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本編
6】アーベン国
しおりを挟むえーと、今回も痛ーい感じなんで、薄目でお願いします。
=============
焼印を更に焼き切ってしまおうと思っています。
麻痺系の魔法をかけて欲しんです。
教会でして貰ったのと同じものをして欲しいなと持ちかけたんですが、断られてしまいました。
使えませんねぇ。おっと失礼。
麻痺は薬でなんとかしましょう。
AプランがダメならBプランです。
少々問題はあります。
薬は準備しはしたのですが、この薬の効きが、今からする事にどのぐらいの効果が得られるのかどうなのか…疑問なのです。
治験をする隙がありませんでしたので…。
出来はいいと思うんです。今までの経験から大丈夫だと思うのですが。こうなっては、自分を信じましょうか。
夕暮れはまだなのですが、外が暗いです。
雨でも降るのでしょうか。
振られる前に宿屋に入れたのはラッキーでした。
用意して貰った荷物を受け取り、自分の部屋に移動します。相談があると言ったので、冒険者さんもついて来てくれました。
夕暮れまでには済ませたい。
取り敢えず、宿屋の主人に火かき棒を借りて来ました。何が適切か分かりませんので、ご相談がしたいのです。
清潔なこぢんまりとした良い部屋です。荷物を置いて、向き直ります。
「改めてご挨拶を。エミルと申します。旅は初めてなので、御指南よろしくお願いします」
気分良く手を差し出します。
「よろしく。俺は、グラントリー。リーでもグランでも好きにどうぞ」
心置きなくの握手です。気が楽です。
ポーチバッグで幅を取っていた物を取り出しました。
「こちらは、回復ポーションの詰め合わせです」
魔力回復や体力回復などの回復修復ポーションの小瓶のセットを進呈します。
田舎で薬屋をしてた時にS級の冒険者がお求めになっていたチョイスです。多分間違いはないでしょう。
「えっ? いいの?」
よし! 受け取りましたね。
小瓶のセットを嬉しそうに受け取ってくれましたので、さっさと麻痺系の魔法をかけて欲しい話をしたのが冒頭です。
断られましたです。使えない魔法なら仕方がないですね。
粗品作戦は不発ですかね。
耳の状態を見て貰ったりした時も、若干引き攣ってましたね。
冒険者ですよね?
ここまでしてくれたのです。いい人なのでしょうね。
荷物の確認や準備をしつつ、どういった魔法がお得意で?などと雑談をしております。
彼は部屋の隅の小さなストーブに火を入れてくれてます。話の内容から必要と判断してくれたようです。気が利く人です。
どっしりした感じです。ちょっとした煮炊きができそうですが、湯を沸かしたりするぐらいしか使用してないようです。
手早く耳の処置をします。簡易の処置でしたので、鏡で確認しながらきちんと。
最初のお願いを断られたので、プラン変更なのですが、どうしましょうかね…。
炎系の魔法を得意としてるので、攻撃系魔法しか習得してないとの事でした。
おや、不発でもなかったようです。これは使えます。
このお人は元々面倒見の良い方なのかも知れませんね。
その魔法は使わせてもらいましょう。今の僕はなりふり構ってられない感じで、ちょっと焦ってます。早くどうにかしたいのです。
荷物の中身の衣服を確認して、着てる服を脱ぎ出した僕にグランさんは慌ててます。男同士ですよ。あー、いきなり脱ぎ出してびっくりしました? 着替える事もあるでしょう。なんだか顔が赤いですね。
ん?
あー、この小さく幾つも散ってる痣ですか?
これが何か分かるもんなんですね…。領主さまがつけるんです。なんですかね、これ。チュッチュとしてくれましてね…。
早く隠した方がいいですよね。見るのも気持ち悪いですよね。この数ですものね。一瞬病気かと思われる様相ですよね。
僕も変な病気か虫刺されみたいで嫌なんですよ。仕事でついた痕です。仕方がないじゃないですか。
もしかして、襲われると思った?
「この印を消したいんです」
見て貰った方が早いので脱いだのです。赤い顔のグランさんはサッと真面目なお顔になりました。
「これは……魔法陣か?」
さすが冒険者です。ちゃんと冒険者だったんですねって見直しました。
「よく分かりません。切り取った方がいいでしょうか? 剥ぐのはどうしたらいいですかねぇ。生きてる状態で、自分にするのは、どうしたら一番いいのかと思いましてね。焼いて剥がれたらラッキーかなとか思ったんですが…」
灰などを掻き寄せる為の平たい部分を使えば広い面で焼けると思って、柄の角度がいい感じだと目についた火かき棒を借りて来たのです。
ジュッと焼いて、皮がべろーんと鉄板についてくれればいいかなってね。
もっといい方法があればそれに乗りたいです。相談です。
「んー、何かを抑えるって意味だと思う。ダンジョンで似た感じの見た事あるよ」
胸の焼き印をじっと観察しつつ、顎に手を当てて何か考えているのか、ぶつぶつ言っておられます。
「これが外の誰かと繋がってるとかないですか?」
どうやら知識があるようです。自分の仮説を確認したいです。僕はこういうのは詳しくないのです。夕方までにと急いでるのもその所為です。
「魔力の繋がり? 失礼。んーーーー、そんな感じはしないなぁ」
ケロイドのボコボコした歪な皮膚に指が添えられます。あちこち触って確認してくれてます。気分のいい感じのしない代物に躊躇なく触れられるものですね。
そういえば、領主さまはコレを触ったり舐めたりとよくしておられました。凸凹が面白かったのでしょうかね。
「では、焼いて誤魔化せればいい感じですかね」
この模様のような記号が分からなくなれば良い訳ですね。模様が分からなくなれば、証拠がひとつなくなります。
「そうなるかな…。ソレで焼くの?」
顎で指された方を見ます。火かき棒が転がってます。
はい、あれで焼くつもりですよ。
「そのつもりです。魔法で焼いたら、魔力残像みたいなのが残るのは、なんとなく………嫌?」
上手く僕の思いを言葉に出来ません。
魔力には匂いのようなものがあるらしいのです。自分は魔力保有が少なく弱い所為か全く感じません。でも、自分以外の匂いが残るかもと思うとあまりいい気がしないのです。
ん?
