1 / 17
第1話 ゴブリン村
しおりを挟む
「ゴブゴブ」
ここはルフガル。ゴブリン村だ。
人間の言うところのエルヘレス森の中腹にあるらしい。
近くに人間の集落はないが、森の麓には人間の村が一つだけある。
そんな辺鄙な場所だ。
最初の転生は人間の下級貴族だった。
比較的裕福で色々な知識を身に着け、それとなく過ごしていた。
結婚して子供が出来て、それなりに幸せだった。
そして普通に死んだ。
再び生まれ変わってみたらゴブリンだった。
崖にある洞窟がルフガルだ。
内部は思ったよりは広く入り組んでいる。
行き止まりがいくつもあったので、それぞれ小部屋のように利用している。
ゴブリンはこのような生活に適応しているのか、人間よりも目がいい。
薄暗がりでも、そこそこ見ることができる。
俺が二歳を過ぎるころ、子供も卒業だと言われた。
「ドルだべ。お前も明日から狩りに行くべ」
「はい、長」
長はベダだったかな。
ここのゴブリンの最長老で今年十五だったかと思う。
ゴブリンの寿命は二十歳くらい。
野生のゴブリンはもう少し短いかもしれない。
この世界では野生のゴブリンと、ゴブリン牧場で生まれた町生まれのゴブリンがいる。
町のゴブリンは奴隷として一生働かされる。
俺も人間だったころ子爵家生まれだったから、ゴブリンはこき使われているのをよく目にした。
町中では食堂の皿洗い、雑用。
一番多いのはプランテーションの農奴だ。
それから採掘現場での鉱員。
多くはメス、オス関係なく働かされる。
単純労働には、ゴブリン。これが定説だった。
食堂でも配膳は女の子の仕事だ。ゴブリンに任せたりすることはない。
こうして分担されていた。
基本的にゴブリンに表の仕事をさせることはない。
貴族の館クラスになると全員、人間だったりする。中には少数、獣人がいるくらいだろうか。
言語が同じなのでここが同じ世界であることは明確だった。
野生のゴブリンにも「人間語」が普及して久しい。
はるか昔には、ゴブリン語を話していたとエルフの記録があるのだが、ゴブリンを奴隷として使うようになってから、ゴブリンに人間語を教えるようになり、今では野生のゴブリンにまで人間語が普通に話されている。
野生といっとも細々と人間と交流を持つことがあったのだろう。
野生のゴブリンは、森や山などの洞窟に住む、いわば原住民だ。
世界はとても広く、人間のテリトリー外の森なども多数あるので、野生のゴブリンはそういうところに点々と住み着いて、今まで生き延びてきた。
街のすぐ外に住んでるなんてこともある。
「ドル、こっちだ」
「ああ」
ゴブリンのリーダーが俺や仲間を連れて狩りに出る。
手にはお手製の木槍を装備していた。
先をナイフで削り尖らせてあるが、大した威力はない。
よく先が折れるので面倒だった。その度に削り直しだ。
ナイフは昔、死んだり捕虜にしたりした冒険者から回収したものだと伝わっている。
もうだいぶボロいが、それでもないよりはマシだった。
ゴブリンに鍛冶仕事は難しい。
「角ウサギだ」
「ゴブブウ」
一斉に木槍を突いて角ウサギを追い込む。
ウサギはびっくりして飛び上がり、そのまま走って逃げていく。
「失敗だった、ゴブ」
「だな」
ゴブリンの普通の狩りは成功率が低い。
だから交代で何パーティーか組んで一日中付近の森を探索する。
たまに人間にも遭遇することがある。
人間と俺たちゴブリンは会話できるにもかかわらず、それほど交流がない。
そして冒険者はゴブリンの奴隷狩りをすることがある。
だから俺たちと冒険者は戦闘になることがあった。
そして女冒険者はゴブリンの捕虜になることがある。
どうなるかといえば、ふむ。もちろん子供を産んでもらうことになるわけだが……。
それはまたいずれ話そう。
今日も一日がかりで角ウサギが三匹なんとか確保できた。
それから運がいい。
「ククル、ククル、ゴブ」
「おお、美味そうだ」
「とる、とるべ」
今日はククルの実という赤い果実が豊作だった。
森の中にところどころに生えているのが、今が旬だった。
俺たちのパーティー五人でどんどん採っていく。
いわゆる狩猟採集生活というやつだろう。
まるで原始人だが、しょせんゴブリンである。
まあ、そんなものだろう。
背負い袋にいっぱいにククルの実を収穫すると、ゴブリンが満足気にニヤリと笑った。
緑の皮膚。短髪の灰色の髪に、しわくちゃな顔。
そして口元に伸びる牙。
背は十歳児くらいの身長までしか伸びない。
雑な草を編んだ服と半ズボンを着ている。
それからイノシシやオオカミの牙を吊るしたペンダントをしている。
ゴブリンにも文化らしきものがあり、ペンダントはお洒落なのだ。
イノシシやオオカミを倒すのは命がけであり、その牙を身に着けるのは、名誉であるとされる。
俺も戦士になるということで、今朝方、オオカミの牙が一本だけのペンダントを新しく与えられた。
他のゴブリンたちは複数本の牙をぶら下げていた。
リーダーのペンダントは中央にイノシシの大きな牙が一つに、たくさんのオオカミの牙が並んでいる。
ということでペンダントを見れば、そいつがどれくらいの戦士階級か分かるのだった。
ここはルフガル。ゴブリン村だ。
