
「ほう、このような奴あった事なかったじゃろ。のぅターニャ」
「はい。確かにそうですね。ラト殿 私はターニャ・ボウラ。魔法大臣兼ムルカ様の護衛銃騎士です。よろしくお願いします」
「よろしく。一応こいつが来た経緯を教えろよ」
「あぁそうじゃったの。妾は酒呑童子を丁重に招待してくれる者を募集すると言ったら[私に行かせてください陛下。私が行けば酒呑童子ごときは震えて怖気付くでしょう]とか言っておったから行かせたのじゃ」
「そんな奴来させんなよ」
「むぅすまなかったな。以後気をつける」
「ムルカ様。せっかくラト殿が来てくださったのですからムーガに頼んだ依頼を今伝えては?」
「ほう。忘れとったわ」
「おいっ依頼ってなんだよ」
「じゃあラト!今からギルドに行くぞ!」
「あれ なんか 俺スルーされてない?華麗にスルーされてる?」
「よし!転送魔法陣起動!皇都ギルドへ!」
そうムルカが言った瞬間足元が青白く発光する。
「結局スルーかい!」
そして俺が言ったら目の前が白くなり眩しくて目を閉じた。
「ん?ここは?」
目を開けたら周囲は先ほどいたホールからは全く違う場所に俺はいた。
そこは酒場...ホール…そして…カウンターがあった。
ここで先ほどムルカが言っていた言葉を思い出す。
『よし!転送魔法陣起動!皇都ギルドへ!』
うん 今分かった…ここギルドだ。
「凄いじゃろ。ここのギルドは。とても栄えてるじゃろ」
「しかし栄えすぎも悪い気がしますけどね」
近くにあった酒場からはドンチャカドンチャカと喧騒や太鼓の音が聞こえてくる。
「うん。うるせーしな」
「え?なんて言ったのじゃ?お主は」
どうやらこの喧騒で声がかき消されてるらしい。
「何でもない。それより要件の場所に行かせろよ」
「わかったのじゃ」
そう言いムルカは俺の手を引っ張りカウンターに連れて行く。
当然後ろからターニャとバルログも付いて来る。
その所為で周囲から好奇の視線が送られる。
まぁバルログの力を見ればそれが畏怖に変わるんだけど。
「何用ですか?第一皇女殿下」
カウンターの女性が第一皇女殿下と言ったら周囲の狩人達は騒ぎ始める。
「え?まじ?あの若い子が第一皇女殿下?」
「だったらあの左にいるのはターニャ魔法大臣か?」
「そうだろ。でもそしたらあの男と甲冑は何だよ?やけに男と甲冑の周りに濃密な魔力があるんだけど」
「ん?ボルボッソの魔眼が発動したのか?」
「珍しいな。こいつの魔眼が発動するとしたとしてそれで濃密な魔力って人の皮を被った鬼か?あの男は?」
「ギャハハ!違いねぇ」
このような声が聞こえるが実際鬼なので仕方ない。
「此奴の妖登録をな」
「あれ?妖って登録しなきゃいけないの?」
「そうですね。義務という訳ではないですがやった方が得ですよ」
「何が?」
「例えばRBTの格安購入が可能になったり」
「はやく登録しようぜ」
「…現金ですね」
「あのー登録する方名前をお聞かせください」
「黒幼ラト」
「私はレノラ・アッカーマンです。よろしくお願いします。では早速…」
レノラがガソゴソと机を漁り中から出した書類を書き始めた。
「出来れば妖の名前がわかるんだったら教えてください」
「鬼神酒呑童子」
【は?】
俺たちの言葉を盗み聞きしていた奴等と受付嬢が一斉に言った。
「すみません。もう一度お願いします」
「だから鬼神酒呑童子」
「まじですか?」
「まじです」
……
「んな訳ねぇだろ!こんなヒョロヒョロの野郎が酒呑童子だって?笑っちまうぜ」
酒場のゴリマッチョが近づいてくる。
「なぁレノラちゃんよ~。確か妖の登録って模擬戦が必要だったよな?」
「そうですね」
「じゃあ俺と対決しろよ。自称鬼神酒呑童子さんよ」
こいつは力の差が分からん程のバカなのか?
