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第37話 そんな何度も殺されるような戦い方、したくもないけどな

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 オレが完全魔防結界を張り巡らせたのと同時、多頭雷龍は縦横無尽に広域雷撃を射出する!

「くっ──!」

 オレたち、、は、ありったけの魔力を振り絞って爆発的な雷撃に耐える。

 本体のオレと、オレとまったく同じように判断できる個体──準本体10体は完全魔防結界の中にいて、それ以外の残機たちは各人で防御結界を張り巡らす。

 完全魔防結界は、術者の魔力が続く限り、魔法による攻撃を完全に無効化出来る。だがその反面、その場所から動けなくなるし、物理攻撃は防げないし、魔法攻撃も出来なくなる。

 しかしオレの場合は、動けなくなっても残機たちがいる。本体と準本体が司令塔となり、残機たちが手足のように動けば、完全魔防結界の欠点はかなり補える、はずなのだが……!

「1000体の残機が全滅してるぞ!?」

「まぢかよ!?」

「すぐに生成しろ!」

「もうやってる──身体生成コールプス・ジェネラティオ!」

 準本体たちが喚いている隙に、オレは身体生成を発現してさらに数千体の残機を出現させる──

 ──だが目前に、多頭雷龍の巨大な爪が迫っていた!

「ぐはぁ!!」

 準本体の数名が血しぶきをまき散らして吹き飛ぶ!

防御結界ディフェンシオ・オービチェ!」

 オレはかろうじて結界を張り直して、鉄筋コンクリの柱ほどにぶっとい爪受け止める! 激しいスパークが起こるが、しかし!

「魔防早く!」

 多頭雷龍の頭数本が、すでに魔法発現直前だ! ただの防御結界では、初撃より威力が倍増している雷撃は防げないぞ!?

「があぁぁぁぁぁぁ──!」

 結界はかろうじて生成されるも、準本体の一人が、結界に覆われる直前に雷撃の餌食となる。さらにオレの誰かが、完全魔防結界の内側に物理結界を展開した。

 ガギン!!

 爪を受け止めただけで、防御結界に亀裂が入る!

 物理攻撃を100パーセント防げる結界は存在しないから、これが破れたらアウトだぞ!?

「おい気張れよ!?」

「ってかお前も結界張れよ!?」

「あ、そうか!」

 完全魔防結界を一つ、防御結界を幾重にも展開し、オレたちは多頭雷龍の猛攻に耐える。

 だが──これじゃまるで勝ち目がないぞ!? 凌ぐことも無理っぽい!

 防御結界が壊されては張り直し、壊されては張り直しをしてなんとか拮抗したが、少しでもタイミングがずれたら惨殺される……!

 しかも多頭雷龍は広域雷撃を乱発しているから、いくら身体生成をしたところで近づくことすら出来ず全滅だ! 本体であるオレが参戦する最大の恩恵が、その場で身体生成が出来ることだというのにまったくの無意味!

 あのバケモノ、いったいどれほどに魔力が有り余ってんだよ!?

 いや待て……!

 冷静になれ!

 どんな魔獣であろうとも、魔力が無尽蔵だなんてあり得ない。

 だがオレたちは、実質的には魔力は無限、、、、、、、、、、だ。

 新鮮な残機は、魔力満タンで生成されるのだから。

 そのとき、本体のオレは魔力を消費するが──

 ──本体の魔力を回復させたければ、いちど死ねばいいのだ。

 そうすれば、すぐさまフレッシュな身体と交換される、、、、、、、、、、、、、、のだから。

 そして交換されれば、再び身体生成が可能となる。

 今まで、残機たちの戦いに本体は参戦したことがなかったから、考えたこともなかった戦法ではあったし──

「──そんな何度も殺されるような戦い方、したくもないけどな」

 オレは、頬を流れる冷汗を拭うこともせず、目減りした準本体たちを10体に戻してから命じた。

「完全魔防結界を可能な限り展開! そこに残機を生み出す!」

 異論も反論もせずに準本体たちは、無人の地面に完全魔防結界を展開する。オレはその中に数十名の残機を生み出していった。

 さらに、生み出された残機たちが、周囲に完全魔防結界を展開していく。残機は、思考能力こそ本体に劣るものの、使える魔法や身体的能力は本体と同じだ。身体生成自体は至極低燃費で一瞬だから、ねずみ算式に完全魔防結界と残機たちが増えていく。

