テーラーのあれこれ

アキノナツ

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残り香.6 ※

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『ボーナス払いで、仕事着のスーツ作って下さい』

電話でいきなりの申し込み。香苗かなえだった。
名乗らずとも分かるが、これは困りものだ。
ちゃんと仕事出来てるのだろうか。
おじさん心配になります。

「前置きなしで驚いたよ。承るがね」

『良かったぁ』
なんだこの気の抜けた声は。

バーで別れてから数ヶ月、音沙汰ないから注文は無くなったのかと思ってたが、顧客獲得は確実らしい。善き善き。

日時の約束をして、電話を切る。

付箋に思い付いた事を書き連ねる。
リュックの事。靴の減りから動き回る様子が浮かんだ。
好みの色とかも訊こう。
あの辺りから選んでも貰おうか。手頃な値の物をピックアップしよう。

カルテに挟んだ。




約束の日。
朝から落ち着かない。

落ち着かないので、仕事が進まない。
ミスをしそうで、開店休業状態です。

初めてのデートを思い出した。
あの日も朝からソワソワしっぱなしだったな。
そんな昔話を思い出してたら、急に馬鹿馬鹿しくなって、腹立たしくなってきた。

なーにが、デートだ。
仕事だよ。
アイツの事はなんとも思ってないわ!

プンプン怒って、掃除しまくった。

汗をかいた。

テーラー服がヨレヨレだ。汚してしまった。
クリーニングだな。
時計を確認。時間まで間がある。
着替えるか。

店番はいないので、準備中の札を出す。
飛び込みはほぼ無い、予約だけで回ってる店だから、こんな感じで充分だ。

掃除道具を片付け、服を脱ぎながら、奥へ進む。隠れるようにひっそり有るドアを開けて小部屋に入る。

デオドラントシートで全身を拭いてさっぱりして身支度を整えていく。
クリーニングの袋を破り開けて、テーラー服取り出す。身に着けると、細長い姿見でサッとチェックする。
髪を整え、出来上がり。
時計で時間を確認。充分余裕がある。

破いた袋などを手早く片付けて、扉を開けて、店の準備……人の気配がする?

鍵をかけ忘れてた?ーーーかもしれない。

強盗? 嫌だなぁ

そっと店内を伺ってると、入り口に気配が。
そして、香り……。ある意味便利だな。

「お約束の時間より早いようですが、どうかされましたか?」

そっと表に出た。

「早かったですか? 鍵開いてたので入りました」

基本変わってないな。ズカズカと入ってくる。

「ーーー始めましょうか」
どの道今日はこの仕事しかまともに出来そうにない。さっさと済ませてしまおう。

生地を見ながら、質問を繰り返し、カルテを埋めていく。

ごっそり私のに切り替えていくらしい。気長な付き合いになりそうだ。
セール品用に仕入れた生地も混ぜて、価格は抑えて……。

ーーーーちょくちょく顔を合わせる事になるのか。

今の季節ものを1着。次の季節ものを2着が当面の注文。
あとはゆっくりで良いらしい。
遠慮してるみたいだ。慣れたら、ズカズカくるだろうから、放っておくか。

「清水さんは、この後の予定は?」
「そうですね。予約はないので、これを下準備して、明日の準備ですかね……」
カルテに書き込みに集中してたのだろうか。
何も考えず、質問に包み隠す事なくつらつらと返していた。
普段ならありえない。

ズカズカ踏み込んでくるお客さまもいない。
こんな質問をされた事などないのも原因かもしれないが。

段取りを考えながら、布束を触りつつ、別紙に布のリストを書き込んでいた。
完全に気が緩んでいた。
何故だろう…。

「髪がしっとりしてる」
近い!
なんでこんなに近くに?!
集中し過ぎだ。
襟足を触られた。油断した。

既にズカズカでしたよ。

スッと距離をとった。
あの匂いが鼻を擽ぐる。
この匂いが何かを麻痺させる。

「すみません。先程まで身体を動かしてたので、汗を…」
何を想像してるのか。いやらしい顔だな。

「清水さんは、柑橘系の匂いがする」
デオドラントか? 無香料を買ってきたつもりだったが。

「ーーーー約束した時間までには、乾いてる予定だったんだよ」
素が出た。気持ちの置き所が分からなくなる。
腹が立ってきた。仕事は終わった。
帰ってもらって、構わない。

「僕もこれから予定がないんですよ」
両手をひらひらさせて、戯けて言ってきた。
「予定がない訳ではない。仕事はある」
最後の項目を埋めて、カルテを片付ける。

「出かけましょう? ドライブってどうですか?」
「だから、仕事があると言っただろ」
布束を抱え、棚に戻す。
「清水さんなら、すぐ終わるでしょ?」

今日は、さっさと終わらせて帰るつもりだった。朝から調子が狂ってたから、早々に作業は諦めてた。
だが、この時間は、この男の為に用意した訳ではない。

明日の予約のお客さまのカルテを出す。頭の中で勝手に段取りが組まれて、自然と身体が動いていた。
本来、人がいる時にする作業ではないのだが、身体が勝手に動いてしまっていた。

