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【第24章 世子争いの兆し】
チタニアの王后たち 第92話
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幸之介王の5人の王后、それぞれの元で育っていた長男たちの中でタチの息子は、慣例により、4月、それぞれの王后の元を離れて暮らすことになった。
長男たちは、3ヵ月強の間に人間で言うと10~11歳くらいに成長していた。
第1王后古野義人の長男、海斗もお別れの挨拶をしていた。
「母上、僕はまだ母上と離れたくないです」
「海斗、それは母も同じだ。
まだ生まれて3か月とちょっとなのに、こんなに大きくなって。
でも、海斗が俺の子であることに変わりはない。
毎日、ここに遊びに来ると良い。弟の準一の顔を見に来てほしい。
これは王室の決まりだからどうしようもできないんだ」
「はい、母上。毎日伺います」
第3王后尾崎豪も長男翔太から挨拶を受けていた。
「母上、これから僕は母上と別れて暮らすことになります。
短い間でしたが、母上の愛情は忘れません」
「翔太、お前は父上の跡継ぎ候補であることを忘れてはいけません。
プライドを持って生きていくんだぞ」
「でも母上、第1王后様の長男、海斗がいます。
僕は、海斗をお支えする役目があると父上に言われています」
「いや翔太、それは違うぞ。
お前の方が王に相応しいと判断されれば、翔太が王座に就くことも不可能ではない。
精進しなさい。分かりましたか?」
「は、はい、母上」
中井勝彦第5王后の長男、幸太はタチだったが、甘えん坊であった。
「母上、僕は母上と別れるのは嫌です」
と言って泣いていた。
勝彦にとっては、幸太は長男と言うより弟のような感覚だった。
「これからも毎日俺の所に来ればいい。
幸太は、海斗様をお支えする役目を果たさなければいけない。
少しずつでいいから大人になってくれ、な?幸太」
そう言って勝彦は幸太を膝の上に座らせて慰めた。
第2王后和田伸彦の長男、洋央紀と第4王后上村克司の長男、優也は受けだったため、引き続き母と一緒に暮らすことが許されていた。
実際、幸之介王の跡継ぎが誰になるかは国民の関心事でもあった。
しかし、これは王室の問題であるため、国会で議論されることはなかった。
ただ、議員からは
「いつ頃、お世継ぎを決定するのか」
と言う疑問が王室に奏上されていた。
王室内でも頭の痛いことであった。何しろ前例がないのである。
冥王星の過去の王朝では第1王后の産んだ子から世子を選ぶと言うこともあったし、それに縛られない王朝もあった。
チタニア王朝は、まだ成立して日が浅く、幸之介は唯一の後継者であったため混乱はなかったが、今回は中井勝彦の第2子も含めて4人の候補者の中から選ばなければならないのが現実だった。
幸之介王だけでなく西山準大后にも頭の痛い問題であった。
西山準大后が幸之介に聞いた。
「主上は、いつ頃、後継者をお決めになるつもりですか?」
「母上、実は俺も、どうして良いか分からないのです。
どうしたら良いとお考えですか?」
「幸之介、俺は幸之介の考えを聞いているんだ」
西山準大后は古野義人第1王后を呼んだ。
「義人、お前は幸之介王の後継者を誰にすべきと考えているか?」
「大后様、俺はチタニアに来て、まだ1年も経っていません。
そのような大それたことを言えるはずがありません」
「いや、第1王后の考えを聞きたいだけだ。決定するのは主上だ」
「俺が地球で王様に初めてお会いしたのが、ちょうど1年前でした。
王様は20歳になられたばかりでしたが、しっかりしておられました。
俺たちの子供も20歳になったときに、それぞれの度量を確かめてお選びになるのが良いと思います。
それがチタニアの繁栄に繋がると思います。
世継ぎの発表は10年後と、取りあえず発表するのはいかがでしょうか?
そうすれば世間の噂も落ち着くのではと思います。
生意気を申し上げました。お許しください」
「さすが義人だな。一理ある。
義人は、自分の息子が王にならなくても構わないのか?」
「はい。力量のあるものがチタニアを引っ張っていくべきだと考えます。
それに、王子は皆、王様の子供でございます、大后様」
「ははは。幸之介より、義人の方がしっかりしているな」
「滅相もございません」
西山準大后は第3王后尾崎豪も呼んで意見を聞いていた。
「豪は、幸之介王の跡継ぎについて、どのように決定したらいいと考えているか?」
尾崎豪は
「それは大后様と王様がお決めになることです」
「いや、最終的にはそうだが、俺は豪の意見を聞いているだけだ。
義人は今決めず、10年後、世子候補の4人の中から決めてはどうかと言う意見だった」
「恐れ入りますが、それでは国民が納得しないのではと危惧します。
10年間は長過ぎると思います。
毎年、成長に合わせて見直すと言うことを条件に、取りあえず第1王后様の長男、海斗様を世子に決定した方が国民も落ち着くのではないでしょうか?」
「これは意外だな、豪。
しかし、1回決めたものを変えると言うのは、余程のことがない限り難しいぞ。
豪はそれでも良いのか?」
「そこまで深くは考えていませんでした。
浅はかなことを申しました。お許しください」
西山準大后の元から自分の部屋に戻った尾崎はフッっと不敵な笑みを浮かべた。
「これで大后様の俺への警戒が弱くなる」
結局、西山準大后は国会に対して、
「今、世継ぎを発表するのは時期尚早である。
国民の気持ちは有難く思うが、しばらく、その話題は避けてほしい」
