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062 変化する下町
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モストティアで購入した商品を売り捌くため暫くグラスに滞在する事になった。
クオリティの高い商品が多いため選別作業に難儀しているらしい。
どの購買層に売るのが適切なのか。
アスタールとエレオノーラは後々を見据えて戦略を練っているようだ。
調子に乗って買いすぎたかな?
と、少しばかり反省する。
もうしばらくベルナールに苦労させてしまう事になるだろう。
申し訳ないな。
まあ、ベルナールやその家族に沢山のお土産を買ってある。
それで許してもらおう。
暇を持て余した俺はグラスを散策する事にした。
護衛にリオンとエルフ族の青年を二人連れていく。
シャークウッドにはディナアリスのお守りを頼んだ。
というのもディナアリスはエルネスト商会が用意した料理に舌鼓を打っているが、ちょっと目を離すとすぐどこかに行ってしまう。
だから監視に慣れた傭兵に世話を頼むしかないのだ。
相変わらずグラスの街は賑わっている。
方々から交易商人が来訪して様々な品々を精力的に売買しているようだ。
王国直轄の都市だけに収入は莫大な事だろう。
いずれアクセルもグラスのように賑わう町にしたいものだ。
そんな目の肥えた交易商人達でさえ物珍しそうに俺達を見ている。
楽しそうに話しながら歩いていた交易商人達がピタッと会話を止め、驚きの眼を向けてくるのだ。
「やっぱ目立つよなぁ」
往く先々で好奇の目に晒された。
無理もない。
ハイエルフを見る機会など滅多にある事ではないからだ。
「そんなに私達は奇妙なのでしょうか?」
エルフ族の青年達のリーダーが困惑しつつ言った。
名をジョシュアという。
猛禽類のように目付きが鋭いポニーテールの美青年だ。
そして青年達の中で一番腕が立つ強者である。
「奇妙っていうより美形だから目立つだけさ。美しいものには誰だって目を奪われるだろ」
「そうなのですか?私など普通だと思うのですが」
ジョシュアは謙遜ではなく真面目に言った。
むしろ美形と言われて戸惑っている。
どうにも自覚が無いらしい。
ハイエルフの基準だとそうかもしれないが。
人族の感覚だと超がつくほどの美形だ。
長らく外界との交流を遮断してきた弊害だろう。
ここら辺の認識を徹底しないと余計なトラブルを起こしそうだ。
「この視線には慣れなければいけませんね。きっと行く先々で同じ視線に晒されるでしょうから」
もう一人の青年が冷静な口調で言った。
エルフ族の青年達の副リーダーを務めるユーリスだ。
知的な官僚という容姿だが性格は温和で冷静沈着な美青年である。
非常に頭が良く、脳筋なジョシュアを支える頼もしい存在だ。
もっともジョシュアは責任感と統率力がズバ抜けている。
脳筋ではあるもののリーダーとしての適性は折り紙付きだ。
その他の青年達も一人一人に抜きん出た才能がある。
ゲノム解析して得た結果だ。
エルフィネス国王とブリュンティールに押し付けられた青年達だが。
今となっては良い貰い物をしたと思う。
さて、話を戻そう。
好奇の目に関してだが。
ユーリスの懸念はもっともだ。
ハイエルフは眉目秀麗で同性ですら見惚れる美貌である。
だからさぞかし目立つだろう。
しかも美形では負けず劣らずのリオンもいる。
それを率いるのは少し見劣りする子供なのだ。
好奇の目で見られるのは致し方ない。
「まあ、あまり気にし過ぎなくていいよ。見てるだけなら害はないからね」
俺は軽口で場を和ませた。
ジョシュアとユーリスも悪感情ではないと判断してか素直に頷く。
それにしても随分と雰囲気が変わったものだ。
少し前ならエルフにさえ悪感情を向けていたはずだが。
ダグラス王とエルパウロ教皇の宣言によって迫害が禁止され、友和政策に舵を切ったおかげだろう。
それほど露骨な悪感情を感じないようになっている。
「あ、坊ちゃん。教会が修繕されていますよ」
リオンが指差した。
大工によって下町の教会に足場が組まれている。
補修工事を行う準備が整えられているらしい。
「シャークウッドに渡した金を有意義に使ってるようだな」