しかし周りの反応がおかしい。
「なんであのボイスが動いたんだよ。よりによって」
「あれだろ。自称鬼神酒呑童子か見極めたいんだろ。最近Aランクに上がって異名も手に入れて調子乗ってるし」
「まぁそうだよな」
なるほど、こいつは要するに調子乗ってやがんだな。
「いいだろう。受けてやるよ」
「じゃあ訓練場に今すぐ来い。レノラちゃん~審査官は確かレノラちゃんだったよね。来てよ~」
そう言いバカは訓練場とやらに走って行った。
「…皇女殿下 よろしいですか?」
「うむ。妾も此奴の実力を見たいから良いのじゃ」
「というかラトさんは?」
「ん?もうバルログと行った」
「あぁもうー」
そしてレノラも訓練場へと走って行った。
「はいはーい!みんなかけて~。大穴は自称鬼神酒呑童子!本命は青錆のボイス!さぁ乗った乗った」
「俺はボイスに銅貨4枚」
「じゃあ俺は童子に銀貨1枚」
「私も童子に銅貨9枚」
「皆さんー今から始めますよ。見る方は観客席にどうぞ」
なぜかしら訓練場はごった返している。
「ヘッヘッヘ…覚悟は良いか?」
ボイスがハンマーの打撃部分がソ連の戦車1k17のようになっている武器をクルクルと回しながら聞いてくる。
うぜぇな。
一方俺は魔力剣を振り回す。
「レノラさん」
「なんですか?」
「これRBT使うとこの人死ぬけどいい?」
「…いいですよ」
「おいおいおいちょ待て!?なんでいいの?なんで?」
「だってそもそもボイスさんが挑んだじゃないですか」
「…」
反論のしようがなくなったボイスがRBTに手を伸ばす。
「では両者 RBTを」
ボイスが首筋にRBTを突き刺す。
そうすると大気に錆び臭い匂いが漂ってくる。
「ジェネラルグレムリン 見参!」
【ワアーー!!】
周囲を大歓声が包み込む。
そして俺がRBTを使う。
俺を中心として爆風が起き歓声が止む。
そして毒々しい角を生やした俺が現れる。
「鬼神酒呑童子…お相手つかまつろう」
観客達は歓声を出す事や指を動かす事も出来ない。
しかしターニャやムルカ等はぎこちなくだが腕を動かせている。
じゃ戦えるようにちょっと抑えるか。
「ッ!オキソデイション!」
ボイスがそう言った瞬間青い波動がボイスから放たれた。
多分名前的に触れたら錆びるのだろう。
あいにく俺の魔力剣は魔物の素材なので錆びない。
しかも俺の黒い角が蒼くなっている。
あちゃー能力吸収しちゃったよ。
「クソッ!」
ボイスが突っ込んできた…と思うとそのハンマーを地面に叩きつけた。
「喰らえ!レーザーウェイブシールド!」
今度は紅い波紋が地面に浮かぶ。
そしてボイスの周りに紅い障壁が立ち並ぶ。
「いきなり切り札出しやがったよ」
「おっかねぇな」
やっと喋れるほど慣れた狩人達が話し始める。
「これで大した事ないとは言わせないぜ。いけ!!」
そう言うと紅い障壁が俺に向かって迫ってくる。
そしてぶつかる所で…またしても俺の黒い角が吸収した。
「大した事ないな」
「ッ!」
「寝てろ」
「グフッ!」
俺の魔力剣の柄が腹にめり込んだと同時に吸収した能力を使う。
「レーザーウェイブ」
「ンゴぁ」
「永遠にな」
柄から出た紅い波紋がボイスの体の内部で荒れ狂う。
「オキソデイションブラスト」
ビクンッ!とボイスの体が震えそのまま動かなくなる。
「おい。決着はついたぞ」
【は!?】
「え?なっなんで急に」
「こいつの血の中の鉄を酸化鉄に変えて血流を止めてやったのさ」
【血の中の鉄?酸化鉄?】
「まぁ要するに血の流れを止めて殺したんだ」
この時全員が思った。
【なっなんと恐ろしい事を】
……
「しょっ勝者黒幼ラト!」
俺は狩人達が畏怖の目線で見てくるのを尻目にレノラの元へ向かった。
「これでいいか?」
「はっはい。十分です。後ほど証明書をお渡しします」
「ああ分かった」
レノラと話し終えた俺は大袈裟という程に手を振っているムルカの元へ小走りで行った。
「で依頼ってなんだ?」
「はて なんじゃったかな?」
「忘れたんかい!?」
「ムルカ様」
ターニャがムルカの耳元で囁く。
ゴニョゴニョ
「ん?なんじゃターニャゴニョゴニョと申して」
本当にゴニョゴニョと言ってたんかい?!
