キスで隷属化するFPSの異世界転生化〜生身がほしいAI美女からモテまくる!?〜

山本いちじく

文字の大きさ
9 / 68

コンマリ

しおりを挟む
 廃屋の二階。割れた窓から薄霧が流れ込む。
 ユウマはデフォルトM4、コンマリは得意なショットガン ベネリM3を抱えて、背中合わせに位置取りをした。HUDのマップに赤点――東側階段から接近一。

「カチャ」

 この音はシルバーAK103アサルトライフルを使いこなしたユウマには、音でアサルトライフルの種類がわかった。フルオート付き。精度も貫通も、デフォルトM4より一段上だ。

「来る。連射で抑えてくるぞ」
「わ、わかりました……!」

 階段下からババババッと火線。壁紙が蜂の巣になり、木屑が舞う。アシスト付きのバレットラインが床を這い、角を狙い撃ちしてくる。正面勝負は不利だ。

「俺がヘイト取る。三カウントで右側へ詰めて至近射撃!」
「スライドで踏み込みます!」


ユウマは腰だめで短射三連――パンパンパン。弾幕で敵の照準をわずかにずらす。反撃の線が一瞬だけ止まる。

「3、2、1――今!」

コンマリが床をシュッと滑る。膝を落とし、角を切ってドンッ! 散弾が敵の胸部に開花。だが相手は後退しながらカバーへ転がり込む。シルバーAK103の反撃――ダダダ。青白い弾がコンマリの肩を掠め、  
 HUDにHP 74%→58%が点滅。

「コンマリ、下がれ!」
「大丈夫、もう一歩――近接加速!」
 コンマリは敵が近いと加速スキルを持っているみたいだ。
 でも、欲張りすぎだ。危なすぎる。
 敵は階段途中の踊り場で斜角を取る。アシストの補正が効き、角から出る瞬間を正確に刈り取ろうとしている。連携が一拍ズレれば終わりだ。

 ユウマは呼吸を整え、三点→一点のリズムに切り替える。手すり越しにタ・タ・タと頭一つ分を抑え撃ち、敵の首振りを強制。
「フラッシュ!」
 コンマリが手榴弾を柱の影へバンク投擲――パシンと壁に当て、ボンッ。白光。敵の照準が跳ねる。

「詰める!」
 
 ユウマが左、コンマリが右。挟撃の“く”の字。敵は咄嗟にユウイチに向き直り、胸元へ連射。衝撃でHUDが赤く滲む――HP92%→81%。だが、その一瞬でコンマリが死角へ潜り込んだ。

「今だ、踏み替え!」
 コンマリは重心を落とし、腰の回転だけで銃口を跳ね上げる。至近――ドンッ! 散弾が脇腹から内側へめくり上がり、敵が体勢を崩す。
 
「もう一発!」

 ポンプ――ガチャ、再装填、ドン! 踊り場の手すりごと吹き飛ばし、シルバーAK117が床を滑って止まった。

 静寂。舞う粉塵。耳鳴り。
 コンマリのHUDがオレンジで脈打つ。 

 HP 51%。肩口から紫の光粒が漏れている。
「……すみません、詰めが甘かったです」
「上出来だ。斜角を取られてた。次は“撃って一歩引く”を徹底しよう」

 敵からマガジンだけを回収。やはりシルバーAK103はデフォルトM4より重い。アシストはより高性能だが、アシストを使わないユウマには、シルバーAK103は、不要だった。

「カウント取る時、俺の“3”の前に吸い込まれた。あれは良かった。だが被弾ラインに一歩長く居た」

「次は、撃って半歩戻る……覚えます」

 窓の外で別の銃声。補給コンテナの降下音が遠くに響く。
 ユウマはM4に新弾倉を叩き込み、コンマリの前に手を差し出した。

「行くぞ、まだ序盤だ」
「はい、ユウマ様」

 ぎこちないが、確かに噛み合い始めた歯車。それでもスリップすれば致命傷――その緊張を胸に、二人は次の家へと走った。

 戦闘の後、人気のない家屋に身を隠した。
 壁に開いた穴から光が差し込み、粉塵がゆっくり漂っている。
 コンマリは膝を抱え、うつむいたまま言った。

「ユウマ様……もう一度、キスをください」

 唐突な言葉に、ユウマの息が止まった。
 頬を赤く染め、視線を揺らすコンマリ。
 あれほど戦闘中は冷静だったのに、今はまるで普通の少女のようだ。

「だめだ。今は……そんな無防備なこと、できない」

 コンマリは小さく肩をすくめ、しゅんとした。
 その仕草に、ユウマの胸が妙に熱くなる。
 ――守らなければ。そんな気持ちが込み上げた。

「……仕方ないな」
「え、でも……」

 軽く触れるだけのつもりだった。
 互いに戸惑いながら唇を寄せる。
 最初は静かに、次第にそのぬくもりが増していく。

 隷属Lv2:共鳴発動。

「む、胸を触ってください」

 あぁ、それは一線を越えることにならないのか?

