おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ

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018 ワイン作り

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苗木の植え付けから2ヶ月が経った。
小さかったブドウの苗木はわずか2ヶ月で急激に成長し、今や大人の背丈よりも高い。
設置した網目状の棚には蔦が絡みつく様に伸び広がり、藤の花のような綺麗な房の実を垂らしている。
その恐るべき成長スピードに奴隷達は仰天して驚いていたが、日々世話をする内に慣れたのだろう。
動じることも無くなり、丁寧に手入れをされたブドウの樹は奴隷達の努力の結晶として大粒の果実を実らせた。

「これは見事な出来栄えだな」

俺はブドウの出来に満足した。
遺伝子改造した甲斐があったというものだ。

収穫されたブドウは大豊作だった。
通常の収穫量と比べると軽く倍の量がある。
既存のブドウより粒が大きく、房も詰まっているためボリュームがあるのだ。
そのため普通は20tの収穫量が40tにもなった。
ワインに換算すると10,000本に相当する膨大な量だ。

「こんな見事なブドウは生まれて初めてだ!」

感激に打ち震えているのはワイン作りのために呼んだ酒職人ブレナンだ。
50代後半の無精髭を生やした酒職人は、キラキラした瞳で手にしたブドウを眺めている。
品質を確かめる様に指先で果実を押し潰し、滴る果汁を舐め取って驚きの声をあげた。

「なんて甘い果汁だ!果肉も瑞々しくて弾力も素晴らしい。これなら最高のワインが作れるぞ!ああ……ああ、神よ」

ブレナンは両手を組み合わせると祈りを捧げる様に天を仰いだ。
まるで最愛の女性に巡り会えたかのように眼から感動の涙を流している。
かなりオーバーなリアクションに思えるが、それだけ品質に雲泥の差があるという事だろう。

「どうかな?我が領地のブドウは」

「素晴らしい!よくぞ私に依頼してくださいました。心から感謝いたします。このブドウでワインを作れることを」

酒職人冥利に尽きると感極まるブレナン。
そもそも酒職人になったのも大の酒好きが高じてのことだ。
それだけに熱意とこだわりは他の酒職人の追随を許さず、寸暇を惜しんで得た知識と技術は最高峰の一角に名を連ねるまでになった。
しかし癖がある性格のためか。
酒作りに妥協しないため雇用主としばしば喧嘩になり、解雇されることが多い人物でもあった。

「ワイン作りは全て任せる。妥協せず思いのままにやってくれ」

「お任せください!最高のワインを必ず作ってみせます!」

全身から熱気を迸らせてヤル気を見せるブレナン。
この意気ならワインは問題なく出来上がるだろう。
俺はブレナンに期待を示すと。

「頼んだ。そうそう、労働力は奴隷の中から気に入った者を選んでくれ。自分の目で選んだ方が納得できるだろうから」

「承知いたしました。見所のある者には弟子としてワイン作りを叩き込みましょう」

「そうしてくれると助かる。ゆくゆくはワインを増産する予定だからね」

「それは素晴らしい!こりゃあ本腰を入れて取り組まなくてはなりませんな。善は急げと申します。すぐに人選に取り掛かりましょう」

ブレナンは深々と頭を下げると喜び勇んで奴隷の人選に向かって行った。
人生を酒作りに捧げているだけに、大役を任されてやりがいを感じているのだろう。
現代の知識を授けようと思ったが、まずはお手並み拝見が良いかもしれない。

俺はブレナンを見送ると、桶に敷き詰められたブドウを踏み潰している少女達の元に向かった。
ブドウの甘い香りが辺り一面に漂う作業場は、少女達の笑顔と笑い声で賑わっている。
市民や奴隷という身分の隔たりが微塵もない交わりだ。
少なくとも子供達の間では奴隷に対する偏見の心配は無用に思えた。

「問題を起こすのはいつでも大人なんだよなぁ」

子供達が仲良くしているのに対し、一部の大人達は奴隷と距離を置いていた。
あからさまな態度ではないものの、雰囲気から避けているのは察せられる。
それでも子供同士の交わりに割って入らない事が幸いだった。
彼等も不安や警戒を抱いているだけで嫌悪しているわけではない。
だから最低限の分別はわきまえているのだろう。

「このままじゃ困るんだが、まあ、仕方ないか」

交流の場としてワイン作りを催したのだが、肝心の大人達が打ち解けないと意味がない。
奴隷達も角を立てることを望まないらしく、消極的な態度が透けて見えている。
とはいえ急いで結果を出そうとすれば得てして失敗するものだ。
ここは腰を据えて取り組まなければなるまい。

「はぁ……地道にやってくしかないか」

苗木を急成長させる事はできても人間関係を急改善させることはできない。
リュシーファに頼めば何とかなるかもしれないが、それでは駄目だ。
今後の何十年先を考えると、自らの力で改善しないと意味がない。
続かないのだ。

「領主様」

ふと呼び掛けられて視線を落とす。
すると3~4歳の少女達が手を繋いで俺の前で笑顔を浮かべていた。

「ん、なんだい?」

「これ。美味しいから領主様にあげる」

紅葉のような小さな手で差し出したのは3粒のブドウだった。
大粒の果実は瑞々しく、少女の手では3粒を掴むのがやっとだ。
片手は奴隷の少女と繋いでいるため使えないが、それでも俺に食べさせたい一心で持ってきたのだろう。
無垢な少女の心遣いが何とも嬉しい限りだ。

「ありがとう。さっそくいただくね」

少女からブドウを受け取ると目の前で1つ食べた。
途端に少女達の顔がパッと明るくなる。
役に立てたことが嬉しいのだろう。
俺は少女達の頭を撫でると。

「美味しいブドウをありがとう。君達もお腹いっぱい食べてね」

「はい!」

少女達は元気な声で返答した。
そしてキャッキャッと笑顔ではしゃぎながら母親の元に駆けて行った。

「あの子達の将来のためにも頑張らないとな」

10歳の子供とは思えぬセリフを漏らしつつ、精神年齢アラフォーの俺は決意を新たにしたのだった。
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