恋する魔女は星の精霊と暮らして悪魔を待つ

山本いちじく

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一つ目の巨人バオウとサラ

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 その時、玄関のドアから微かな音がした。ドアがゆっくり開くと、そこには細く震える少女サラの姿があった。彼女は、バオウの言葉を遠くから聞いていたのだ。

「バオウ、もういいわ。もういいの、あなたの気持ちだけで充分よ。私が我慢すればいいだけの話なんだから。お父さんが私に鞭を打ったのも、私を思ってのことなの。だから、お父さんのことをそんなに悪く思わないで。私なら大丈夫よ」

「あなたがサラね、こちらへおいで。なにも恐れることはありませんよ。お茶もご用意しています」

 リオは、ティーカップにお茶を注ぐと、何かに慌てて館の奥へと下がっていった。

 サラは、躊躇いながらも、しょうこの温かな声に従い、明るい光に満ちた館へと足を踏み入れる。その瞳には、強い決意が焼きついていた。

「私は、自分を犠牲にしてでも人里で暮らし続ける覚悟があります。私は、迫害に負けません。だから、お構いなく。それが生まれてくる子供のために良いと思っています。だって、人は、決して一人では、生きられないから…」

 サラは、ぎゅっと拳を握りしめている。
その決意に感動したしょうこは、立ち上がり、窓の外に輝く一等星スピカを力強く指さす。

「東の果てに、かつて巨人が人間を助けた国があるわ。そこには、植物の王と呼ばれる霊樹があります。あなたがその霊樹に願いをかければ、きっと希望が見つかるでしょう」

 バオウは、サラに優しく声をかけた。

「ねぇ、もう無理な我慢は、やめよう。希望に向かって、一緒に力を合わせよう。君にこれ以上我慢させて暮らすのは、僕にはできないよ」

 サラの目から涙がこぼれ始める。

「今まで希望など、一つもなかった。私、本当は、怖くて怖くてしかたがなかった。でも、誰にも言えなくて。不安を口にしたら、潰れてしまいそうで。私だって優しい人たちに囲まれて暮らしたい…それが私の本当の願いです…」

 その時、バオウの泣き声が響き、館の床は巨人の涙でびしょ濡れになっていく。

 しょうこは、サラに歩み寄り、優しく抱きしめる。

「サラ、もう大丈夫よ。もう、あなたが怖がることは何もない。私たちが守ってあげます」

 しょうこは、サラの背中の傷が思った以上に深いことに驚く。彼女の背中は、血がにじみ、鞭打ちによってまだ生々しい傷になっていた。

「サラ、いけない!なんてこと!リオ、早くありったけの薬草を。妊婦につかえるものだけを選んで持ってきて!」

「しょうこ様、もうこちらにご用意しております。お使いください!」

「リオ、ありがとう。そう、まさにこの薬草が欲しかったの。サラの傷への処置を手伝って!」

 サラは、しょうことリオの優しい介抱に感謝の涙を流し、気が緩んだのか、そのまま気を失う。

 しょうこは、少女が眠っている間に植物の王への手紙を書き、巨人に託した。

「バオウ、この手紙を植物の王に渡して。そこには、あなたより身体が大きな一つ目の巨人もいるはずだから、遠慮しないで頼りなさい。
いい?2人の涙が時間をかけて必ず海にたどり着くように、希望もまた必ず光にたどり着きます。諦めずに、前に進むのよ」

 次の日の朝、しょうこは、二人を門まで見送った。朝日に光るその後ろ姿には、彼らの未来への深い信頼と祝福が込められていた。
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