「だめだよ」

 コンマリはゆっくりと自分の手で胸を揉み始めた。

「はしたないよ、コンマリ」

 頭の中が欲望でガンガンする。

「はぁ、はぁあぁん」
「そんな声だして。あ、危ないよ」

 我慢できずにキスしながらコンマリの胸を鷲掴みにする。
 
「あぁ!」

 触れ合った瞬間、空気が震え、コンマリの体が淡く光を放った。

「ユウマ様……これ……なにか、熱い……!」

 紫の光粒が宙に舞う。
 HUDに警告が走った――【リンク過負荷:臨界】。

「やばい、なんだこの感覚は!」

 ユウマには激しい刺激が押し寄せていた。もはや痛みに近い。

「ぐぁぁぁ!!」

 コンマリの顔が苦痛に歪む。

「きゃぁぁ!!!!!」

 ユウイチが手を伸ばす間もなく、コンマリの輪郭が崩れ、光の粒となって散っていく。
 鈴のような音が響き、彼女はそのまま消えた。

「コンマリ?……消失、した?」

 胸を触ることが一線を超えることになったんだ。
 しまった。コンマリ、すまない。シルフィの胸に触れた時は消失は起こらなかった。
 相手によって違うのか、触り方や興奮度合いによってちがうのか。
 
 静まり返る家屋。
 ユウマは拳を握り締めた。
 ――胸を触るのは危険だ。
 あれは愛情でも、欲望でもなく、ただ“心の同期”が深まりすぎた結果なのかもしれない。

「……すまない、コンマリ」

 胸の奥が焼けるように痛む。
 再び、ユウマはひとりになった。
 ソロミッションの冷たい風が、彼の頬を撫でた。

 ソロになったユウマは、別人のようだった。
 動きに迷いがない。息づかいまで計算されている。

 廃墟街を抜け、屋上から屋上へ――敵を見つければ、一瞬で仕留めた。
 “アシストなし”の照準。それでも彼の弾は正確だった。

 未開封の補給コンテナをめぐって群がる鬼たち。
 ユウマはビル影から飛び出し、M4の照準を合わせる。三点バーストを連続で撃つ。
 パンパンパン――!
 パンパンパン――!
 パンパンパン――!
 連射の音が小気味よく響き、五体の鬼が次々と倒れていった。

「……五連。上出来だ」

 HUDには“残存プレイヤー:2”の文字。
 息を吐く。勝利まで、あと一人。

 サークルが狭まり始めた。
 地図の境界が青白く光り、外に出れば即アウト。
 最終エリア――草原地帯。起伏のある丘と、風に揺れるススキの群れ。

 風が、乾いていた。
 銃声が途絶え、あたりにユウイチの呼吸だけが残る。

 ――カチャッ。

 微かな金属音。
 敵も気づいている。距離は100メートル以内。
 ユウマは姿勢を低くし、スコープを覗いた。

 丘の上、風にマントをなびかせる影。
 赤い角、黒い装甲。
 動きが滑らかだ――手練れ。

「来いよ……最後まで、やりきろうぜ」

 敵が身を沈め、先に撃った。
 ダダダッ!
 弾丸が地面を掘り、泥が跳ねる。
 ユウマは横転しながら反撃。
 パンパンパン――!
 草を焼くような火花が走る。

 銃声が交差する。
 撃つ、伏せる、移動、リロード。
 リズムが合えば死。ずれれば勝ち。
 その緊張の中で、ユウマの世界が研ぎ澄まされていった。

 呼吸の音が、銃声よりもはっきり聞こえる。
 心臓の鼓動が、スコープの揺れと同調する。
 ――まだ鈍さはあるが、かつての“ゲーム感覚”が戻ってきていた。

 敵が丘を滑るように移動。
 手榴弾を投げる動作。
 ユウマは即座に読み取る。

「投げる前に撃つ!」

 パン!
 弾丸がグレネードを空中で撃ち抜いた。
 爆風が丘の向こうを焼き、敵の動きが一瞬止まる。

 ユウマは走った。
 左へ、右へ、ジグザグに。
 敵の弾道を読み、地面を蹴る。
 パン、パン、パン!
 すれ違いざま、互いに銃口を向ける。

 ――ドンッ。

 乾いた音が、草原にこだまする。

 数秒後、風が止んだ。
 立っていたのはユウマだった。
 敵のサブマシンガンが地面に転がり、システム音が鳴る。

 《Winner》

 HUDに金色の文字。
 指先が震える。
 勝った――。

 だが、歓喜よりも、胸の奥に重厚な余韻が残った。

 ああ、この感覚。初めてwinnerになった時、味わった深い達成感を思い出す。
 この感覚にハマって、俺はCODをやり続けてきたんだ。

「……まだ終わりじゃない。ここからだ」

 風が再び吹き抜け、草原を揺らす。
 ユウマはM4を肩に掛け、静かに空を見上げた。
 遠くで、データの残響のような鈴の音が、かすかに聞こえた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...