ココに居ていいですか?

アキノナツ

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10】助けて欲しい。

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 確か、5階の角。あっちを指差してたから…。

 夕刻、報告書は明日にと、直帰にして得崎えさきさんのマンションにやってきた。

 オートロックじゃないようで、スムーズにエレベーターに乗り込めた。

 えーと、表札は無し。別名でもなく、無し。ガス栓の封はない。入居者は居るという事だよな。良かった…引っ越しはしてない。
 表札出さない人も居るから、変では無い。うん、変では無いはずだ。だが、予感めいた違和感があった。

 インターフォンのボタンを押しかけて指を引っ込める。
 そうだ、反対側も見て来よう…。
 クルッと向きを変えて、スタスタスタ…。

 戻ってきた。こっちで合ってたようだ。あちらは表札が出ていた。

 改めて、インターフォンをポチッと…。ドア向こうで音がしてる。なんだか音が抜けていく様な…。
 もう一度…。

 やっぱり、音が広がって抜けていく。人が住んでたら、音が吸収されてもっとくぐもる感じだと思うんだが…。

 スマホを取り出す。
 俺の持ってる得崎さんの情報なんてこんなもんだ。楽観視してた。
 今日は彼を誘って外食をと思っていたのだ。彼が居るはずだったんだよ。

 メッセージを送ってすぐに『電話いいか?』と返信がきた。
 スタンプで即返しした。

『渡したいものがある。ああ~、最後の最後で面倒だぁ~』
 ワンコールで出た向こうで山下やましたさんがボヤいてる。珍しい。

「何処にでも伺いますよ」
 手がかりというか、助けてくれるのはこの人だけだろう、たぶん。

『社に戻ってきて。どうせ得崎さんの前にでも居るんだろ?』
 お見通しのようだ。なら、先に連絡くれよ…。はい、八つ当たりです。すみません。

「向かいます。デスクにいますので」
『了解。お前も早く降りろッ』
 切れた。珍しく怒ってる。

 何処かで軽食買って、仕事でもするか。接触する度に会社辞めろと尻を叩かれる。

 報告書を書き終わったところで、山下さんがダンボールの小箱を持ってやって来た。来た途端にキョロキョロしてる。さっき俺とヨッて挨拶したのにこっちに来ないで、無視かよ。

「これいいな。貰うぞ。それから、綴じ紐の封筒…あ、それでいい。ありがとう」

 物色して、近くにいる人に声を掛けて持っていく。
 秘書課の山下さんはここでも恩を売ってるのだろうか。売らさせてるのかもしれないな。彼には自然と仕事が寄ってくるようで、いつも冷静に捌いてる。

 誰かの土産だったかの作りがしっかりとした菓子箱の中身を抜いて、他のお菓子の箱に移してる。
 集めた材料を小箱の上に積んで移動。空いたスペースでダンボールの中身を次々入れて、同じく菓子箱が入ってたと思われる紙袋に、箱と茶封筒を入れた。

「これ返してくるから、帰り支度してろ」

 紙袋を押し付けられて、ダンボールを持って去って行った。袋の中の菓子箱は紐掛けまでされて固定も抜かりなし。
 よく分からないが、言われた通り支度をする。

 終わったところで戻ってきた。

「参った。机の整理が終わったところで渡されても困るんだよな。あ、皆さん、私は明日から有休で居ませんのでよろしく」

「休めるの?」

 変な事を言ってしまったが、山下さんだよ?
 普通は休みたい時に休めるだろうが、山下さんが自分優先に休めるとは思えない。仕事が許してくれないだろう。

 営業の皆さんも渋い顔になってる。でも諦めも早い。仕事に戻った。

「この為に準備してきたんだよ。長かったわ」
 肩を揉みながら首を左右にコキコキ鳴らしてる。

 手をひらひらしながら皆さんにお別れ。エレベーターホールに向かうようだ。慌てて荷物を持って後を追った。

「辞める為の仕事ってなんだよな。新規も入ってくるし、問題も押し付けられるし…。私が辞めるって知ってながら…知ってるからかな…」
 乾いた笑い声。

 俺は黙って聞いてた。

「飲みにいくぞ。お前の聞きたい事、全部話してやる。知ってる範囲だがな。それから「釣りには行きませんよ」
 先手で断った。釣り餌が苦手なんですよ。

「まだ言ってないぞ。合ってるけどさ…お前、それぐらい周りが見えてたらなぁ。私もだな…」






===============


会えるといいな( ̄▽ ̄;)

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