管理者のエンリケ神父は敬虔な信徒のようだ。
私利私欲に使わず公的な部分にだけ金を使っているらしい。
すでにエレオノーラから報告を受けてはいたが。
直に目にすると無駄金にならなくて良かったとしみじみ思う。
「あ、エルロンド様」
孤児と戯れていたジャンが声をかけてきた。
ものすごい笑顔で。
初めて見る年相応の無邪気な笑顔だ。
孤児達も同じく満面の笑顔で喜び回っている。
というのも廃屋同然だった孤児院が新しく建てられたからだろう。
エルネスト商会の出資によって崩壊寸前だった孤児院という名の廃屋は取り壊された。
そしてエルパウロ教皇の取り計らいで教会所有の土地を譲ってもらい、そこに石造りの頑丈な二階建ての孤児院を建てたのだ。
広い間取りの孤児院は二百人の孤児を収容できる容積がある。
たとえば食堂は孤児が一堂に会して食事できる広さだ。
さらに地下には貯蔵庫を設けて備蓄できるようにしてある。
そのため敷地の庭に畑があり自給自足できるようにしてある。
しかも通りに面する敷地には貸店舗が二つも併設されている。
これは安定した家賃収入と孤児達を小間使いとして働かせる意味合いを持たせたものだ。
これにより孤児院の運営の足しになり、孤児達は労働の仕方を覚えられる。
卒院後を見越しての配慮だ。
「住み心地は良さそうだな」
孤児達の明るい笑顔を見て現状に満足していると判断した。
まあ、廃屋に比べれば豪邸みたいなものだ。
すきま風もなく、雨漏りもなく、倒壊の恐れもない。
それに家具や衣服も最低限の品々を用意してある。
もっとも低レベルの品質だが。
「前の孤児院と比べたら雲泥の差ですよ。それに稼ぐ方法まで用意してもらって、本当にありがとうございます」
ジャンが鼻息を荒くして言った。
悲惨な環境を長く見てきただけに思う所があるのだろう。
激変した環境に感情が昂って興奮なりやまぬという感じだ。
「寄付だけじゃ運営は困難だからな。子供を受け入れる以上は収入を得られるようにしないと無責任だろ」
「なるほど。あ、じゃあ、今シスター達が勉強してるのって」
「もちろん運営費を稼ぐための勉強さ。それに経営の勉強もしてもらわないとな。どんぶり勘定じゃあ経営なんて出来ないからな」
若干の嫌味を込めて言った。
というのも、そもそもシスターエレナに問題があるからだ。
懐深く慈善に熱心なのは感心すべきことだろう。
だが養うべき糧を得る手段を構築できず、他人の情けを乞うだけでは無責任としか言えない。
その甘えた考えを叩き直す為にも勉強は必要不可欠なのだ。
今頃は己の浅慮を深く恥じている事だろう。
「だからか。孤児院に教室があったから変だなって思ったんですよ」
「読み書きくらい出来るようにならないとな。あと計算も。働く事になれば必要になる知識だ。小さい内から勉強すれば頭も良くなるだろ」
「なるほど。確かにそうですね」
ジャンは大きく頷いた。
そこまで考えているのかと感心しているらしい。
これも孤児達や下町の子供に教育を施すために用意したものだ。
もちろん授業料をいただくが。
下町の住人に金を要求するのは現実的じゃない。
なので労働や食材などの対価で代替できるようにするつもりだ。
そうすれば力仕事を手伝ってもらったり、食材の浪費を抑えることができる。
もちろん教育を施すのは利益を見込んでのことだ。
成績が優秀な子供はエルネスト商会で雇い入れる事を視野に入れている。
俺に至っては遺伝子解析で見込みのある人材を確保するって寸法だ。
だからこの孤児院に各地から孤児が集まれば。
それだけ優秀な人材に巡り会える可能性も高くなるだろう。
「いや~、おみそれしました。これでガキ共の将来が安心ですよ」
アッハッハッとジャンは笑った。
俺は他人事のように言うジャンに向かって真顔で。
「なに言ってんだ。ジャンも勉強するんだぞ」
「ゲッ、マジっすか!?」
予想通りの反応が帰ってきた。
俺の部下になった以上は当然の事だろうに。
ジャンは頭を抱えて「俺、できるかな?」と不安に慄いていた。
クオリティの高い商品が多いため選別作業に難儀しているらしい。
どの購買層に売るのが適切なのか。
アスタールとエレオノーラは後々を見据えて戦略を練っているようだ。
調子に乗って買いすぎたかな?
