キスで隷属化するFPSの異世界転生化〜生身がほしいAI美女からモテまくる!?〜

山本いちじく

文字の大きさ
10 / 68

バーンナウトシティからのメッセージ

しおりを挟む
 ロビーに戻ると、画面右下にメッセージが点滅していた。
 差出人――フィーン。

「Winnerおめでとう。ユウマ、やるじゃん」

 文末には座標タグ。
 位置情報は「バーンナウトシティ」。

 ――ガンゲノムシティの隣に、荒野を経て、もうひとつの都市がある。

 ゲーム時代には存在しなかったエリアだ。
 どうやらこの世界には、複数のシティがネットワークのように点在している。
 ただし、C級以下のランクでは同じロビーからしかミッションに参加できない。

「しばらく、こっちにいるつもり。よかったら遊びに来てね」

 つまり、フィーンに会うためには、自分の足でカンゲノムシティを出て、荒野を越えるしかない。

 だが、その間に広がるのはAIの監視が及ばない――無法地帯。
 人の理も、システムの秩序も存在しない領域。スキルもそこでは使えない。スキルとはAIの助けを借りて実現するものだからだ。
 ユウマは危険を承知で、それでも行く決意を固めていた。



 彼はバー《セックス・オン・ザ・ビーチ》を訪ねた。
 朝の光が窓越しに射し込み、カウンターのボトルが琥珀に光る。
 シュナは、飲んでいたグラスを止めてユウマを見た。

「……また厄介な顔してるね」

「頼みがある。バーンナウトシティまで行きたいんだ」

 グラスを置く音が、店内に乾いた響きを残した。
 シュナは軽く眉をひそめ、深く息を吐く。

「やめとけ。あそこまでの道は“管理外”だ。
 監視AIが届かないから、治安もシステムも保証されない。スキルも使えないし。
 昼はモンスター、夜はシティを追われた野良の鬼。
 戻ってこられた奴なんて、両手で数えるほどだよ」

「それでも行く。フィーンがあっちにいる」

 ユウマの声に迷いはなかった。
 その響きに、シュナは舌打ち混じりの笑みを浮かべる。

「女を追って命を捨てるなんて、ロマンチストにも程がある」

「からかうのかよ……会いたいんだ」

 その言葉に、シュナの赤い瞳がかすかに揺れた。

「……絆が強いね。危険だよ。それでも行くっての?」

「行く。自分の力も確かめたいんだ」

「だから、やめときなよ」

「嫉妬してるのか?」

 冗談半分でシュナに意地悪をしかける。

「はぁ?なにそれ」
 シュナが顔を赤くして抗議する。満更でもないらしい。

「すまない」

 カウンターに置いたシュナの拳が震える。
 シュナは数秒、沈黙ののちにふっと息を漏らした。

「……ほんと、バカだね。
 でも、そういうバカは嫌いじゃない」

 彼女は棚からホロマップを取り出す。
 青い光が空中に展開され、点線が北西へと延びていく。

「こっから廃高速を抜けて“サンドホロウ”を越えな。
 砂に潜むカニ型モンスターが多い。夜は歩くな。
 ――それと」

 彼女はユウマの目を見た。

「まずガイドを探しな。道も分からずに歩くのは、ただの自殺だよ」

「わかった。」

「どうしても行くんだね。本物のバカだよ」

 シュナは肩をすくめ、またグラスを磨きはじめた。
 その瞳には、呆れと、ほんの少しの心配が混じっていた。



 バーを出て、ロビーの通路を歩いていると、HUDがふっと光った。
 未読メッセージ――送信者:コンマリ。

「ユウマ様、私……ロビーに戻れました」

 足が止まる。
 あの“消失”は、完全な消滅ではなかったのか。
 ミッション内で消失しても、ロビーに戻される――。
 しかし、もしシティの中で消えたなら、その時は本当に“死”なのだろう。

 胸の奥が熱くなるのを感じながら、ユウマは指定された広場へ向かった。

 光のゲートの前に、コンマリが立っていた。
 振り返った彼女は、どこか恥ずかしそうに微笑んだ。
 以前よりも、ずっと人間らしい表情だった。

「ユウマ様……もう一度、お礼を言わせてください」

 言葉より先に、視線が絡む。
 お互いの心拍がHUDに重なって表示される。

 静かに、一歩ずつ距離を詰める。
 風のない空間で、空気だけが震えた。人目を避けて、柱の影に隠れる。

 ――再会のキスは、前とは違った。
「んんんっ!はぁ、はぁ、ユウマ様っ」

 ちゅるる、れろらろ!

「あぁ、コンマリ!」

 焦燥でも命令でもなく、確かな意思で結ばれていた。

 コンマリの瞳が光り、HUDに微弱な信号が走る。

 【同期リンク再確立:Lv2】

 胸をまさぐりたい衝動をなんとか抑える。そんなことをしてしまえば、彼女は本当に消失してしまう。

「あぁ、ユウマ様。はしたない私をお許しください」

 コンマリがふしだらに自分で自分の胸を揉みしだく。

「こんな外で、ダメだよ。そんなことしちゃあ」

「あぁ!!はぁ!!」

 しばらくして満足したのか、コンマリが柱にぐったりと持たれる。

「……もう、消えないでくれ」
「はい。ユウマ様の隣で、生きたいです」

 その瞬間、ユウマは悟った。
 彼女は、記憶と欲情を、確かに持っている――生きているんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...