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エピローグ
伝えれた言葉は。
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「おーい、早く行こうぜ、姉ちゃん!」
「……ちょっと、待て。この浴衣、動きにくい」
地球の夏は夜であろうと暑い。太陽が出ていた昼ほどではないが熱気がムンムンとしていて、涼しさをあまり感じない。過ごしにくい夜だな、ヒナノは思う。
「別に浴衣じゃなくたってよかったのに。慣れない格好じゃあ大変だろ」
ヒュウガのその言葉に、ヒナノは頬を膨らませてムスッとした。せっかく上界の店にまで行って買ってきたのに、ぞんざいに扱われたのでよい心地にならなかったようだ。そんなヒナノの気持ちを代弁するように、同じく浴衣を着ているノエルは言う。
「女の子が頑張って着付けてきたんだから、もっと言うことはあるでしょ。そんなだからアナタはモテないのよ」
その言葉、というよりノエルがそこに居たことは想定外だったらしく、ヒュウガは目を丸くして彼女を見つめていた。
「どっから湧いてきた?」
「私はゴキブリかって。その、いいじゃない。別に」
ノエルはヒュウガから目を逸らし、髪をくるくると弄りはじめた。
「……邪神ノエルは、どうしてかいつも、ヒュウガの周りに、いる。もしかしたら、ストーカーかも、しれない」
「ス、ストーカーですって? ああもう、やっぱりヒナノは苦手だわ」
睨み合うヒナノとノエル。今すぐにでも取っ組み合いの喧嘩を始めそうだったので、ヒュウガが慌てて中に割って入った。
「やめろよノエルも姉ちゃんも! オイラが悪かった! どっちも似合ってるから!」
「「えっ?」」
二人ともヒュウガに寄っていく。ほぼ同時に、二人は声を発した。
「……どっちが、かわいい?」
「どっちもなんて言わずに、一人に選びなさいよ」
ずいぶんと距離が近かったので、ヒュウガは顔を赤らめてオドオドし始めた。ついには耐えきれなくなり、彼は叫びながら『最高速』でどこかへ走り去ってしまった。残された二人は、やはり睨み合いの喧嘩を始める。
「ヒュウガくんは……アナタと私、どっちが好きなのかしらね」
「……実姉の、私には、恋愛感情を持たれても、困る。しかし、だからこそ、私が、見極めなければ。特に、お前は、ダメだ。というか、お前、ヒュウガのこと――」
「うーん、好き。ブラコンで過保護すぎる姉を持つヒュウガくんのことを救わなきゃね」
「……やっぱりお前は、ダメだ」
ヒナノもなんだかんだ言いながらヒュウガのことが好きだった。知らないうちにノエルという恋敵が登場したことにより、ヒナノは初めて嫉妬という感情を知った。
嫉妬の炎の渦巻く悍ましい激闘が始まる――と思いきや、ヒナノは思い出したかのようにあることを言い出した。
「……神レンガイが死んでたから、もう3日か」
「ああ、そうね。レンガイさん、かあ。あの人だったら、死んでもあの小娘にまとわり付いていそうだけど」
なんだか不思議とそんな感じがする。星が輝く夜空を見て、なんとなく思った。
「……邪神プーアの、スキルって、結局は、なんだったんだ」
「完全には言えないけれど、まああの子は気持ちを隠せないというか、感情表現が豊かな子だったからねえ」
「……そんなスキル、聞いたことがないぞ」
「ニッポンの女の子が一人で登山しにくるなんて、そうそう無いことですよ」
ガイドと思わしき肌の黒い男性は、後をついてくる少女を心配そうにチラチラと見ながら険しい山を登っていく。その少女は疲れているのか息も荒く、進むペースもずいぶんと遅い。ガイドの男は、少女を見るのとほぼ同じ頻度で腕時計を覗いた。日の出までに間にあうだろうか。
「それでアナタは、えーと、お名前なんでしたっけ」
「……ハナコ、です。たぶん」
「たぶん?」
自分の名前を答えるのに迷う必要があるのだろうか。ガイドの男は眉を顰めながらハナコと名乗る少女を見た。少女は地面を向いたまま、申し訳なさそうに答える。
「本当の名前は知らないんです。なんだか知らないけれど、アタシは一人でポツンと立っていて、知らないうちに施設に保護されて。ハナコ、は、その時に付けられた名前なんです」
「……なんだか失礼なことを聞いてしまったようですね。ごめんなさい」
ガイドの男は立ち止まって、深々と頭を下げた。その様子をみて、ハナコは力なく笑う。
「アタシ、なんでだかは分からないんですけど、この地球の景色をもっともっと見ておきたくて。お世話になっていた施設を抜け出して、今まで2年くらい、ずっと旅してたんです。…………早く行きましょう。体力は大丈夫ですから」
二人はそれから2時間近く歩き続けて、太陽が昇る前に山頂へたどり着くことができた。日の出を待つ間、太陽が出てくる方向を、ハナコはぼうっと眺めていた。あと数分で日の出だというタイミングで、ガイドの男は山に関する説明を始めた。
「私たちが登ってきたこの山は、タンザニア北部にある標高2960メートルの活火山、オルドイニョ・レンガイ」
レンガイ、というワードに、ハナコはピクリと反応した。
「レンガイはこの土地のマサイ族の言葉で、『神』を意味します」
レンガイ。神。
それらの言葉がハナコ――否、プーアの心に突き刺さった。
なんだか涙も出てきた。
いつの間にか太陽も出てきていて、この美しい大地を優雅に照らしていた。