今、ふと思いついた事がありましたが、あり得ないので振り払います。
馬鹿馬鹿しい。領主さまが冒険者さんの匂いを感じてたのではなんて。同じ火属性ですね…。それがどうしたというのか。
はい、ここまでッ!
今は関係ない事です。
「あー、分かったよ。強い火力が必要って事だね。それぐらいの助力なら大丈夫だろ?」
やはりこの方はいい人です。色々察してくれ、深くは踏み込んではくれません。
「ありがとうございます。種火を作るので、よろしくお願いします。これから、麻酔を打ちます。弱い麻痺剤も飲もうと思うのですが…」
痛いのは嫌なので、あの実などから作った麻痺剤を使います。ただ問題が…。
「が?」
先を促されました。
「初めての使用なので、効き方が理論値だけなのです。効きが浅い事はないと思うのですが、手に力が入らなくなったりして、コレを落とすような事になったら……。サポートをお願いします」
火かき棒を掴み手馴染みを確認します。
火傷はここだけにしたい。部屋の損害は避けたい。
「了解した」
火かき棒をストーブの火の中に突っ込みます。これである程度熱して、あとはグランさんに任せましょう。
色々と理解が早くてありがたいです。夕方までに始末できそうです。用心に越した事はないのです。さっさとやってしまいましょう。
針に麻酔液を毒を塗る要領で添付して、焼印の周りに打ちます。焼かれたところの表面の神経は殆ど死んでしまってるようなので必要はないのです。
舐められても舐めてるなぁ程度でしたしね。
内部はさっき飲んだ麻痺剤でなんとかなるでしょう。
先ほどから熱せられてた火かき棒の熱を魔法で上げてくれてます。赤々と熱せられてます。熱そうですねぇ。
彼からそれを受け取り、脱ぎ置いてたシャツを捻り巻きつけ、手と火かき棒を固定します。さっさと、やってしまうのです。さっさとッ。
フッ、フッ、フッ……と短く息を吐いて、気持ちとやるタイミングをみます。
フーっと思いっきり吐いて、息を止めると一気に押し当て、全て消したかったのでズラしながら全体に焼いていきます。
何かが剥がれる感じもします。
焼ける臭いは、慣れません。
慣れたくもないッ。
もうやられるのは嫌です。嫌なんです。これからは、できる事は全部、自分でしたいのです。
ズルッと火かき棒がズレた。落ちる…。固定が甘かったようです。
やはり力が入らなくなった。
グランさんが素早く助けてくれます。
いい人です。出会えて良かった。
消毒しないと……
やばい…気が遠くなる。薬が効きすぎた。
気づいたら朝でした。
結果は上々でした。
グランさんにはお手数をお掛けしましたが。
ほんといい人です。よく冒険者としてやってますね。心配になってしまいます。
事前に用意してた消毒セットで対処してくれたようです。火傷の状態も上々です。
あとは、下着つけない主義?とか変な事を訊かれました。
下着も無事入手でき、旅支度バッチリです。
地図を広げて、朝食のサンドイッチを食べながら、レクチャーを受けます。
行き先も決まりました。
『アーベン国』
魔道具の最先端技術産業の国。
道具類の技術が進んだ国です。
欠損した肢体の義肢を作る技術も発達してるそうです。
薬作りの道具など仕入れたい物もありますし、面白そうなのが色々とありそうです。そして、お隣の国というものいいですね。
行き先、決定ですッ!
気を失って、よく寝てしまいました。
麻痺剤にちょっぴり麻酔系を混ぜたのが思いの外、効いてしまいましたね。
久々に調合したからでしょうか。加減は今までと同じだったんですが。
あはは…。
笑い事ではないのです。翌日になってます。後ろも気になりますし、さっさと旅立ちましょう。
自分は昨日の夕方には屋敷に帰ってるはずなのです。探されてる事でしょう。
あの森に辿り着くまでには時間が稼げると思いますが、足取りを追われたらすぐな気もします。
乗り合い馬車には、誤魔化すような事はせずに、ごく普通に利用してましたからね。
そして、あの森の状態を見つけてくれれば、獣に襲われて死んだと思ってくれると思うのです。そういう筋書きです。そう結論づけてくれたら大成功です。
僕は死んで、輿入れが遅れてた奥さまは無事領主さまの元にやってこられるでしょう。これでいいのです。
足取り軽く出発です。
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国外まであと少し。
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