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恋の奮闘
4】そばに居てくれますか?(前)
しおりを挟む美味しいものは幸せにしてくれます。
サービスエリアというのは、車を持たないボクには思いもつかないところです。免許は持ってるんです。この辺りは公共交通機関が便利過ぎるんで、車が必要かどうかと言われると、ボクは必要性を感じません。
必要な時は、大学のカーシェアのを利用する気です。
目が覚めたら倒された助手席シートで大の字で寝てました。涎を拭きながら起きたら、ダグは居ませんでした。
『ダグ、どこ?』
不安になってメッセージ。
『すぐ戻る。トイレ』
ああ、トイレですか。んー、ボクも行きたくなってきた。
入れ替わりでトイレに向かった。
空いてるトイレの方向を教えてくれる声を背に急ぐ。
急いでたから、戻ったダグの髪が濡れてる事には気づかなかった。
戻ってきたら、髪を拭いてた様子だった。雨は降ってないです。
なんだか頭から水を被ったらしいです。どうして?
『頭を冷やしたかった』んだって。よく分かりません。
そんなこんなで明日のおやつも買って帰路に。幸せです。
「お前は、ツレとカラオケとか行かねぇのか?」
ツレ? カラオケですか?
「カラオケですか…。あ、ジャグジーのあるところでしたら何度か…」
「……タクトさんよぉ~、ジャグジーのあるところは、カラオケじゃないと思う」
「大きな画面に歌詞出てました。マイクもあります。あれはカラオケでしょ? 泡風呂面白かったから、今度、ダグも行きましょう?」
ため息を吐かれてしまいました。
今日は、繁華街のこの煌びやかな建物に入る事になりました。
ボクは飲み会とかそういうのには参加した事がありません。誘われる事が殆どないんです。
ボクはどうも変わってるのだそうです。ボクもよく分からないのでこれで良いと思ってましたが、ダグさんはダメだと言います。もっと人と関わらないといけないようです。
よく分からないけど、ダグが言うなら、色々と挑戦してみましょう。
「俺もそんなに行った事ないから」と言ってましたが、ダグと一緒なら大丈夫です。
人が多くて酔いそうです。そろそろ待ち合わせの時間なのですが…。
「お? あん時のッ」
いきなり腕を掴まれました。
ダグはそういう事はしません。
驚いて相手を見れば、髪を染めた背の高い男で、ボクに比べればみんな背は高いです。耳に金属が幾つもついてます。ピアスをするのに穴を開けると聞きます。痛そうなのをあんなに…ボクには無理ですね。
あちらはボクを知ってるようですが、ボクは知りません。大学のも居そうですが、近くには居ません。はてさて、どなたでしょう?
「どちら様ですか?」
「どちら様ぁあ? ちょっとケツ貸せや。楽しもうぜ?」
笑われてしまいました。
お尻を掴まれます。痛いぐらいに鷲掴み揺すられました。何をされてるんでしょうか、ボクは…。
呆然としてると腕を引かれます。どこかに連れて行かれる? 知らない人です。相手は知ってるようですが覚えが無いです。ついてきませんよ?
腰に腕が回って、足が浮いてしまいます。
「イイ穴だったよな。みんなで楽しもうぜ」
耳元で囁かれる。唇を指で擦られる。
「こっちも良さそうだな…」
「待ち合わせしてるんです。離して下さい」
「ん? 話? なに話す?」
????
よく分かりませんが、ここから離れたらダグには会えなくなりそうです。
「待ち合わせてるんです。一緒には行きませんッ」
ハッキリお断りしたのに、離してくれません。
後ろを振り返って、ダグを探しますが、ボクの好きなクマさんは見当たりません。困りました。
甘ったるい香りが鼻を掠りました。この匂い…。埃っぽい臭いと一緒に嗅いだ気がします。
あのバイトの相手だった人?
あれはもう嫌ッです。
身体が一気に冷える気がしましたが、ボクはイヤな事は言えるんです。これだけの人は居るんだから、暴れるボクはきっと目立つ。助けてくれるはずッ。
「イヤですッ。離して下さいッ」
スニーカーの爪先がアスファルトを擦ります。ジタバタしながら、ボクに絡む腕を解こうと叩いたり掻いたりしてますが外れません。周りは気にも留めてない。関心なく通り過ぎていきます。
なんて事でしょう。ボクはこのまま連れて行かれてしまうのですか?
今回は、のこのこと呼び出された場所に行ってませんよ。ダグとの待ち合わせです。カラオケに行くだけなんです。
ボクは、また、騙されたのでしょうか。泣けてきます。ぐったりと力を抜いた。アスファルトにポタポタ沁みを作るのをぼんやり眺めてます。
「やる気になった? 行こ行こッ」
諦めたです。もうボクは恋人にもなれない存在なんですね…。
「なにドナドナされてんだ」
バリトンボイス。ボクの好きなクマさんッ。パッと顔を上げたら、汗びっしょりのダグがいました。走ってきたみたいです。息が上がってます。
待ち合わせ時間に合わせる為に走って来てくれたんですね。
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