「ふふふ。冗談ですよ」
もう一度ターニャが囁く。
「おおあれの事か。ではラトよ。ギルドの指名依頼用の個別部屋に行くぞ」
「分かった」
「では行くぞ」
「あっ。ちょっと待ってくれ。バルログ」
「御用でしょうか?」
「俺に向けて憎悪や殺意の籠った目で見てる奴を無力化してから個別部屋に来い」
「了解しました」
「よし!じゃあ行くか」
「そうじゃな」
そうして俺達は個別部屋に向かって進みだした。
「で…なんだ依頼は?」
俺はフッカフカの椅子に腰掛けながら聞いた。
「その事なんじゃがの…ダグザ王国は知っておるか?」
「ああ知っているよ」
ダグザ王国とは錬金術国家として栄えているキラーク帝国の隣国である。
「ダグザ王国とはな最近関係が悪くなっておってな…」
ここでとても嫌な予感がし始める。
「お主にはその戦争に参加して欲しいんじゃ」
その頃バルログは…
「すみません。個別部屋は何処にありますか?」
「はっはひ!?こっこちらでございます」
別の受付嬢に怯えながらも案内されてるのであった…
「なっなんだお前は!?」
「へーここが皇城か...広いな」
「お前は誰だ!?」
「でもなーなんかイメージと違うな」
「だからお前は誰だ!」
気がついたら周りに兵士がずらりと並び俺を囲んでいた。
奥の方をよく見ると玉座的な所に俺より少し年下そうな女がいる。
お偉いさんだな...
「あーもううっせえな。こいつが襲いに行った所の主だと言えば...分かるか?」
そう言い右手に持っていた甘栗を投げつける。
「なっこいつはムーガ様!」
「ムーガ様が行ってた所は伊吹島...となると...」
兵士の顔が青ざめていく。
「[鬼神 酒呑童子]だと!?」
「やっと分かったか」
「皆の者武器を下げてろ!」
奥にいるお偉いさんが声を上げる。
「しっしかしムルカ皇女殿下。相手は酒呑童子ですぞ!」
「いいから武器を下げぬか!」
「...はっ」
兵士が武器を下げていく。
「済まぬな。酒呑童子殿、うちの者達が迷惑を掛けたようだ。というかその...なんかゴツゴツした物を取ってくれぬか?」
「ああ。分かったが...くれぐれも手を出すなよ」
俺の一言で周囲の兵士やメイドが息を飲む。
兵士が手を出さないとなった所でようやく俺はバルログをぬいだ。
しかし警戒は解いた訳ではない。
「[モード ガーディアン]」
『[モード ガーディアン]ファイル解凍。ジェネラルコア再起動 人工知能封入。ヘルメットと頭部融合開始...融合完了。[モードガーディアン]オンライン』
『マスター お呼び頂き光栄です』
「おゎっなっなんだこいつは!?」
「安心しろ…てめぇ達から手を出さなきゃ動かない。まぁ手を出せば…ここら辺は焦土とかすからな」
「ッ!」
周りにいた兵士達が息を呑む。
そこで兵士達から視線を外し皇女に視線を向ける。
「ほぉこれが噂の酒呑童子か...して妾の所に何用できた?」
「そこのクソ甘栗が手を出してきたからな。苦情だよ苦情」
「貴様ムルカ皇女殿下に対してなんたる口聞き!「うるせぇ黙ってろクソが。こっちはお前らの所為で迷惑被ったんだよ。それに俺はこの国の国民じゃねぇんだよ。なのに尊ぶ必要ねーだろ」
...」
「...アッハッハッハ!久し振りに笑ったわ!妾は第一皇女のムルカ・キラークなのじゃ!よろしく頼むぞ」
「よろしくな。俺は黒幼ラトだ」
「ほう、このような奴あった事なかったじゃろ。のぅターニャ」
「はい。確かにそうですね。ラト殿 私はターニャ・ボウラ。魔法大臣兼ムルカ様の護衛銃騎士です。よろしくお願いします」