人間の言うところのエルヘレス森の中腹にあるらしい。
近くに人間の集落はないが、森の麓には人間の村が一つだけある。
そんな辺鄙な場所だ。
最初の転生は人間の下級貴族だった。
比較的裕福で色々な知識を身に着け、それとなく過ごしていた。
結婚して子供が出来て、それなりに幸せだった。
そして普通に死んだ。
再び生まれ変わってみたらゴブリンだった。
崖にある洞窟がルフガルだ。
内部は思ったよりは広く入り組んでいる。
行き止まりがいくつもあったので、それぞれ小部屋のように利用している。
ゴブリンはこのような生活に適応しているのか、人間よりも目がいい。
薄暗がりでも、そこそこ見ることができる。
俺が二歳を過ぎるころ、子供も卒業だと言われた。
「ドルだべ。お前も明日から狩りに行くべ」
「はい、長」
長はベダだったかな。
ここのゴブリンの最長老で今年十五だったかと思う。
ゴブリンの寿命は二十歳くらい。
野生のゴブリンはもう少し短いかもしれない。
この世界では野生のゴブリンと、ゴブリン牧場で生まれた町生まれのゴブリンがいる。
町のゴブリンは奴隷として一生働かされる。
俺も人間だったころ子爵家生まれだったから、ゴブリンはこき使われているのをよく目にした。
町中では食堂の皿洗い、雑用。
一番多いのはプランテーションの農奴だ。
それから採掘現場での鉱員。
多くはメス、オス関係なく働かされる。
単純労働には、ゴブリン。これが定説だった。
食堂でも配膳は女の子の仕事だ。ゴブリンに任せたりすることはない。
こうして分担されていた。
基本的にゴブリンに表の仕事をさせることはない。
貴族の館クラスになると全員、人間だったりする。中には少数、獣人がいるくらいだろうか。
言語が同じなのでここが同じ世界であることは明確だった。
野生のゴブリンにも「人間語」が普及して久しい。
はるか昔には、ゴブリン語を話していたとエルフの記録があるのだが、ゴブリンを奴隷として使うようになってから、ゴブリンに人間語を教えるようになり、今では野生のゴブリンにまで人間語が普通に話されている。
野生といっとも細々と人間と交流を持つことがあったのだろう。
野生のゴブリンは、森や山などの洞窟に住む、いわば原住民だ。
世界はとても広く、人間のテリトリー外の森なども多数あるので、野生のゴブリンはそういうところに点々と住み着いて、今まで生き延びてきた。
街のすぐ外に住んでるなんてこともある。
「ドル、こっちだ」
「ああ」
ゴブリンのリーダーが俺や仲間を連れて狩りに出る。
手にはお手製の木槍を装備していた。
先をナイフで削り尖らせてあるが、大した威力はない。
よく先が折れるので面倒だった。その度に削り直しだ。
ナイフは昔、死んだり捕虜にしたりした冒険者から回収したものだと伝わっている。
もうだいぶボロいが、それでもないよりはマシだった。
ゴブリンに鍛冶仕事は難しい。
「角ウサギだ」
「ゴブブウ」
一斉に木槍を突いて角ウサギを追い込む。
ウサギはびっくりして飛び上がり、そのまま走って逃げていく。
「失敗だった、ゴブ」
「だな」
ゴブリンの普通の狩りは成功率が低い。
だから交代で何パーティーか組んで一日中付近の森を探索する。
たまに人間にも遭遇することがある。
人間と俺たちゴブリンは会話できるにもかかわらず、それほど交流がない。
そして冒険者はゴブリンの奴隷狩りをすることがある。
だから俺たちと冒険者は戦闘になることがあった。
そして女冒険者はゴブリンの捕虜になることがある。
どうなるかといえば、ふむ。もちろん子供を産んでもらうことになるわけだが……。
それはまたいずれ話そう。
今日も一日がかりで角ウサギが三匹なんとか確保できた。
それから運がいい。
「ククル、ククル、ゴブ」
「おお、美味そうだ」
「とる、とるべ」
今日はククルの実という赤い果実が豊作だった。
森の中にところどころに生えているのが、今が旬だった。
俺たちのパーティー五人でどんどん採っていく。
いわゆる狩猟採集生活というやつだろう。
まるで原始人だが、しょせんゴブリンである。
まあ、そんなものだろう。
背負い袋にいっぱいにククルの実を収穫すると、ゴブリンが満足気にニヤリと笑った。
緑の皮膚。短髪の灰色の髪に、しわくちゃな顔。
そして口元に伸びる牙。
背は十歳児くらいの身長までしか伸びない。
雑な草を編んだ服と半ズボンを着ている。
それからイノシシやオオカミの牙を吊るしたペンダントをしている。
ゴブリンにも文化らしきものがあり、ペンダントはお洒落なのだ。
イノシシやオオカミを倒すのは命がけであり、その牙を身に着けるのは、名誉であるとされる。
俺も戦士になるということで、今朝方、オオカミの牙が一本だけのペンダントを新しく与えられた。
他のゴブリンたちは複数本の牙をぶら下げていた。
リーダーのペンダントは中央にイノシシの大きな牙が一つに、たくさんのオオカミの牙が並んでいる。
ということでペンダントを見れば、そいつがどれくらいの戦士階級か分かるのだった。
21
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる