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後2ー1.同棲します。
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第2弾!w
よろしくお願いします。
=============
オレたちは、付き合い出したはしたが、周りの関係は何も変わりなかった。
恋人です!って宣言も変な感じというか照れ臭いので、聞かれるまでは、と言うか、同棲の準備が出来てからでもいいかなぁと、家族へ何も言わないでいた。同棲って言ってもどうしたらいいか分からんので、言うのは先の話な感じだ。
「お前さ、独立とか考えてないのか?」
深みのある渋い声。オレを完全虜にしている大柄な幼なじみが、そんな事を口にしながら、調合した液体が入ったフラスコに何か囁き、手を翳している。
フツフツと煮立ったように揺れてる液体の容器を温める火種は無い。
熱する物が無いのに、熱せられてるような様相のフラスコの中。
魔術師の幼なじみの魔法の作用なのだが、いつ見ても不思議な光景だ。
「なんで?」
最近の休日は彼のところに入り浸り。
以前から出入りをしてたから不思議な事ではない。
「あの工房の設備はお前に合ってない。この前使ってよく分かった。このまま使い続けたら身体を壊す」
確かに小柄なオレには無理があるのは、最初から分かっていた。
大柄な親父や同じく大柄な兄弟子たちの手前なんか負けた気がするので、何も言わずに使い続けていた。
身体も鍛えた。
大きく重い槌も難なく使いこなせるようになっていたが、どうにも小さな怪我や火傷を負う事が頻繁だ。
幼なじみがここに魔術師として戻ってきて、雑貨屋のような工房を開いてからは、薬を求めて通っていた。
町の薬屋で購入した薬よりも良く効くのだ。
村にとっては、薬屋よりも安くて効力のある薬なのに、いまいち繁盛しない。
薬と言っても民間薬に近いからか、少し離れた町の薬屋で、薬は求められるのが常である。
オレは知ってる。
幼なじみの大柄で厳つく無愛想な顔が問題なのだと。
多分本人は緊張してるだけなんだろうけど。
実際、オレには笑顔を見せる事がある。可愛い。かっこいいって思う時もある。
コイツの両親が役所の人間ってので、信用で商売出来てるところもあるが、接すれば人柄の良さを知れるので、近頃は少しずつ常連さんも増えて来ている。
愛想が良ければ繁盛しそうなのに。
で、割と近くにオレの実家。コイツの家とはご近所さんな訳。
その近くに工房。そこの長男であるオレは跡継ぎとして進路をココに定めて修行してる訳さ。
後から入ってきた弟弟子も大柄じゃ、設備にとやかく益々言えない。
今の工房の主人は親父だから。
その息子に合わせて何かにと変更してたんじゃ、贔屓してるようで……。
オレはやれてる。
やれてるが…、確かにそうだよなぁ…。
「オレ、跡継ぎだし…」
「兄弟子の旦那に継いで貰えば?」
兄弟子のひとりが姉と結婚してる。
田舎に帰って工房を立てる予定らしい。
姉はこの土地が気に入ってるから離れたくはないが、半ば諦めているようだ。
そうか…。
でも、兄貴にも都合があるだろう…。
「ここから少し離れた場所なんだが、いい物件がある」
折り畳まれた紙が空中をふわふわ飛んできた。オレの前に広げられる。
村外れにはなるが、工房と家が建てれそうな十分な広さの土地。薬草とかの菜園も出来そうな庭も出来そうだ。
「へー、結構な広い土地じゃん」
「だろう。教会の関係者で寄進されたらしいんだけど、持て余してたらしいんだ」
「へー」
『へー』しか出ない。
「手始めにちょっとお願いがあるんだが」
オレ、コイツのお願いに弱い。
「なんだ?」
なんとなく照れくさくなって、懐から煙草を取り出して咥える。火はつけない。ただ咥えて、ヒョコヒョコ動かしてるだけ。
「お前の鍛冶屋の腕と研ぎの技術で、これらの部品と道具を作って欲しい。正式な依頼として契約書も作る」
別の紙がやってきた。
手に収まった。
歯車がいくつかとハサミと小さなナイフのような物。
どれも細かい寸法や注釈が書かれている。
「契約書」
咥え煙草のまま掌を幼なじみに向ける。
指をクイクイとさせて、寄越せとジェスチャー。
受けますよ。
歯車の方が急ぎだと言うので、さっさと作ってはダメ出しされて、なんとか納品。
そして、今日は、道具の試作品を持って工房に。
来れば、先客がいた。
よく知ったメンツ。
オカンと姉だ。
優雅にというか賑やかにお茶会が開かれていた。
お茶菓子の中にカラクリの玩具が置かれていた。台の上で人形がくるくるダンスしてるだけのカラクリ玩具。
招き入れられたが、試作品を渡すと回れ右しようとしたら、オカンに呼ばれた。
仕方なくお茶会の席に着いた。
「これの部品お前が作ったんだって?」
オカンが真剣な眼差しで切り込んできた。
オレまだお茶一口も飲めてないんだけど、いきなり何を言っておられる?
