キスで隷属化するFPSの異世界転生化〜生身がほしいAI美女からモテまくる!?〜

山本いちじく

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海辺の酒場 セックスオンザビーチ

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 胸を触った気まずさもあり、ユウマは足早に公園を後にした。
 「出直してこい」という言葉を信じて、また会える日を願いながら。

 朝からもんもんと胸のことばかり考えていたら、まさか事故とはいえ本当に揉んでしまうとは。
 しかし――胸を揉んだだけでは、一線を越えたことにはならないらしい。
 ……たぶん。

 それでも、手にはまだシルフィの柔らかい感触が残っていた。
 いや、脳がそれを“一生忘れまい”として刻みつけているような気がした。

 気を紛らわそうと歩いていると、行き止まりに古びた看板が立っていた。
 「この先、海岸」。

「この先は海になっていたんだな……」

 人気のない浜辺に出る。
 小雨は止んでいたが、分厚い灰色の雲が水平線にのしかかっている。
 晴れたら、もっと遠くまで見えるだろうに。

 ――海の向こうには、何があるんだろう。

 ふと、波音に混じってガラスの割れるような音がした。
 目をやると、海辺に小さな酒場があった。
 バー・セックスオンザビーチ。なんて下品な店名なんだ。
 看板には「明朗会計」と「朝食やってます」の文字。

「酒場、か……情報収集といえば、定番だよな」

 だが、少し迷う。
 荒くれ者の巣窟かもしれない。
 “明朗会計”とわざわざ書いてある看板ほど、信用できない。
 ――ぼったくりの店に限って、笑顔がやけに優しいんだ。

 それでも、“朝食”の文字が決め手になった。
 朝からケンカをふっかける荒くれ者はいないはずだ。

 重い木の扉を押して中に入る。
 店内には、見るからにゴツい鬼たちが、静かにパンをちぎって食べていた。
 夜なら殺気立つ連中も、朝だけは妙におとなしいらしい。

 ユウマは長いカウンターの端、空いている席に腰を下ろした。
 カウンターの向こうでは、銀髪のマスターがサイフォンでコーヒーを淹れている。
 その動作は、夜の酒場というよりも、喫茶店のように静かだった。

「何にする?」

 声も低く落ち着いている。
 背後の棚には、色とりどりの酒瓶が整然と並んでいた。

「コーヒーとトースト」
「Aモーニングだな。スクランブルエッグとサラダ付きだ」
「それで頼む」

 ほどなくして出された朝食は、見た目以上にうまかった。
 外はカリッと香ばしく、中はふんわり。
 甘めのスクランブルエッグがパンと絶妙に合う。
 コーヒーは香り高く、胃の奥から現実に戻されるような苦味があった。

「新入りかい?」

 低い声が横からした。
 顔を向けると、隣に腰かけた鬼の少女がいた。
 角は短く、笑うと頬にえくぼができる。

 だが、目が行くのは、彼女の胸だった。
 ――シルフィよりも、さらに大きい。

 ユウマは慌てて視線をそらした。
 少女は、気づいたようにニヤリと笑う。

「どうした? 朝から目のやり場に困ってる顔してるじゃないか」

「自分で言うなよ」

 ユウマが思わずツッコむと、少女は豪快に笑った。

「男はみんな胸を見るのが好きだからな! そいつをこの拳でぶちのめすのが、あたしの趣味ってわけさ!」

 高笑いが酒場に響き、周囲の客たちもくすくすと笑う。

 ……なるほど、パワー系の鬼らしい。

 バトルロワイヤルでは、重たいヘビーライフルを背負っている姿が想像できた。近接格闘ももちろん強いタイプだ。パワー系の鬼は、たいていそうだ。

「もしかして、スナイパー?」

「ご明察。わたしはシュナ。Bランクのスナイパーさ」

 白銀の髪が肩で揺れ、目が鋭く光った。

「どうして俺に話しかけたんだ?」
「人間は珍しいからな」

 シュナはコーヒーを一口飲んで笑った。

「この酒場に来た男は、一度ぶんなぐるのがわたしのルールなんだ」

 さっき笑っていたゴロツキの男たちが、目を逸らした。
 ここにいる男たちは、一度シュナにボコボコにされたのかもしれない。

「え?!」

「安心しろ。ユウマは話がわかるやつみたいだから、許してやろう。なにより気持ちのいい朝だしな」

「あ、ありがとう……?」

 何がどう許されたのか分からないが、とりあえず助かったらしい。

 話を続けるうちに、シュナはやけにバトルロワイヤルに詳しいことがわかった。
 ユウマが設定の話をすると、彼女は目を輝かせた。

「へぇ、Fランクにしてはよく知ってるな!」
「まぁな。でも……知っていたことと、いくつか違いもある」

「たとえば?」

「鬼は“アシスト”が使えるだろ。照準補助とか」
「ああ、当然さ。わたしたちは血に刻まれた照準アルゴリズムを持ってる」

「でも、人間は使えないみたいだ」

「当たり前だろ。アシストを扱えるのは鬼だけだ」

 ユウマは納得したようにうなずいた。

 ――それでデフォルトM4の命中率が低かったのか。

 この世界では、人間の身体に“照準補助”が存在しない。

 だが、代わりに利点もある。
 アシスト使用者には「バレットライン」と呼ばれる光の軌跡が可視化されるが、
 ユウマにはそれが表示されない――つまり、彼の射線は“読めない”。

 もし命中させられれば、それはアシストを超えた「生身の精度」。
 人間だけが持つ、“ノイズなき狙撃”。

「……理屈はわかった。射撃の練習が必要だな」
「射撃練習ならロビーのトレーニングモードを使うといい」
「そうだな。そこなら食人の熊鬼もこない」

 ユウマは、少しかまをかけるように話題を出した。

「食人の熊鬼?」

 案の定、シュナがすぐに食いついてきた。
 ユウマが説明すると、彼女の眉がぴくりと動いた。

「熊鬼って、知ってるか?」
「あぁ、知らない奴はいないさ。ごくまれに夜のシティに現れるモンスターだろ?
 あいつに喰われた友人もいるよ」

「やっぱり、シティに出るんだな」
「そうだ。日が落ちた後、照明の少ない路地に出る。見つかったら最後だ。最近は出没していないがな」

「俺がやられたのは……バトルロワイヤルの最中だった」

 シュナの表情が硬くなった。

「バトルロワイヤルで? それは――ありえないだろう」

「なぜ?」
「ミッションに参加するには登録が必要だ。熊鬼に登録なんてできない。
 ……管理AIが、有害行為をした参加者を即座に除外するはずだ」

 ユウマは息を呑んだ。
 ――たしかに、そうだ。
 ガンゲノムシティはすべてAIに監視されている。

 システムに“登録”されていない存在が、どうして試合に現れた?

 それはつまり、
 食人の熊鬼が“この世界の外側”から侵入してきたということだ。

 そんなこと――できるはずがない。
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