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第17話 ゴブリン準騎士
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村や町から出される兵士は志願兵や徴兵とは異なり、準騎士と呼ばれる。
俺はデレ。五名のゴブリン準騎士の第一陣のリーダーだった。
ガルドに案内役を頼んだ。
ゴブリン村、ルフガル洞窟を出てシャーリア村に一泊した後、デデム町へと行った。
デデム町は栄えているとも過疎ともいえない。
シャーリア村の倍以上デカいが、ごった返すほどではなかった。
思ったよりはこぢんまりとした町という印象が強い。
この町はマーベルス侯爵の直轄領で代官を置いている。
ガルドに連れられて町役場まで出向いた。
「どうも、今度準騎士になったゴブリンです」
「あぁ、あんたらが。確かにゴブリンだな」
「見りゃわかるでしょ」
「そうだが。信じられねぇ。なんたって準騎士だぞ」
「まあそうだが」
半信半疑の町役場の人にへこへこ頭を下げて、俺たちの上司や宿舎を案内してもらう。
これから俺たちは三食飯がタダで食えて、給金が出る。
普通の奴隷階級のゴブリンから見たら「羨ましい」の一言だろう。
上司はこういった。
「ゴブリンねぇ。まあいいや。模擬戦して」
「わかりましたべ」
「俺たちのほうが強いに決まっているがな」
「どうでしょうね」
こうして俺たちゴブリン小隊と人間の小隊とで模擬戦になった。
戦闘方法は俺たちが提案した集団戦だ。
単独で戦ったら、体格で劣るゴブリンが弱いに決まっている。
という意見は両者で一致していたので、俺たちの言い分が通った。
「うりゃああ」
「おりゃあ」
「ういやぁ」
「おらおらおら」
ゴブリン小隊は果敢に槍で攻めていく。
対する人間は最初余裕の表情をしていたが、気が付いたらゴブリン小隊の槍部隊に囲まれていた。
そうして槍をうまく巧みに扱うゴブリンたちに人間たちが降参した。
「ま、まいった」
「ほう」
上官である隊長は面白そうな顔をしていた。
だがそもそも俺たちは森の中で一年以上戦ってきた戦士なのだ。
ウサギだけじゃない。オオカミとも何度も戦闘している。
この前はイノシシとも戦闘をした経験がある。
訓練だけしてる田舎の準騎士なんかよりよほど強いはずなのだ。
ということで実戦豊富な俺たちは、思ったよりずっと強いらしい。
やることといえば、町の巡回だった。
俺たちはゴブリンで城門のチェック係は、常識がないとして回ってこないことになった。
表の仕事は人間のモノというのが常識だからだ。
まあ学がないのは事実なので、こればかりはしょうがない。
そうして槍を装備した五人のゴブリンは町の中で歩いて回る。
「みてみてゴブリン」
「あら、槍なんて装備して嫌ね」
はじめこそ拒否反応は強かったが、俺たちが無害であると分かるとだんだんと町の雰囲気も変わっていった。
それに俺たちは横暴な準騎士が多い中で、何も分かっていなかったため対応が丁寧で人当たりがいいとして人気が上がっていった。
「ゴブリンさん」
「あら、今日もゴブリンさんたちが見守ってくれているわ」
背も低い分、威圧的でないのも好条件だった。
俺たちは次第に町の住民にも受け入れられ「ゴブリン準騎士」といえば立派な準騎士の鏡とさえ言われるようになった。
小さい割には強い。
強い割には物腰が丁寧。
ゴブリン準騎士は紳士だ。
まず酒や娼館通いなどの遊びをそもそも知らなかったことも大きい。
何事もなく仕事をして飯を食って寝る。
それだけで十分充実していたのだ。
飯が上手ければやる気にはなる。
俺たちはゴブリン村を代表しているという自負もあったし、ドルの面子をつぶすわけにはいかない。
こうしてそうして、勤務してあっという間の半年間。
すっかりデデム町でも馴染んでいたころ、血税期間が終わりを迎えた。
俺デレたちはまたゴブリン村へ戻るのだ。
村には仲間たちが待っている。
最後の日。
「ほらほら、飲め飲め、あ悪い。ゴブリンは飲まないんだったな」
「ああ」
「んじゃ、食え食え」
「もちろん」
デデム町の住民に促されて美味しい飯をおごってもらった。
そしてゴブリンの謎の踊りと歌を披露した。
これがゴブリン流のおもてなしだった。
「いいぞ、ゴブリンのだんな!」
「歌ったり、踊ったり、するんだねぇ」
「よっ、その調子」
夜遅くまで続いた、宴はなかかに盛況だった。
町の中には奴隷階級のゴブリンもいる。
地方都市には比較的少ないものの、皆無ではない。
それでも我らゴブリン準騎士たちは己の名誉のため、ゴブリン村のため、命を懸けて戦士の仕事をしている。
それは森の中のルフガルでもデデム町でも変わることがないのだった。
(了)