「もうお帰りになっても構いませんよ」
粗雑な扱いである。お客さまに対して最低だ。

「予定がないので、ココで清水さん見てます」
ーーー厄介なヤツだ。

面倒になって、居ないものとして作業に戻る。

「よく動きますね……」
「………」
居ない、居ない。ムシだ。

「カンパリソーダ」
ん?
振り返ってしまった。

「準備してきました。しませんか?」
「準備?」
棚の扉を閉めた。

集中したからか、仕事が…、終わってしまった。

「一夜限りの『ドライな関係』でいいので、抱いて下さい」

マジか……。

「初めてなんで、上手く出来るかは分からないんですけど。挿入るようにしてきました」

「お前は……」

私はクラッシャーなのだと改めて思い知った。
あの出会った時から、彼の何かを壊してしまったのか。
諦めには、ケジメが、切っ掛けが、必要だな。もっと早くしてやれば良かったか…。

「分かった。…ドライブの行き先は決まってたのか」
「はい」
笑顔だった。エクボがくっきり。

腹を括るのは私か。



ホテルでシャワーを浴びて、サッパリして出てくると、誘って来た彼が、来た時のままの格好でベッドに腰掛け固まってた。

「辞めるか?」
そうした方が良い。

「辞めません。決めたんだ」
すくっと立ち上がり服をさっさと脱ぎ出した。

羨ましい筋肉。胸板も厚い。
ヒョロっとした私に組み敷かれるのは、不本意だろうな。
私も腹を括ったからには、天国に連れてってやるよ。

ココにくる前に仕入れたローションとコンドーム入った紙袋を掴むと、トランクスのみになった彼の胸をトンとついた。
「横になって…」
ベッドに座り込んだ。
「いきなり?」
「うん、いきなり」
にんまり笑う。
細い目が更に細くなる。
凄みがあると言われた笑顔になってるかと思う。

彼は笑顔を引き攣らせて、トスンとベッドに倒れ込んだ。
うん。それでいい。

トランクスに手を掛けると躊躇なく引き下ろす。
半勃ちのなかなかのサイズの逸物が現れた。
ポイっと下着はさようなら。

ローションをたっぷり手に取ると温めながら、陰茎を包んだ。
緊張を解いてやらんとな。
男の悦びを最大限に昂めてやろう。

「ひゃうんっ」
ピクンとぎこちなく身体が跳ねる。
あはは、緊張か?
固いなぁ~。
同じ固くするならココを硬くしろ。

ゆっくり玉袋も込みでやわやわと揉み扱く。ちらりと後ろもチェック。
確かに準備をして来てるようだ。嘘ではない。
出来るように頑張ったのか。可愛いな。

数ヶ月の沈黙はコレか?

少し兆して来た。
緊張が解れてきたかな…。

下腹から臍、腹筋の割れ目を舌で唇で刺激しながら、上に上に這い上がっていく。
時々止まって、キス。
ワザとリップ音をさせる。
リップ音が上がってくるのは、ドキドキするだろ?
フッと乳首に息を吹きかけ、竿を扱く。

乳輪にチュッと口づけして、ローションで滑るままカリ首を引っ掛け亀頭を撫でる。ビクビクと揺れて、雄が大きくなり勃ち上がった。ーーーーチョロくないか?

ペロっと乳首を舐めて、ツンツンと舌先で刺激する。亀頭への刺激も同時にしてやる。
どちらも気持ちいいんだよ?と身体に教えてやる。

片方の乳首もローションの滑りでくるくると撫で回す。

ツンツン、ペロペロ、ヌルヌル……
シコってやってる内に背中が反ってきた。

玉も張ってきた。
ローション以外の先走りでヌメヌメしている。糸を引きそうに垂らしてるな…。
立ち上がった乳首を含んで、口の中でチロチロと嬲ってやる。
鈴口を刺激してやり、もう片方の乳首は引っ張って捻って、プッツンと離す。

元々か、素質があったのか、乳首でしっかり感じてる。
乳首を甘噛みして舐めて離れると、胸元から喉仏に向かって舐め上げる。
ホワイトムスクの香り。本当に体臭だったのだな。

「はぁぁぁ……」
密やかな喘ぎ。固さが解れてきたな。
自分の声が嫌だったのか、手が上がって、手の甲で口を塞いでいる。

私も何も触ってないのに兆していた。
がっしりした男を組み敷いてるのは、クルものがあるな。まだ、枯れてなかったらしい。

のし掛かりつつ、顎先を舐めて、もみあげに向かって沿って耳へ。
髭のジャリリっとした感触が舌を刺激する。

耳裏に鼻先を埋めるとホワイトムスクの香りがキツくなった。
香りに酔いそうだ。コロンをつけてきたのかもしれない。

バスローブを脱ぐと、肌を合わせて、乳首を身体で刺激する。両方ツップリと立って、私の肌に存在を示してくる。

竿を扱く手の速度を少し上げる。
私のモノを彼の腹筋にゆるく擦り付ける。
首を舐め上げ、頬に唇を寄せた。
手を退けてくれないと、キスは出来ないが、したくないのだろうか。