「さぁトカゲ野郎! 根比べと行こうじゃないか!」

 オレの怒号に反応したわけではないようだが、しかし多頭雷龍は、周囲の様子がおかしいことに気づく。巨大爪による打撃をやめて、いつの間にか無数に現れていた完全魔防結界のドームを見下ろした。

 その数瞬後、けたたましい咆哮と共に、超強烈な広域雷撃を繰り出してくる!

 この出力、今日一番に強力だ!

 馬鹿の一つ覚えの雷撃ではあるが、まるで圧力でもあるかのようで、物理的に押し潰される気がしてくる!

「こなくそおぉぉぉぉぉぉ!!」

「ふっざけんなあぁぁぁぁぁぁ!!」

「今晩は呑みまくるからなあぁぁぁぁぁぁ!!」

 オレたちは思い思いに叫びながら、完全魔防結界を必死で支える。

 大空洞にはオレたちの叫びと、多頭雷龍の咆哮と、目映いばかりの閃光でもはや無茶苦茶だ。結界の外は何も見えないし、どういう理屈か地鳴りまで起こっている!

 さらに多頭雷龍は、雷撃発現しながら各結界へと突進を始める。防御結界を展開しても、その勢いと重量を削ぐことが出来なかった残機たちは無残に散っていった!

 魔防結界展開中では動くことも出来ないし、もうこうなっては、オレ本体がいる結界に突っ込まれないために、物量で押し切るしかない!

 潰される残機たちの端から、オレは残機を生み出していく。雷撃がひたすら縦横無尽に走りまくっているから目視することは出来なくても、残機の位置と人数は経験共有により把握できる。

 そんな無茶苦茶な攻防が、いったいどのくらい続いたのか……

 数分だったのかも知れないし、数時間だったかもしれない。

 オレの息は上がってきて、視界は霞み始めていた。

 ヤバイ……これはいよいよ魔力枯渇か。

 すでに数万体という残機を生み出している。しかも、一人一人が都市最高のレベル40だというのに、こうもあっさり倒されまくるとは……

 いくら燃費のいい身体生成魔法といえど、これはさすがに応える。

 仕方がない……魔力が完全に枯渇する前にいったん死んどくか、嫌だけど。

 意識が遠のいてきたのも相まって、オレは、注射か抜歯でもするかのような軽い気分で結界解除をしようとしたその直前、豪雨のように降り注いでいた雷撃が──やんだ。

 グルルルル…………

 正面を見れば、大怪獣のようなバケモノがうなり声を上げて、オレたちを睥睨していた。

 もしや──魔力が尽きたか!?

 オレはすかさず残機たちに命令する。

「結界解除! 一斉掃射しながら特攻だ!!」

 本体のオレは魔力枯渇寸前でも、残機たちはそうじゃない。生まれて死に、生まれては死にを繰り返しているから、まだ魔力が有り余っている残機も豊富にいる。

 さらにオートで動く残機たちだから微塵も躊躇うことなく、強力な魔法をぶっ放しながら多頭雷龍に特攻した。

 ガアァァァァァ──!

 多頭雷龍が雄叫びを上げたかと思うと、再び放電を始める!

「ちっ──まだ魔力が残ってたか!」

 だがさきほどまでの威力はない!

「こうなったら──オレも特攻してやんよ!」

 オレは結界をカットすると多頭雷龍へ突っ込む!

 今のオレにはもう魔力はほぼ残っていないから攻撃魔法も使えないが……あの雷撃に討たれれば痛みも感じず死ねるだろう!

 いや、死ぬんじゃない!

 雷撃によってオレは生き返るのだ!

 これが火炎だったら不死鳥のようだったのにな!!

 などと馬鹿なことを考えていたら、気づけばオレは吹き飛ばされていた。
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