おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ

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021 努力の成果

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1ヶ月後。
鶏小屋を管理しているトーマスが報告にやって来た。
ヒヨコの管理を一人で行ったためだろう。
目の下にクマができ、肌も髪も荒れて若干痩せたようだ。
トーマスは2ヶ月間孤軍奮闘した成果を執務室の机に提出する。
その成果を受け取った俺は全てに目を通すと。

「よくやったトーマス。お前の罰は今をもって帳消しだ」

「あ、あ、ありがとうございます!」

努力が認められた喜びに打ち震えるトーマス。
目に涙を浮かべて大きく頭を下げると。

「おれ、俺、自分の浅はかさを思い知りました!領主様の仰る通りでした。いかに自分が無知で努力を怠っていたのか、この2ヶ月間で身に染みました!」

トーマスの言葉には苦難を乗り越えた実感が込められていた。
提出された報告書を見ればわかる。
いかに試行錯誤して努力したかが。
事細かに成長を記録した報告書は後身の教科書として活用できる出来栄えだ。
少しばかり助け船を出したりはしたが、多くを自身の努力と創意工夫で乗り越えている。
元鶏業者だった経験が役に立ったのだろう。
成長に寄与したのならば厳しい罰を与えたのも無駄ではなかったようだ。

「トーマス」

「は、はい!」

「お前には期待してるぞ。こらからもよろしく頼む」

本心からの言葉だ。
それが伝わったのだろう。
トーマスは返事を出来ぬほど号泣し、膝から崩れ落ちて嗚咽を漏らした。





リオンを従えて鶏舎に行くと、成長した鶏が元気よく動き回っていた。
トーマスにより一羽も欠けることなく成長した鶏は、毎日新鮮な卵を産んでアクセルの住民の食卓を潤している。
他領ではそこそこ値が張る卵も、アクセル領内では安価で提供されていた。
全てはトーマスが尽力した結果だ。

「日中は外に出して運動させています。その間に鶏舎を清掃する手順になっています」

トーマスの指導を受けた奴隷達がせっせと鶏糞を回収し、汚れた箇所を熱湯で消毒していく。
手際が良いのは毎日行っている証だ。
清掃を終えた鶏舎は見違えて綺麗になり、異臭も消えて清潔感が漂っていた。

「鶏も元気だし、飼育員もよく働いている。トーマスの指導の賜物だな」

「ありがとうございます。ですが、ここまで来れたのは領主様の助け船があったればこそです」

「謙遜するな。知恵は貸したが、それを活かしたのはトーマスだ。誇っていいよ」

「ありがとうございます」

失敗を積み重ねて一皮剥けたトーマスは頼り甲斐のある男に成長していた。
男子三日会わざれば刮目して見よ、とはよく言ったものだ。
若者は短期間で成長する。
少年老いやすく学成り難しでは駄目なのだ。

「こちらが飼料です。細かく刻んだ野菜とトウモロコシにきな粉を混ぜ合わせたものです」

飼料を手に取って確認する。
人間が口にしても問題ない代物だ。
本来なら雑穀や魚粉なども配合したいところだ。
しかし穀物は加工品に必要だし、内陸地のため魚介は入手が難しく、運賃もかかって割高だ。
飼料に配合するにはコストの面で無理があった。

「食い付きはどうだ?」

「食欲旺盛でよく食べます。飼料を運び込むと一斉に鳴き出すので、とても気に入っているようです」

「そうか」

俺は薄ら笑いを浮かべた。
すでに鶏卵はアクセルの需要を満たしている。
そろそろ販路を拡大しても良いだろう。
1100羽もいれば供給は安定する。
土台としては充分に固まった。
そろそろ強気に攻めても良いかもしれない。

「トーマス」

「はい、なんでしょう?」

「計画を変更する。来月から孵化数を倍に増やすぞ」

「ええっ!ば、倍にですか?」

トーマスは困惑した。
聞き違いかと耳を疑う素振りを見せるほどに。

計画では毎月100羽を孵化させる予定だった。
管理や飼育員の教育等を考慮した数だ。
しかしトーマスがやらかしたため孵化を中断していた。
当然の処置だ。
10倍の数を孵化させたのだから。

だが、災い転じて福と成すだ。
トーマスの努力の成果は今後の大きな武器となる。
新人育成が容易となった事が何より大きいからだ。
孵化数を倍にしても支障はないだろう。
もっと増やしてもいいかもしれないが、それには労働力が不足している。
アクセルの住民は協力的になったが、やはり一部の人間が和を乱している現状だ。
奴隷を増やしたいが現状がそれを許さない。

だから強気に攻める!

俺は一切合切にカタをつけるため意を決した。

「大変だろうが頼む。これが上手く行けば見返りは大きい。きっとアクセルにも実りがあるはずだ」

「で、ですが……」

1000羽の飼育で懲りたのかトーマスは及び腰だ。

「お前はやり遂げた。次もきっと成し遂げると僕は信じている。努力の成果は必ずお前を助けるはずだ」

「領主様……」

言葉の真意を図りかねるトーマスは困惑の色を濃くするものの、真剣な顔で頼まれた事で腹を決めたのか。
奥歯を噛み締めて自らを奮い立たせると。

「お任せください!きっと御期待に応えてみせます!」

「その意気だ!頼んだぞトーマス」

俺は両手でトーマスの手を握った。
思いもよらぬ行動にトーマスは驚き慌てたが、信頼されていると気付いたのだろう。
トーマスも両手で握り返した。
その掌からは熱意が伝わってくる。
きっと期待に応えてくれるだろう。

「リオン」

「はっ!ここに」

「アスタールとベルナールを呼んでくれ。頼みたいことがあると」

「かしこまりました」

リオンは深く礼をすると二人を呼ぶため鶏舎を出ていった。
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