おじさん、わたしが好きなのはおじさんではなく猫さんです。

炊き込みご飯

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おっさん

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そんなことを考えていても、わたしには、つま先ほどの小さな悪事を働く気も、行動を起こす勇気も湧かず、下校を知らせるチャイムに、背中を押されるがまま帰路をついていた。



ミャ

......ん?

ミャ

....え?




うん。やっぱり聞き間違いではない。猫がいる。
ちなみにわたしは、三年連続で「猫をください」とサンタさんにお願いし続け、散々御迷惑をおかけした過去を持つ。猫。いるならば、是非ともお目にかかりたい。



急に止まってキョロキョロし始めるわたしを、通行人は哀れみの表情を浮かべては、関わらないようにさっと目を逸らしていく。しかし、そんなことを気にしている場合ではない。


探すことわずか五分、倉庫のような小さな建物の奥にある、三畳ほどのスペースに猫はいた。


逃げられないよう、しゃがんでジリジリと猫に迫っていく。よし、この調子なら、撫でられる可能性が………




「このワシに触る気か。一回につき、シシャモ三匹なら考えたるぞ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「おい」





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」






「ぶふぉぉぉ、っウっハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

目と鼻の先にいた猫は、笑い声に驚き、あっという間に見えなくなっていった。

その代わりに、倉庫の裏から腹を抱えて笑い転げる男が出てきた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「こ、こんなに上手くいくとは思わなかったわ。」



「おい、反応してくれや。そんなにびっくりしたか」







「・・・・・っい、行っちゃったじゃないですか猫さんがぁ!」








「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

「・・・失礼します」

「え、や、ちょっ、ストップ、ストップ!ゴメンって、おーい!」

「お、おじさん、そこの公園の掃除してるのー。あの猫なら、そこそこ俺に懐いてるから明日連れてきてやる。待ってるでー!」




なんだか、変な人に遭遇してしまった。忘れよう。うん。













「はは~。来てくれると思ったわ。」


次の日、昨日のあの場所には、満足げな表情でよれよれの作業服を着た「おっさん」が猫を抱いて仁王立ちしていた。



この時わたしは、今まで体験したことのない何かが始まる予感に、震え、一目惚れにも似た感情を抱いていた。






忘れようと決めたはずなのに。気づけばわたしの足は約束の地へ向かっていた。


ん?こんなセリフでは、なんだか、恋人を諦めきれない悩める女子みたいではないか。違うから。いや、本当だから。本当に、恋心とかじゃなですから。マジで違いますから!








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