パチクリするオレの目の前で、幼なじみの大きな手が繊細な動きでカラクリの外側を外した。
中の機構が丸見えだ。確かに歯車はオレが作った。あの数の全部がこれに使われたのか?
確か薄くて軽く丈夫なと言われたが、大中小とグラデーションに重ねられた歯車。その塊で一つの歯車のようだ。
「そうだけど?」
「お前は独立しな。うちの工房向きじゃないよ。父ちゃんには私から話振っとくから、頃合い見てお前から話しておくれ」
なんかよく分からないが独立を勧められた。
そしてお膳立てもするとも。
横から姉がニコニコと「あの人とここに残るわ。家はあの人が継ぐから」とトドメ。
「ほへーッ?!」
どうやら話が纏まっていた。
最近、女二人で出掛けるなぁとは思ってたが、こんな話が繰り広げられていたのか。
チラッと幼なじみを見れば、はにかむ可愛い笑顔。
ボンと顔が熱くなってしまった。
「何を照れてるんだよ! 凄い技術だよ。昔から手先が器用だとは思ってたけどね…」
オレの背中をオカンがバンバン遠慮なく叩きまくる。
オレは独立。村外れに共同の工房と家を建てる事になった。
なったよ!
同棲だよ!
びっくりだよ!
エッチ三昧だよ!
よろしくお願いします。
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オレたちは、付き合い出したはしたが、周りの関係は何も変わりなかった。
恋人です!って宣言も変な感じというか照れ臭いので、聞かれるまでは、と言うか、同棲の準備が出来てからでもいいかなぁと、家族へ何も言わないでいた。同棲って言ってもどうしたらいいか分からんので、言うのは先の話な感じだ。
「お前さ、独立とか考えてないのか?」
深みのある渋い声。オレを完全虜にしている大柄な幼なじみが、そんな事を口にしながら、調合した液体が入ったフラスコに何か囁き、手を翳している。
フツフツと煮立ったように揺れてる液体の容器を温める火種は無い。
熱する物が無いのに、熱せられてるような様相のフラスコの中。
魔術師の幼なじみの魔法の作用なのだが、いつ見ても不思議な光景だ。
「なんで?」
最近の休日は彼のところに入り浸り。
以前から出入りをしてたから不思議な事ではない。
「あの工房の設備はお前に合ってない。この前使ってよく分かった。このまま使い続けたら身体を壊す」
確かに小柄なオレには無理があるのは、最初から分かっていた。
大柄な親父や同じく大柄な兄弟子たちの手前なんか負けた気がするので、何も言わずに使い続けていた。
身体も鍛えた。
大きく重い槌も難なく使いこなせるようになっていたが、どうにも小さな怪我や火傷を負う事が頻繁だ。
幼なじみがここに魔術師として戻ってきて、雑貨屋のような工房を開いてからは、薬を求めて通っていた。
町の薬屋で購入した薬よりも良く効くのだ。
村にとっては、薬屋よりも安くて効力のある薬なのに、いまいち繁盛しない。
薬と言っても民間薬に近いからか、少し離れた町の薬屋で、薬は求められるのが常である。
オレは知ってる。
幼なじみの大柄で厳つく無愛想な顔が問題なのだと。
多分本人は緊張してるだけなんだろうけど。
実際、オレには笑顔を見せる事がある。可愛い。かっこいいって思う時もある。
コイツの両親が役所の人間ってので、信用で商売出来てるところもあるが、接すれば人柄の良さを知れるので、近頃は少しずつ常連さんも増えて来ている。
愛想が良ければ繁盛しそうなのに。
で、割と近くにオレの実家。コイツの家とはご近所さんな訳。
その近くに工房。そこの長男であるオレは跡継ぎとして進路をココに定めて修行してる訳さ。