「レンガイのバカ……」
少女の涙は、レンガイへと流れ落ちた。
「……ちょっと、待て。この浴衣、動きにくい」
地球の夏は夜であろうと暑い。太陽が出ていた昼ほどではないが熱気がムンムンとしていて、涼しさをあまり感じない。過ごしにくい夜だな、ヒナノは思う。
「別に浴衣じゃなくたってよかったのに。慣れない格好じゃあ大変だろ」
ヒュウガのその言葉に、ヒナノは頬を膨らませてムスッとした。せっかく上界の店にまで行って買ってきたのに、ぞんざいに扱われたのでよい心地にならなかったようだ。そんなヒナノの気持ちを代弁するように、同じく浴衣を着ているノエルは言う。
「女の子が頑張って着付けてきたんだから、もっと言うことはあるでしょ。そんなだからアナタはモテないのよ」
その言葉、というよりノエルがそこに居たことは想定外だったらしく、ヒュウガは目を丸くして彼女を見つめていた。
「どっから湧いてきた?」
「私はゴキブリかって。その、いいじゃない。別に」
ノエルはヒュウガから目を逸らし、髪をくるくると弄りはじめた。
「……邪神ノエルは、どうしてかいつも、ヒュウガの周りに、いる。もしかしたら、ストーカーかも、しれない」
「ス、ストーカーですって? ああもう、やっぱりヒナノは苦手だわ」
睨み合うヒナノとノエル。今すぐにでも取っ組み合いの喧嘩を始めそうだったので、ヒュウガが慌てて中に割って入った。
「やめろよノエルも姉ちゃんも! オイラが悪かった! どっちも似合ってるから!」
「「えっ?」」
二人ともヒュウガに寄っていく。ほぼ同時に、二人は声を発した。
「……どっちが、かわいい?」
「どっちもなんて言わずに、一人に選びなさいよ」
ずいぶんと距離が近かったので、ヒュウガは顔を赤らめてオドオドし始めた。ついには耐えきれなくなり、彼は叫びながら『最高速』でどこかへ走り去ってしまった。残された二人は、やはり睨み合いの喧嘩を始める。
「ヒュウガくんは……アナタと私、どっちが好きなのかしらね」
「……実姉の、私には、恋愛感情を持たれても、困る。しかし、だからこそ、私が、見極めなければ。特に、お前は、ダメだ。というか、お前、ヒュウガのこと――」
「うーん、好き。ブラコンで過保護すぎる姉を持つヒュウガくんのことを救わなきゃね」
「……やっぱりお前は、ダメだ」
ヒナノもなんだかんだ言いながらヒュウガのことが好きだった。知らないうちにノエルという恋敵が登場したことにより、ヒナノは初めて嫉妬という感情を知った。
嫉妬の炎の渦巻く悍ましい激闘が始まる――と思いきや、ヒナノは思い出したかのようにあることを言い出した。
「……神レンガイが死んでたから、もう3日か」
「ああ、そうね。レンガイさん、かあ。あの人だったら、死んでもあの小娘にまとわり付いていそうだけど」
なんだか不思議とそんな感じがする。星が輝く夜空を見て、なんとなく思った。
「……邪神プーアの、スキルって、結局は、なんだったんだ」
「完全には言えないけれど、まああの子は気持ちを隠せないというか、感情表現が豊かな子だったからねえ」
「……そんなスキル、聞いたことがないぞ」
「ニッポンの女の子が一人で登山しにくるなんて、そうそう無いことですよ」
ガイドと思わしき肌の黒い男性は、後をついてくる少女を心配そうにチラチラと見ながら険しい山を登っていく。その少女は疲れているのか息も荒く、進むペースもずいぶんと遅い。ガイドの男は、少女を見るのとほぼ同じ頻度で腕時計を覗いた。日の出までに間にあうだろうか。
「それでアナタは、えーと、お名前なんでしたっけ」
「……ハナコ、です。たぶん」
「たぶん?」
自分の名前を答えるのに迷う必要があるのだろうか。ガイドの男は眉を顰めながらハナコと名乗る少女を見た。少女は地面を向いたまま、申し訳なさそうに答える。
「本当の名前は知らないんです。なんだか知らないけれど、アタシは一人でポツンと立っていて、知らないうちに施設に保護されて。ハナコ、は、その時に付けられた名前なんです」
「……なんだか失礼なことを聞いてしまったようですね。ごめんなさい」
ガイドの男は立ち止まって、深々と頭を下げた。その様子をみて、ハナコは力なく笑う。
「アタシ、なんでだかは分からないんですけど、この地球の景色をもっともっと見ておきたくて。お世話になっていた施設を抜け出して、今まで2年くらい、ずっと旅してたんです。…………早く行きましょう。体力は大丈夫ですから」
二人はそれから2時間近く歩き続けて、太陽が昇る前に山頂へたどり着くことができた。日の出を待つ間、太陽が出てくる方向を、ハナコはぼうっと眺めていた。あと数分で日の出だというタイミングで、ガイドの男は山に関する説明を始めた。
「私たちが登ってきたこの山は、タンザニア北部にある標高2960メートルの活火山、オルドイニョ・レンガイ」
レンガイ、というワードに、ハナコはピクリと反応した。
「レンガイはこの土地のマサイ族の言葉で、『神』を意味します」
レンガイ。神。
それらの言葉がハナコ――否、プーアの心に突き刺さった。
なんだか涙も出てきた。
いつの間にか太陽も出てきていて、この美しい大地を優雅に照らしていた。
「レンガイのバカ……」
少女の涙は、レンガイへと流れ落ちた。
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