と、少しばかり反省する。
もうしばらくベルナールに苦労させてしまう事になるだろう。
申し訳ないな。
まあ、ベルナールやその家族に沢山のお土産を買ってある。
それで許してもらおう。
暇を持て余した俺はグラスを散策する事にした。
護衛にリオンとエルフ族の青年を二人連れていく。
シャークウッドにはディナアリスのお守りを頼んだ。
というのもディナアリスはエルネスト商会が用意した料理に舌鼓を打っているが、ちょっと目を離すとすぐどこかに行ってしまう。
だから監視に慣れた傭兵に世話を頼むしかないのだ。
相変わらずグラスの街は賑わっている。
方々から交易商人が来訪して様々な品々を精力的に売買しているようだ。
王国直轄の都市だけに収入は莫大な事だろう。
いずれアクセルもグラスのように賑わう町にしたいものだ。
そんな目の肥えた交易商人達でさえ物珍しそうに俺達を見ている。
楽しそうに話しながら歩いていた交易商人達がピタッと会話を止め、驚きの眼を向けてくるのだ。
「やっぱ目立つよなぁ」
往く先々で好奇の目に晒された。
無理もない。
ハイエルフを見る機会など滅多にある事ではないからだ。
「そんなに私達は奇妙なのでしょうか?」
エルフ族の青年達のリーダーが困惑しつつ言った。
名をジョシュアという。
猛禽類のように目付きが鋭いポニーテールの美青年だ。
そして青年達の中で一番腕が立つ強者である。
「奇妙っていうより美形だから目立つだけさ。美しいものには誰だって目を奪われるだろ」
「そうなのですか?私など普通だと思うのですが」
ジョシュアは謙遜ではなく真面目に言った。
むしろ美形と言われて戸惑っている。
どうにも自覚が無いらしい。
ハイエルフの基準だとそうかもしれないが。
人族の感覚だと超がつくほどの美形だ。
長らく外界との交流を遮断してきた弊害だろう。
ここら辺の認識を徹底しないと余計なトラブルを起こしそうだ。
「この視線には慣れなければいけませんね。きっと行く先々で同じ視線に晒されるでしょうから」
もう一人の青年が冷静な口調で言った。
エルフ族の青年達の副リーダーを務めるユーリスだ。
知的な官僚という容姿だが性格は温和で冷静沈着な美青年である。
非常に頭が良く、脳筋なジョシュアを支える頼もしい存在だ。
もっともジョシュアは責任感と統率力がズバ抜けている。
脳筋ではあるもののリーダーとしての適性は折り紙付きだ。
その他の青年達も一人一人に抜きん出た才能がある。
ゲノム解析して得た結果だ。
エルフィネス国王とブリュンティールに押し付けられた青年達だが。
今となっては良い貰い物をしたと思う。
さて、話を戻そう。
好奇の目に関してだが。
ユーリスの懸念はもっともだ。
ハイエルフは眉目秀麗で同性ですら見惚れる美貌である。
だからさぞかし目立つだろう。
しかも美形では負けず劣らずのリオンもいる。
それを率いるのは少し見劣りする子供なのだ。
好奇の目で見られるのは致し方ない。
「まあ、あまり気にし過ぎなくていいよ。見てるだけなら害はないからね」
俺は軽口で場を和ませた。
ジョシュアとユーリスも悪感情ではないと判断してか素直に頷く。
それにしても随分と雰囲気が変わったものだ。
少し前ならエルフにさえ悪感情を向けていたはずだが。
ダグラス王とエルパウロ教皇の宣言によって迫害が禁止され、友和政策に舵を切ったおかげだろう。
それほど露骨な悪感情を感じないようになっている。
「あ、坊ちゃん。教会が修繕されていますよ」
リオンが指差した。
大工によって下町の教会に足場が組まれている。
補修工事を行う準備が整えられているらしい。
「シャークウッドに渡した金を有意義に使ってるようだな」
管理者のエンリケ神父は敬虔な信徒のようだ。
私利私欲に使わず公的な部分にだけ金を使っているらしい。
すでにエレオノーラから報告を受けてはいたが。
直に目にすると無駄金にならなくて良かったとしみじみ思う。