後から入ってきた弟弟子も大柄じゃ、設備にとやかく益々言えない。
今の工房の主人は親父だから。
その息子に合わせて何かにと変更してたんじゃ、贔屓してるようで……。
オレはやれてる。
やれてるが…、確かにそうだよなぁ…。
「オレ、跡継ぎだし…」
「兄弟子の旦那に継いで貰えば?」
兄弟子のひとりが姉と結婚してる。
田舎に帰って工房を立てる予定らしい。
姉はこの土地が気に入ってるから離れたくはないが、半ば諦めているようだ。
そうか…。
でも、兄貴にも都合があるだろう…。
「ここから少し離れた場所なんだが、いい物件がある」
折り畳まれた紙が空中をふわふわ飛んできた。オレの前に広げられる。
村外れにはなるが、工房と家が建てれそうな十分な広さの土地。薬草とかの菜園も出来そうな庭も出来そうだ。
「へー、結構な広い土地じゃん」
「だろう。教会の関係者で寄進されたらしいんだけど、持て余してたらしいんだ」
「へー」
『へー』しか出ない。
「手始めにちょっとお願いがあるんだが」
オレ、コイツのお願いに弱い。
「なんだ?」
なんとなく照れくさくなって、懐から煙草を取り出して咥える。火はつけない。ただ咥えて、ヒョコヒョコ動かしてるだけ。
「お前の鍛冶屋の腕と研ぎの技術で、これらの部品と道具を作って欲しい。正式な依頼として契約書も作る」
別の紙がやってきた。
手に収まった。
歯車がいくつかとハサミと小さなナイフのような物。
どれも細かい寸法や注釈が書かれている。
「契約書」
咥え煙草のまま掌を幼なじみに向ける。
指をクイクイとさせて、寄越せとジェスチャー。
受けますよ。
歯車の方が急ぎだと言うので、さっさと作ってはダメ出しされて、なんとか納品。
そして、今日は、道具の試作品を持って工房に。
来れば、先客がいた。
よく知ったメンツ。
オカンと姉だ。
優雅にというか賑やかにお茶会が開かれていた。
お茶菓子の中にカラクリの玩具が置かれていた。台の上で人形がくるくるダンスしてるだけのカラクリ玩具。
招き入れられたが、試作品を渡すと回れ右しようとしたら、オカンに呼ばれた。
仕方なくお茶会の席に着いた。
「これの部品お前が作ったんだって?」
オカンが真剣な眼差しで切り込んできた。
オレまだお茶一口も飲めてないんだけど、いきなり何を言っておられる?
パチクリするオレの目の前で、幼なじみの大きな手が繊細な動きでカラクリの外側を外した。
中の機構が丸見えだ。確かに歯車はオレが作った。あの数の全部がこれに使われたのか?
確か薄くて軽く丈夫なと言われたが、大中小とグラデーションに重ねられた歯車。その塊で一つの歯車のようだ。
「そうだけど?」
「お前は独立しな。うちの工房向きじゃないよ。父ちゃんには私から話振っとくから、頃合い見てお前から話しておくれ」
なんかよく分からないが独立を勧められた。
そしてお膳立てもするとも。
横から姉がニコニコと「あの人とここに残るわ。家はあの人が継ぐから」とトドメ。
「ほへーッ?!」
どうやら話が纏まっていた。
最近、女二人で出掛けるなぁとは思ってたが、こんな話が繰り広げられていたのか。
チラッと幼なじみを見れば、はにかむ可愛い笑顔。
ボンと顔が熱くなってしまった。
「何を照れてるんだよ! 凄い技術だよ。昔から手先が器用だとは思ってたけどね…」
オレの背中をオカンがバンバン遠慮なく叩きまくる。
オレは独立。村外れに共同の工房と家を建てる事になった。
なったよ!
同棲だよ!
びっくりだよ!
エッチ三昧だよ!
応援ありがとうございます!
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