本編はここでいったん終わりです。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
俺はデレ。五名のゴブリン準騎士の第一陣のリーダーだった。
ガルドに案内役を頼んだ。
ゴブリン村、ルフガル洞窟を出てシャーリア村に一泊した後、デデム町へと行った。
デデム町は栄えているとも過疎ともいえない。
シャーリア村の倍以上デカいが、ごった返すほどではなかった。
思ったよりはこぢんまりとした町という印象が強い。
この町はマーベルス侯爵の直轄領で代官を置いている。
ガルドに連れられて町役場まで出向いた。
「どうも、今度準騎士になったゴブリンです」
「あぁ、あんたらが。確かにゴブリンだな」
「見りゃわかるでしょ」
「そうだが。信じられねぇ。なんたって準騎士だぞ」
「まあそうだが」
半信半疑の町役場の人にへこへこ頭を下げて、俺たちの上司や宿舎を案内してもらう。
これから俺たちは三食飯がタダで食えて、給金が出る。
普通の奴隷階級のゴブリンから見たら「羨ましい」の一言だろう。
上司はこういった。
「ゴブリンねぇ。まあいいや。模擬戦して」
「わかりましたべ」
「俺たちのほうが強いに決まっているがな」
「どうでしょうね」
こうして俺たちゴブリン小隊と人間の小隊とで模擬戦になった。
戦闘方法は俺たちが提案した集団戦だ。
単独で戦ったら、体格で劣るゴブリンが弱いに決まっている。
という意見は両者で一致していたので、俺たちの言い分が通った。
「うりゃああ」
「おりゃあ」
「ういやぁ」
「おらおらおら」
ゴブリン小隊は果敢に槍で攻めていく。
対する人間は最初余裕の表情をしていたが、気が付いたらゴブリン小隊の槍部隊に囲まれていた。
そうして槍をうまく巧みに扱うゴブリンたちに人間たちが降参した。
「ま、まいった」
「ほう」
上官である隊長は面白そうな顔をしていた。
だがそもそも俺たちは森の中で一年以上戦ってきた戦士なのだ。
ウサギだけじゃない。オオカミとも何度も戦闘している。
この前はイノシシとも戦闘をした経験がある。
訓練だけしてる田舎の準騎士なんかよりよほど強いはずなのだ。
ということで実戦豊富な俺たちは、思ったよりずっと強いらしい。
やることといえば、町の巡回だった。
俺たちはゴブリンで城門のチェック係は、常識がないとして回ってこないことになった。
表の仕事は人間のモノというのが常識だからだ。
まあ学がないのは事実なので、こればかりはしょうがない。
そうして槍を装備した五人のゴブリンは町の中で歩いて回る。
「みてみてゴブリン」
「あら、槍なんて装備して嫌ね」
はじめこそ拒否反応は強かったが、俺たちが無害であると分かるとだんだんと町の雰囲気も変わっていった。
それに俺たちは横暴な準騎士が多い中で、何も分かっていなかったため対応が丁寧で人当たりがいいとして人気が上がっていった。
「ゴブリンさん」
「あら、今日もゴブリンさんたちが見守ってくれているわ」
背も低い分、威圧的でないのも好条件だった。
俺たちは次第に町の住民にも受け入れられ「ゴブリン準騎士」といえば立派な準騎士の鏡とさえ言われるようになった。
小さい割には強い。
強い割には物腰が丁寧。
ゴブリン準騎士は紳士だ。
まず酒や娼館通いなどの遊びをそもそも知らなかったことも大きい。
何事もなく仕事をして飯を食って寝る。
それだけで十分充実していたのだ。
飯が上手ければやる気にはなる。
俺たちはゴブリン村を代表しているという自負もあったし、ドルの面子をつぶすわけにはいかない。
こうしてそうして、勤務してあっという間の半年間。
すっかりデデム町でも馴染んでいたころ、血税期間が終わりを迎えた。
俺デレたちはまたゴブリン村へ戻るのだ。
村には仲間たちが待っている。
最後の日。
「ほらほら、飲め飲め、あ悪い。ゴブリンは飲まないんだったな」
「ああ」
「んじゃ、食え食え」
「もちろん」
デデム町の住民に促されて美味しい飯をおごってもらった。
そしてゴブリンの謎の踊りと歌を披露した。
これがゴブリン流のおもてなしだった。
「いいぞ、ゴブリンのだんな!」
「歌ったり、踊ったり、するんだねぇ」
「よっ、その調子」
夜遅くまで続いた、宴はなかかに盛況だった。
町の中には奴隷階級のゴブリンもいる。
地方都市には比較的少ないものの、皆無ではない。
それでも我らゴブリン準騎士たちは己の名誉のため、ゴブリン村のため、命を懸けて戦士の仕事をしている。
それは森の中のルフガルでもデデム町でも変わることがないのだった。
(了)
本編はここでいったん終わりです。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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