瞼に指に唇を触れさせるが、唇が現れない。

仕方ない。

身体を起こして、彼の上に跨り腹に座った。
後ろ手に扱く。乳首を引っ張り弾いて意識を向けさせる。

閉じた目が開いてこちらを見た。

絡む視線は熱く濡れていた。

自らのモノを手に握ると、後ろ手の彼を同時に扱いた。

目が私から離せないようだ。

「うぐぅん…あがぁん、うぅん…」

その口からは、呻きのような喘ぎ声が漏れてきた。

「はぁ…はぁ…」
私も熱く吐息が漏れる。

混乱してくるよな…。
オナニー見せられながら、扱かれて、挿れてるのかと錯覚してくるよな。
イっていいぞ!

クリクリと鈴口と亀頭に圧迫を与えながら、強めに扱いた。

ブシュっと軽くイった。
イキがいいな。
背中に掛かった気がする。

私はまだイきそうにない。
彼も硬さを失ってない。

ローションと白濁のヌメリを後ろに塗り込めた。
ピクンと腰が跳ねた。

頬に唇を寄せ、リップ音をさせる。
耳元で囁く。
「うつ伏せになって、尻を上げて」

カクッとぎこちなく頷くと、ベッドにずり這い上がって、うつ伏せなって尻を上げた。
顔は枕に埋めてる。

首が染まってる。
顔は真っ赤だろう。

内腿に手を掛け割り開く。
玉から竿が丸見え。少し縮んでいんるかな。
玉を口に含む。竿を扱いてやると直ぐに硬さが復活してきた。

そのまま後孔に指を這わせる。
玉をしゃぶりながら、吸い付き、ボロンと解放する。
唾液で光ってる。

竿を扱きながら、ツプンと指を差し込んだ。

きゅっと締め付けられた。指が動けない。
尻たぶにキスする。チュッチュと音を鳴らしながら、腰の方に移動していく。
尾骶骨から背骨に沿ってゆっくり舐め上げた。

クンッと背が反って、孔が緩んだ隙に指を押し込んで中を探る。
竿が勃ってるから、見つけ易いとは思うが……あった。ローションを隙間に垂らしつつ、前立腺を撫で上げた。

くぐもった声が聞こえる。
効いてるようですね。
前もグンと反応してる。

私の前も力を持った。

本当に頑張って解してきたとみえる。
もう指が増やせそうだ。
2本挿し込んで、解して、拡げる。
3本にしてみた。すんなり挿入った。

前立腺も刺激しながら、くぱっと拡げてみる。柔らかく開いて誘ってくる。

いけるな。

箱を引き寄せて、ゴムを這わせて、手早く準備する。ローションを塗りこめ、後孔に当てがった。

プルッと震えてる。
初めてだもんねぇ。
怖いよねぇ。
私は知らんけど。

私は、この1度目の挿れる瞬間が好きだ。

厚い胸板の向こうに付いてる乳首をサワっと軽く撫でて、摘んで、キツめに引っ張り、ぷるっと離した。
後ろが緩む。ツプッと挿れ込む。

プルルと震えてる。

グニュニュと挿れていく。窄まりも皺が押し拡げられていく。
太い部分が這入っていく。ジュブンと咥え込んだ。

縁が捲れて、赤くなってヒクついてる。
少しの抵抗を感じたが難なく太い部分は通過して飲み込んでくれた。
少し前後させながら、奥へ挿れ込んでいく。
前立腺の辺りは念入りに擦りつけた。

くぐもった声が上がり続けている。

奥は流石に狭かった。

……全部這入った。

二人とも薄っすらと肌が湿っている。
背骨に沿って舌を這わせて、首まで舐め上げていく。
ピクン、ピクッと身体が揺れる。
ナカも蠢く。

「はぁぁぁ……」

首に到達する頃には、私も吐息漏れていた。
私の声でだろうか。
肉筒が締まる。

「キスは嫌か?」
後ろから囁いてみた。

枕から顔が上がる。
蕩けた顔をしてる。可愛いな。
身体を捻って、唇が開いて、誘ってくる。
唇を合わせて、腰を緩く揺する。
舌が突き出てきた。声もなく悶えてる。
震える舌を絡めて舐めて唾液を注ぐ。
コクンと飲んだ。
チュッと音を立てて離れると、がっしりした腰を掴んだ。

多少の無理をしても大丈夫そうな身体だ。
少々乱暴に突いてやろうか。

リズミカルに腰を打ちつけ始めた。



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