断罪された挙句に執着系騎士様と支配系教皇様に目をつけられて人生諸々詰んでる悪役令嬢とは私の事です。

甘寧

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episode.20

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 ベルベットは窓際で日が落ち暗くなった外を気にするように眺めていた。

「どうしたんですか?そんなに外を気にして」
「あの女が来るの明日でしょ?今から気にしてどうするの?」

 夕食の片付けをしながらネリーとリアムが声を掛けてきたが、心配してるのは聖女じゃないと口が裂けても言えない。
 ベルベットが気にしているのは昼間に会ったジェフリーの事。夜待っているとは言ったが、時間を指定されていないことに気が付いた。

(まあ、都合がついたらでいいって言ってたしな……)

 それに、こんな時間まで待っているはずないだろう。仮にも団長という忙しい立場の人間だし、相手は人間嫌いのジェフリーだ。待っているはずがない。

 半ば無理やりに結論付けるとベルベットはネリーに促されるまま湯あみを済ませ、早々にベッドに入った。

 ベッドに入ってどれぐらいの時間が経っただろうか……

「寝れない!!!!」

 やはりジェフリーの事が気にかかって眠れないでいた。リアムに知られたら「お人よしも大概にしなよ」と文句を言われている所だろう。

(とはいえ、このままじゃ寝れない)

 意を決したベルベットは息を殺しネリーとリアムが寝ていることを確認すると、薄手のショールを手に部屋を出た。
 向かったのは、ジェフリーと約束していた広場の噴水。いないのならばそれでいい。

(これは安眠の為の確認作業だ)

 そう自分に言い聞かせた。

 息を切らし広場に到着したベルベットが目にしたのは、風に靡く銀髪が月明かりに照らされ、まるでこの世の者ではないのではないかと疑うほど美しく妖艶なジェフリーの姿だった。
 そのあまりの美しさにベルベットはその場に立ち竦んだまま、目を奪われていた。

「ああ、来てくれたのか」

 視線に気づいたジェフリーが声を掛けてくれたおかげで我に返ったベルベットが慌てて傍に駆け寄った。

「こんな時間まで何してるんですか!?」
「君を待っていたのだが?」

 その応えに呆気にとられた。

「あのですねぇ、私が来なかったらって考えなかったんですか?」
「?来てくれたじゃないか」
「いや、あのね、はぁぁぁ~……」

 噛み合わない会話には思わず溜息がでる。
 もしかしてこの人、私が来るまで待ってるつもりだったの!?正気の沙汰じゃないわよ!!

 いくら暖かい気候の地域とはいえ夜は冷える。その証拠にジェフリーは耳まで真っ赤にしていて、長い間この場にいたということが分かる。

 ベルベッドは持ってきたショールをジェフリーの顔にかけた。

「……貴方は馬鹿何ですか?こんなに冷たくして……風邪でも引いたら他の人にも迷惑がかかるんですよ!?」
「ほお?心配してくれるのか?」
「心配じゃなくて呆れているんです!!」

 怒鳴りつけるように言うと、隣にドカッと座った。

「それで?私に何か用があったからこんな時間まで待っていたのでは?」
「ああ……」

 ベルベッドが訊ねると、ジェフリーは少し話しずらそうにしながらも口を開いた。

「君があの家を出た理由は俺が原因なのか?」
「………………え?」
「いや、あの男に言われてな……もしそうならば悪い事をした」

 そういうなり深々と頭を下げられた。

 確かに引越す要因になったのは間違いないが、この人一人だけの原因では無いし、別に謝って欲しい訳でもない。

「頭を上げて下さい。別に引越したのは貴方の責任じゃありませんよ。ただちょっと……人目の付かない場所に行きたかった?みたいな感じです」

 苦し紛れの言い方だが、間違った事は言っていない。
 ジェフリーはベルベッドの言葉を聞いて、少し安堵したように「そうか」と呟いていた。

「と、ところで、団長様は何故こちらに?」

 まあ、答えを聞かなくても分かってはいたが、流石に会ってすぐ解散では些か申し訳ない気がしたし、この人と何を話していいのか分からないのでとりあえず当たり障りない事を聞いてみた次第だ。

「ああ、聖女の護衛としてやって来たのだ。本来は明日一緒にこの国に入る予定だったのだが、俺は現地の視察を兼ねて前日入りしている」
「へぇ~、そうなんですね」

 (話が続かない……)

 会話が成立して完結までしてしまった今、次の話題が見当たらない。
 夜の静けさがいつもより更に深く感じる……

 こう言ってはなんだが、元よりあまり会話上手という訳でもないし、相手は人嫌いで有名な人物。相手に話題を求めるのは絶望的と言える状況に、ベルベッドは頭を巡らせネタを探した。

 最近の国政についてとか?それとも騎士になった理由は?──ってお見合いか!!

 脳内で自分にツッコミを入れた所で

「クッシュン!!」

 派手にくしゃみをかましてしまった。

 慌てて出てきたとは言え、薄手のショール一枚では夜風を防ぐには物足りなかった様だ。

 冷える体を暖める様に摩っていると、パサッと大きな上着が肩から掛けられた。

「すまない。配慮が足りなかった」
「え……いや、これだと団長様が」
「私は大丈夫だ。君が風邪ひいては大変だからな」

 そう言いながらジェフリーが微笑んだ。初めて向けられた柔らかな笑顔の破壊力は抜群で、世の女性が見たら卒倒ものだろう。
 それと同時に、ベルベッドはゲーム内で優しく愛を囁くジェフリーを思い出し、顔を真っ赤に染めた。

「どうした?顔が赤いが、もしや熱があるのか!?」
「いえ、大丈夫、大丈夫です!!」
「そうか?それならいいが……」
「あ、あの、団長様が風邪をひかれてしまっては大変なので、お返し致します」

 ベルベッドが上着を脱ごうとすると、ジェフリーは睨みつけるようにしてその手を掴んだ。

「俺はそんなにヤワに見えるのか?俺からしたら貴方の方が何十倍も華奢だが?」

 ──違う、そうじゃない。

 上着を貸してくれた事は素直に嬉しい。だが、この流れは間違いなく上着は持ち帰る羽目になってしまう。そうなった場合、ネリーとリアムに問い詰められた挙句、説教と言うなの拷問が待ち受けている。更にはこれを返す為に再びこの人に会わないといけなくなる。それを避けたいだけなのだ。

 本当の事を言えないもどかしさと自分の口下手がつくづく嫌になる。

 そんな時、知った声が耳に聞こえた。

「悪い子だねベルは。こんな遅くに男と密会?」
「り、リアム……さん?」

 顔は笑っているが目が完全に怒ってるリアムがそこにはいた。
 リアムはベルベッドの肩にかけられた上着を掴むと、ジェフリーに突き返した。

「ベルが世話になったみたいだけど、礼は言わないよ。こんな時間に女の子を呼び出す男なんて碌なもんじゃないからね」
「……お前は、彼女の何なんだ?」
「さあね。教える義理はない。けど、少なからず君らより頼りにされている存在とだけ言っとくよ」

 リアムはそれだけ言うと、ベルベッドを抱えて走り去って行った。








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