「よろしく。一応こいつが来た経緯を教えろよ」
「あぁそうじゃったの。妾は酒呑童子を丁重に招待してくれる者を募集すると言ったら[私に行かせてください陛下。私が行けば酒呑童子ごときは震えて怖気付くでしょう]とか言っておったから行かせたのじゃ」
「そんな奴来させんなよ」
「むぅすまなかったな。以後気をつける」
「ムルカ様。せっかくラト殿が来てくださったのですからムーガに頼んだ依頼を今伝えては?」
「ほう。忘れとったわ」
「おいっ依頼ってなんだよ」
「じゃあラト!今からギルドに行くぞ!」
「あれ なんか 俺スルーされてない?華麗にスルーされてる?」
「よし!転送魔法陣起動!皇都ギルドへ!」
そうムルカが言った瞬間足元が青白く発光する。
「結局スルーかい!」
そして俺が言ったら目の前が白くなり眩しくて目を閉じた。
「ん?ここは?」
目を開けたら周囲は先ほどいたホールからは全く違う場所に俺はいた。
そこは酒場...ホール…そして…カウンターがあった。
ここで先ほどムルカが言っていた言葉を思い出す。
『よし!転送魔法陣起動!皇都ギルドへ!』
うん 今分かった…ここギルドだ。
「凄いじゃろ。ここのギルドは。とても栄えてるじゃろ」
「しかし栄えすぎも悪い気がしますけどね」
近くにあった酒場からはドンチャカドンチャカと喧騒や太鼓の音が聞こえてくる。
「うん。うるせーしな」
「え?なんて言ったのじゃ?お主は」
どうやらこの喧騒で声がかき消されてるらしい。
「何でもない。それより要件の場所に行かせろよ」
「わかったのじゃ」
そう言いムルカは俺の手を引っ張りカウンターに連れて行く。
当然後ろからターニャとバルログも付いて来る。
その所為で周囲から好奇の視線が送られる。
まぁバルログの力を見ればそれが畏怖に変わるんだけど。
「何用ですか?第一皇女殿下」
カウンターの女性が第一皇女殿下と言ったら周囲の狩人達は騒ぎ始める。
「え?まじ?あの若い子が第一皇女殿下?」
「だったらあの左にいるのはターニャ魔法大臣か?」
「そうだろ。でもそしたらあの男と甲冑は何だよ?やけに男と甲冑の周りに濃密な魔力があるんだけど」
「ん?ボルボッソの魔眼が発動したのか?」
「珍しいな。こいつの魔眼が発動するとしたとしてそれで濃密な魔力って人の皮を被った鬼か?あの男は?」
「ギャハハ!違いねぇ」
このような声が聞こえるが実際鬼なので仕方ない。
「此奴の妖登録をな」
「あれ?妖って登録しなきゃいけないの?」
「そうですね。義務という訳ではないですがやった方が得ですよ」
「何が?」
「例えばRBTの格安購入が可能になったり」
「はやく登録しようぜ」
「…現金ですね」
「あのー登録する方名前をお聞かせください」
「黒幼ラト」
「私はレノラ・アッカーマンです。よろしくお願いします。では早速…」
レノラがガソゴソと机を漁り中から出した書類を書き始めた。
「出来れば妖の名前がわかるんだったら教えてください」
「鬼神酒呑童子」
【は?】
俺たちの言葉を盗み聞きしていた奴等と受付嬢が一斉に言った。
「すみません。もう一度お願いします」
「だから鬼神酒呑童子」
「まじですか?」
「まじです」
……
「んな訳ねぇだろ!こんなヒョロヒョロの野郎が酒呑童子だって?笑っちまうぜ」
酒場のゴリマッチョが近づいてくる。
「なぁレノラちゃんよ~。確か妖の登録って模擬戦が必要だったよな?」
「そうですね」
「じゃあ俺と対決しろよ。自称鬼神酒呑童子さんよ」
こいつは力の差が分からん程のバカなのか?