と書簡を出した。
結果的には、早期に世継ぎを決めなかったことも、後のチタニア大乱の原因の一つになったと言うことは、この時は誰も思いもしなかった。
長男たちは、3ヵ月強の間に人間で言うと10~11歳くらいに成長していた。
第1王后古野義人の長男、海斗もお別れの挨拶をしていた。
「母上、僕はまだ母上と離れたくないです」
「海斗、それは母も同じだ。
まだ生まれて3か月とちょっとなのに、こんなに大きくなって。
でも、海斗が俺の子であることに変わりはない。
毎日、ここに遊びに来ると良い。弟の準一の顔を見に来てほしい。
これは王室の決まりだからどうしようもできないんだ」
「はい、母上。毎日伺います」
第3王后尾崎豪も長男翔太から挨拶を受けていた。
「母上、これから僕は母上と別れて暮らすことになります。
短い間でしたが、母上の愛情は忘れません」
「翔太、お前は父上の跡継ぎ候補であることを忘れてはいけません。
プライドを持って生きていくんだぞ」
「でも母上、第1王后様の長男、海斗がいます。
僕は、海斗をお支えする役目があると父上に言われています」
「いや翔太、それは違うぞ。
お前の方が王に相応しいと判断されれば、翔太が王座に就くことも不可能ではない。
精進しなさい。分かりましたか?」
「は、はい、母上」
中井勝彦第5王后の長男、幸太はタチだったが、甘えん坊であった。
「母上、僕は母上と別れるのは嫌です」
と言って泣いていた。
勝彦にとっては、幸太は長男と言うより弟のような感覚だった。
「これからも毎日俺の所に来ればいい。
幸太は、海斗様をお支えする役目を果たさなければいけない。
少しずつでいいから大人になってくれ、な?幸太」
そう言って勝彦は幸太を膝の上に座らせて慰めた。
第2王后和田伸彦の長男、洋央紀と第4王后上村克司の長男、優也は受けだったため、引き続き母と一緒に暮らすことが許されていた。
実際、幸之介王の跡継ぎが誰になるかは国民の関心事でもあった。
しかし、これは王室の問題であるため、国会で議論されることはなかった。
ただ、議員からは
「いつ頃、お世継ぎを決定するのか」
と言う疑問が王室に奏上されていた。
王室内でも頭の痛いことであった。何しろ前例がないのである。
冥王星の過去の王朝では第1王后の産んだ子から世子を選ぶと言うこともあったし、それに縛られない王朝もあった。
チタニア王朝は、まだ成立して日が浅く、幸之介は唯一の後継者であったため混乱はなかったが、今回は中井勝彦の第2子も含めて4人の候補者の中から選ばなければならないのが現実だった。
幸之介王だけでなく西山準大后にも頭の痛い問題であった。
西山準大后が幸之介に聞いた。
「主上は、いつ頃、後継者をお決めになるつもりですか?」
「母上、実は俺も、どうして良いか分からないのです。
どうしたら良いとお考えですか?」
「幸之介、俺は幸之介の考えを聞いているんだ」
西山準大后は古野義人第1王后を呼んだ。
「義人、お前は幸之介王の後継者を誰にすべきと考えているか?」
「大后様、俺はチタニアに来て、まだ1年も経っていません。
そのような大それたことを言えるはずがありません」
「いや、第1王后の考えを聞きたいだけだ。決定するのは主上だ」
「俺が地球で王様に初めてお会いしたのが、ちょうど1年前でした。
王様は20歳になられたばかりでしたが、しっかりしておられました。
俺たちの子供も20歳になったときに、それぞれの度量を確かめてお選びになるのが良いと思います。
それがチタニアの繁栄に繋がると思います。
世継ぎの発表は10年後と、取りあえず発表するのはいかがでしょうか?
そうすれば世間の噂も落ち着くのではと思います。
生意気を申し上げました。お許しください」
「さすが義人だな。一理ある。
義人は、自分の息子が王にならなくても構わないのか?」
「はい。力量のあるものがチタニアを引っ張っていくべきだと考えます。
それに、王子は皆、王様の子供でございます、大后様」
「ははは。幸之介より、義人の方がしっかりしているな」
「滅相もございません」
西山準大后は第3王后尾崎豪も呼んで意見を聞いていた。
「豪は、幸之介王の跡継ぎについて、どのように決定したらいいと考えているか?」
尾崎豪は
「それは大后様と王様がお決めになることです」
「いや、最終的にはそうだが、俺は豪の意見を聞いているだけだ。
義人は今決めず、10年後、世子候補の4人の中から決めてはどうかと言う意見だった」
「恐れ入りますが、それでは国民が納得しないのではと危惧します。
10年間は長過ぎると思います。
毎年、成長に合わせて見直すと言うことを条件に、取りあえず第1王后様の長男、海斗様を世子に決定した方が国民も落ち着くのではないでしょうか?」
「これは意外だな、豪。
しかし、1回決めたものを変えると言うのは、余程のことがない限り難しいぞ。
豪はそれでも良いのか?」
「そこまで深くは考えていませんでした。
浅はかなことを申しました。お許しください」
西山準大后の元から自分の部屋に戻った尾崎はフッっと不敵な笑みを浮かべた。
「これで大后様の俺への警戒が弱くなる」
結局、西山準大后は国会に対して、
「今、世継ぎを発表するのは時期尚早である。
国民の気持ちは有難く思うが、しばらく、その話題は避けてほしい」
と書簡を出した。
結果的には、早期に世継ぎを決めなかったことも、後のチタニア大乱の原因の一つになったと言うことは、この時は誰も思いもしなかった。
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