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窓の外の外へ
窓の外の外へ(1)
しおりを挟む復帰第二弾(⌒-⌒; )
現代物書いてたら、ふと『剣と魔法の世界』モノが書きたくなっちゃって( ̄▽ ̄;) よろしくお願いします。
==============
香の香りに煙り。紫煙が広がり溶けて交わる。
幾つもの薄暗い灯りに照らされる部屋に各々寛ぐ薄衣の人たち。
薄布に幾重にも縁取られ、窓枠の意匠も美しい窓がひとつ。
窓は大きく、通りに面して、中で寛ぐ人たちを覗き見て通り過ぎていく人影を映している。
中の商品を妖艶に美しく魅せる窓。
オレは、通りがよく見えるこの場所で、華奢な柄の長い煙草パイプで紫煙を燻らせていた。
積み上げたクッションに埋もれるように凭れ身体を預けて気怠く脚を伸ばし、軽く組んでいる。
纏ってる衣の合わせが、脚の動きと一緒に少し乱れる。白い生脚…。直すのもめんどくさい。太ももまで見えちゃってるけど、別にいいや…。
男娼なんて、そうそう呼ばれるもんじゃない。のんびりさせてもらうさ。周りから、ぱら、ぱら、と人が消えては戻ってくる。
吸い口を咥え、すーっと吸って、ふぅっと吐き出す。揺れながら広がる紫煙。長居をしたな。
衣食住の保障されたこの場所の水があったといったところだろうな…。でも、そろそろ別の地に向かった方がいいか…。随分とこの土地に居座ってる。だって、ここメシが美味いんだよ。
旅支度はほぼ整ってる。あとはこの重い腰を浮かせるだけなんだが、それが問題なんだよなぁ~。
ふわっと吐き出した紫煙が視界に紗をかける。
煙りが広がって薄くなり、窓の外に佇む人と目が合った…。
今日はこの人か…。
男とはいえ全く仕事がない訳ではない。むしろ暇でもなく忙しくもなく仕事がある。あるんだよ。
こんな辺境の歓楽街の男娼にもさ…。ここはそれを目的に人を集めてる街。繁盛してないと困るってものだ。実入もそこそこいいので、路銀は充分に稼いだか…。次はどこにしようかな…。
通りを挟んで向こうの区画は女たちの黄色い声が客引きとかしてそうだ。
あっちは激戦区だからな。
ここみたいに落ち着いた雰囲気の店もあるにはある。様々だ。
この街は、酒と金、色が渦巻いている。そういう事で金も人も潤ってる。裏通りに行けば、もっと怪しい店もあるという噂だ。危ないところには近づかないので、知らないけどね。
火の始末をして、呼び出しに備える。
あー、だるい…。適当に済ませて、寝てしまいたいな…。
なんて事を思ってた自分が呪わしい。
危機センサーが自堕落に過ごしていて鈍っていたようだ。
でも、まだオレだとバレた訳ではない。なんとか今をやり過ごして、この街を抜け出せばいい。それだけの事だ。
「お客さん、随分と埃っぽいね。直で来たのかい?」
服を脱ぐのを手を貸し、旅装束を解かせる。
普通は宿屋や銭湯に寄って、身綺麗にしてくるもんなのだが。オレも人と肌を重ねる気があるなら、身綺麗にすると思う。ちょっとはいい感じに見せたと思うんだけどね。
んー、男娼だからって舐められてる?
蒸れたのは舐めたくないですよ?
とは言え、男娼じゃなきゃ、こんな事をする気もないけど。コレで食ってく前のオレは、問答無用に好き勝手されてたけどねぇ…。いまだに肌を重ねるのに慣れないと言ったら男娼失格だろうか…。
風呂の支度はしている。取り敢えず、入ってもらうか。
洗うのを手伝って、その過程で少しずつ魔力を流していけば、事に及ぶ頃にはフニャフニャになって、上手く行けば眠るだろう。目が覚めたら気分も良くてスッキリ。勘違いしてお帰りいただくのさ。
オレはちょっと人とは違う魔法の使い方をする。それしか出来ないという欠陥でもある。
人は皆、魔力を持っている。保有量は人それぞれ。使える魔法もそれぞれ。魔法の持ってる属性と相性みたいなものと才能というか素質によって扱える魔法は色々なのだ。その組み合わせと魔力量とで、魔法が使える人と使えない人がいるだけ。
向き不向き。職業だってそういうもんだと思うけどさ。
オレの魔力は聖属性と相性が良かったというか、それしか使えない。他の属性の魔法は使えない。聖魔法…しかも2種類しかまともに扱えない。浄化と治癒。
そこからの派生の防御も攻撃も出来ない。欠陥品とも言われた。
欠陥と言われるのは、他にも原因がある。
膨大な魔力を保有してるから、色々と制限はあるが、広範囲の浄化だって、怪我人を同時に何人も治す事も可能だ。
性別が違えば『聖女』と崇められてたかもしれないとも言われた。女なら…。『男が聖女なんて気持ち悪い』と何度言われた事か…。
制限のある魔法しか扱えない者が女性であったとしても粗末に扱われない保証はないと、今は思う。
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