「あ、エルロンド様」
孤児と戯れていたジャンが声をかけてきた。
ものすごい笑顔で。
初めて見る年相応の無邪気な笑顔だ。
孤児達も同じく満面の笑顔で喜び回っている。
というのも廃屋同然だった孤児院が新しく建てられたからだろう。
エルネスト商会の出資によって崩壊寸前だった孤児院という名の廃屋は取り壊された。
そしてエルパウロ教皇の取り計らいで教会所有の土地を譲ってもらい、そこに石造りの頑丈な二階建ての孤児院を建てたのだ。
広い間取りの孤児院は二百人の孤児を収容できる容積がある。
たとえば食堂は孤児が一堂に会して食事できる広さだ。
さらに地下には貯蔵庫を設けて備蓄できるようにしてある。
そのため敷地の庭に畑があり自給自足できるようにしてある。
しかも通りに面する敷地には貸店舗が二つも併設されている。
これは安定した家賃収入と孤児達を小間使いとして働かせる意味合いを持たせたものだ。
これにより孤児院の運営の足しになり、孤児達は労働の仕方を覚えられる。
卒院後を見越しての配慮だ。
「住み心地は良さそうだな」
孤児達の明るい笑顔を見て現状に満足していると判断した。
まあ、廃屋に比べれば豪邸みたいなものだ。
すきま風もなく、雨漏りもなく、倒壊の恐れもない。
それに家具や衣服も最低限の品々を用意してある。
もっとも低レベルの品質だが。
「前の孤児院と比べたら雲泥の差ですよ。それに稼ぐ方法まで用意してもらって、本当にありがとうございます」
ジャンが鼻息を荒くして言った。
悲惨な環境を長く見てきただけに思う所があるのだろう。
激変した環境に感情が昂って興奮なりやまぬという感じだ。
「寄付だけじゃ運営は困難だからな。子供を受け入れる以上は収入を得られるようにしないと無責任だろ」
「なるほど。あ、じゃあ、今シスター達が勉強してるのって」
「もちろん運営費を稼ぐための勉強さ。それに経営の勉強もしてもらわないとな。どんぶり勘定じゃあ経営なんて出来ないからな」
若干の嫌味を込めて言った。
というのも、そもそもシスターエレナに問題があるからだ。
懐深く慈善に熱心なのは感心すべきことだろう。
だが養うべき糧を得る手段を構築できず、他人の情けを乞うだけでは無責任としか言えない。
その甘えた考えを叩き直す為にも勉強は必要不可欠なのだ。
今頃は己の浅慮を深く恥じている事だろう。
「だからか。孤児院に教室があったから変だなって思ったんですよ」
「読み書きくらい出来るようにならないとな。あと計算も。働く事になれば必要になる知識だ。小さい内から勉強すれば頭も良くなるだろ」
「なるほど。確かにそうですね」
ジャンは大きく頷いた。
そこまで考えているのかと感心しているらしい。
これも孤児達や下町の子供に教育を施すために用意したものだ。
もちろん授業料をいただくが。
下町の住人に金を要求するのは現実的じゃない。
なので労働や食材などの対価で代替できるようにするつもりだ。
そうすれば力仕事を手伝ってもらったり、食材の浪費を抑えることができる。
もちろん教育を施すのは利益を見込んでのことだ。
成績が優秀な子供はエルネスト商会で雇い入れる事を視野に入れている。
俺に至っては遺伝子解析で見込みのある人材を確保するって寸法だ。
だからこの孤児院に各地から孤児が集まれば。
それだけ優秀な人材に巡り会える可能性も高くなるだろう。
「いや~、おみそれしました。これでガキ共の将来が安心ですよ」
アッハッハッとジャンは笑った。
俺は他人事のように言うジャンに向かって真顔で。
「なに言ってんだ。ジャンも勉強するんだぞ」
「ゲッ、マジっすか!?」
予想通りの反応が帰ってきた。
俺の部下になった以上は当然の事だろうに。
ジャンは頭を抱えて「俺、できるかな?」と不安に慄いていた。
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