しかし周りの反応がおかしい。
「なんであのボイスが動いたんだよ。よりによって」
「あれだろ。自称鬼神酒呑童子か見極めたいんだろ。最近Aランクに上がって異名も手に入れて調子乗ってるし」
「まぁそうだよな」
なるほど、こいつは要するに調子乗ってやがんだな。
「いいだろう。受けてやるよ」
「じゃあ訓練場に今すぐ来い。レノラちゃん~審査官は確かレノラちゃんだったよね。来てよ~」
そう言いバカは訓練場とやらに走って行った。
「…皇女殿下 よろしいですか?」
「うむ。妾も此奴の実力を見たいから良いのじゃ」
「というかラトさんは?」
「ん?もうバルログと行った」
「あぁもうー」
そしてレノラも訓練場へと走って行った。
「はいはーい!みんなかけて~。大穴は自称鬼神酒呑童子!本命は青錆のボイス!さぁ乗った乗った」
「俺はボイスに銅貨4枚」
「じゃあ俺は童子に銀貨1枚」
「私も童子に銅貨9枚」
「皆さんー今から始めますよ。見る方は観客席にどうぞ」
なぜかしら訓練場はごった返している。
「ヘッヘッヘ…覚悟は良いか?」
ボイスがハンマーの打撃部分がソ連の戦車1k17のようになっている武器をクルクルと回しながら聞いてくる。
うぜぇな。
一方俺は魔力剣を振り回す。
「レノラさん」
「なんですか?」
「これRBT使うとこの人死ぬけどいい?」
「…いいですよ」
「おいおいおいちょ待て!?なんでいいの?なんで?」
「だってそもそもボイスさんが挑んだじゃないですか」
「…」
反論のしようがなくなったボイスがRBTに手を伸ばす。
「では両者 RBTを」
ボイスが首筋にRBTを突き刺す。
そうすると大気に錆び臭い匂いが漂ってくる。
「ジェネラルグレムリン 見参!」
【ワアーー!!】
周囲を大歓声が包み込む。
そして俺がRBTを使う。
俺を中心として爆風が起き歓声が止む。
そして毒々しい角を生やした俺が現れる。
「鬼神酒呑童子…お相手つかまつろう」
観客達は歓声を出す事や指を動かす事も出来ない。
しかしターニャやムルカ等はぎこちなくだが腕を動かせている。
じゃ戦えるようにちょっと抑えるか。
「ッ!オキソデイション!」
ボイスがそう言った瞬間青い波動がボイスから放たれた。
多分名前的に触れたら錆びるのだろう。
あいにく俺の魔力剣は魔物の素材なので錆びない。
しかも俺の黒い角が蒼くなっている。
あちゃー能力吸収しちゃったよ。
「クソッ!」
ボイスが突っ込んできた…と思うとそのハンマーを地面に叩きつけた。
「喰らえ!レーザーウェイブシールド!」
今度は紅い波紋が地面に浮かぶ。
そしてボイスの周りに紅い障壁が立ち並ぶ。
「いきなり切り札出しやがったよ」
「おっかねぇな」
やっと喋れるほど慣れた狩人達が話し始める。
「これで大した事ないとは言わせないぜ。いけ!!」
そう言うと紅い障壁が俺に向かって迫ってくる。
そしてぶつかる所で…またしても俺の黒い角が吸収した。
「大した事ないな」
「ッ!」
「寝てろ」
「グフッ!」
俺の魔力剣の柄が腹にめり込んだと同時に吸収した能力を使う。
「レーザーウェイブ」
「ンゴぁ」
「永遠にな」
柄から出た紅い波紋がボイスの体の内部で荒れ狂う。
「オキソデイションブラスト」
ビクンッ!とボイスの体が震えそのまま動かなくなる。
「おい。決着はついたぞ」
【は!?】
「え?なっなんで急に」
「こいつの血の中の鉄を酸化鉄に変えて血流を止めてやったのさ」
【血の中の鉄?酸化鉄?】
「まぁ要するに血の流れを止めて殺したんだ」
この時全員が思った。
【なっなんと恐ろしい事を】
……
「しょっ勝者黒幼ラト!」
俺は狩人達が畏怖の目線で見てくるのを尻目にレノラの元へ向かった。
「これでいいか?」
「はっはい。十分です。後ほど証明書をお渡しします」
「ああ分かった」
レノラと話し終えた俺は大袈裟という程に手を振っているムルカの元へ小走りで行った。
「で依頼ってなんだ?」
「はて なんじゃったかな?」
「忘れたんかい!?」
「ムルカ様」
ターニャがムルカの耳元で囁く。
ゴニョゴニョ
「ん?なんじゃターニャゴニョゴニョと申して」
本当にゴニョゴニョと言ってたんかい?!
「ふふふ。冗談ですよ」
もう一度ターニャが囁く。
「おおあれの事か。ではラトよ。ギルドの指名依頼用の個別部屋に行くぞ」
「分かった」
「では行くぞ」
「あっ。ちょっと待ってくれ。バルログ」
「御用でしょうか?」
「俺に向けて憎悪や殺意の籠った目で見てる奴を無力化してから個別部屋に来い」
「了解しました」
「よし!じゃあ行くか」
「そうじゃな」
そうして俺達は個別部屋に向かって進みだした。
「で…なんだ依頼は?」
俺はフッカフカの椅子に腰掛けながら聞いた。
「その事なんじゃがの…ダグザ王国は知っておるか?」
「ああ知っているよ」
ダグザ王国とは錬金術国家として栄えているキラーク帝国の隣国である。
「ダグザ王国とはな最近関係が悪くなっておってな…」
ここでとても嫌な予感がし始める。
「お主にはその戦争に参加して欲しいんじゃ」
その頃バルログは…
「すみません。個別部屋は何処にありますか?」
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松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
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PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
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