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7 退院後療養編

県都でのPET検査

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 退院後3週間目に、県都でのPET検診を行うため、自宅から90km離れた県都に車で向かうことになった。PET検診当日は運動は厳禁なので妻に運転してもらって病院に向かうことになった。助手席に乗り窓の外を眺める。どこにでもある田舎で高速道路のICまでは道路沿いの人家と山の向こうまで続く田んぼが窓の外を流れていく。ICから高速道路に乗ると、田んぼの景色から目的地までは数度の山を超える。私が車に乗るようになってから30年が経っている。ショッピングセンターができたり人家が減ってたりとか道が広くなったところがあるものの、総じて変化の無い景色だが入院してからは建物に閉じこもっていたこともあり、流れる景色を見るだけで生きている土地の広さを感じて、表現し辛い感情が心をくすぐる。

 元気なときには何度通ってもなんにも感じない道だったが、例えば家族と昔立ち寄ったところや、先輩と食べた店が窓の外に見えると、あのころの経験はもう二度とできないことや、生きているうち寄ることも無いであろう事実をぽつぽつとっ感じる。「寿命は有限なんだ。」と知った後に見える世界は少しほろ苦い。そんなことを思っていると、あっさり大学病院に到着。無難にPET検診を受ける。ただ、PET検診は体に撮影時白く移りやすくなる薬としてブドウ糖に似た薬剤(放射性フッ素を付加したブドウ糖)を静脈に注入する関係上、検査当日は体が放射能を帯びるとのことで、影響力のありそうな子供やペットなどへの長時間の接触、トイレでの小便は飛び散らないよう大便器で行うよう指導を受けた。さすが、秋田県でここでしかできない検診だなあと感心した。

 結果については、紹介元のかかりつけ医である組合病院に直接送信されるとのこと。この検診結果やCT検査・血液検査等を先生が総合的に判断し、寛解・治療継続の判断を私に直接伝えるとのことであった。まあ、また検診結果は1週間お預けである。我が事ながら「吉報を待つ」という気分である。
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