おじさん、わたしが好きなのはおじさんではなく猫さんです。

自己紹介

「やっぱり来てくれたか！ おじさん、感激♡    でも、こんな簡単に知らない人と会うようじゃ、変なおじさんに捕まって、アンナコトやコンナコトされちゃうよん！うんフフフフフフ。」

「おじさん、変な人ってどんな人のことをさしていうのか知ってます？」

「え？そりゃ、全身真っ黒で、覆面とかしてる人でしょ。」

わたしが思うにそれは、〔強盗〕と呼ばれる人たちだと思うのだが。

「君、とっても可愛いからさ。おじさんが守ってあげるから♡クールビューティーてきな？そそるな～もうっ！」

どうやらこの人に、自分が変なおじさんだという自覚は微塵もないようだ。



「はい、約束の猫。」

わたしの腕の中が、温かいふわふわとした感触に包まれる。最高だ。猫と触れ合うのはなん年ぶりだろうか。




「君、猫と向き合ってる時は、俺と話してる時とは打って変わって柔らかい表情になるな。そういえば、名前、なんていうの？」

脳裏に、過去の自己紹介シーンがよみがえる。  嘲笑。哀れみの目。あの決まり文句。


「桐生」


「下の名前は？」


あぁ、きた。もう、ほんと、自己紹介大っ嫌い。


「……………れもん」

はい来ます。〔変な名前ねえ〕が。




「ふーん。れもんちゃんね。いい名前じゃん。」





え。


「おじさん、田中幻。まぼろしってか書いてげん。珍しいでしょ。よろしくれもんちゃん。」

……初めてだ。

「おじさん。わたしの名前、笑わないの？」

「え？いい名前じゃん。れもんちゃんさばさばしてるから、ぴったりだと思うけど。それに、人の名前は笑っちゃいけない。でしょ？」





明日も、ここに来てみようかな。