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疑いと不機嫌
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バタバタと慌ただしく走る足音が聞こえる。
「何事ですか!?」
悲鳴が上がったのはカルラの部屋。私達も慌ててカルラの部屋へと急いだ。
既に人集りが出来ていて、他の妃候補らの姿もある。
部屋に入ってすぐに目にしたのは、ぐったりとしたままライに抱かれるカルラの姿。その顔には生気がなく、息も荒い。
「ディロンはまだか!?」
「はいはい、ここにおりますよ」
扉の前に出来た人集りを掻き分けて、姿を現したのはフローリアの指南役で医官であるディロン・ゴーガン。その後ろにはフローリアもいる。
カルラはお茶の時間だったらしく、テーブルの上には菓子とお茶の用意がされていた。悲鳴をあげたのは、側に控えていた給仕の侍女のもの。
「どうだ?」
「命に別状はありません」
「そうか」
ようやく険しかった顔が解れ、大きく息を吐いた。
「一体何があったんです?」
様子を見てグィードがライに声をかけると、ライは「あぁ」と苦々しく口を開いた。
「そこにある菓子を口にした瞬間倒れたんだ」
「自分が傍にいたというのに……クソッ」と悔しそうに顔を歪めていた。
テーブルにはお茶の用意がされており、問題の菓子もそこに置いてあった。可愛いリボンの付いたクッキーの袋が……
「これは、アネット嬢の?」
見間違えるはずない。だって、今まさに手に持っている物と同じものがテーブルの上に置かれているんだもの。
グィードが指摘すると、その場にいた者の視線が一気にアネットへと向けられた。
「た、確かにそのクッキーはわたくしが贈ったものですが、わたくしは知りません!」
「わたくしじゃない!」と自分が疑われると知るや否や誤解を解こうと必死になっている。
必死になればなるだけ、疑いの目が強まる。こういう時、人と言うものは疑心暗鬼に陥り、真実が見えなくなってしまう。
「これは、中毒症状ですね。口にした事で即効性が高まったのでしょう」
追い討ちをかけるようなディロンの言葉に「やっぱり」などと話す声が聞こえてくる。
アネットは襲いかかる視線に「違う、違う」と何度も呟きながらその場にしゃがみこみ、顔を覆って泣き崩れている。
「アネット嬢。すまないが話を聞かせてもらえるか?」
団長が声を掛けてしまえば、疑いが一層深まると言うもの。ライとて、本意では無いかもしれないが、騎士団長の役目として仕方の無いこと。
だけど、私はアネットがそんな事する様には思えない。
「ロゼさん?」とグィードが声をかけるが無視して、お茶が用意されているテーブルの前に立った。全員が見守る中、おもむろにクッキーを掴み取り、それをそのまま口の中へ……
「なっ!」
「何しているんです!?」
ライとグィードの声を皮切りに、ザワっとその場が騒がしくなる。
「吐き出しなさい!」
グィードは焦った様子でロゼの背中を激しく殴打するが、ゴクッと大きく喉が鳴った。
サーとグィードの顔が青くなり、口の中に手を入れられそうになった所で「待って待って!」と声を上げた。
「ちょっと落ち着いて下さいよ!見て!なんともないでしょ!?」
ロゼはその場でジャンプしたりして、自分の体に何も無いことを証明して見せる。
「……本当になんともないんですね?」
「ええ、大変美味しゅうございました。これでアネットさんの疑いは晴れましたよね?」
疑いを晴らす為に一番手っ取り早い方法を取ったが、思いのほか周りが引いていることに気が付き、やっちまった感は拭えない。
「それじゃあ、一体なにが……」
ライの視線の先には、まだ湯気の残るお茶が入ったカップがある。クッキーの他に口にしたものとなれば……という事だろうな。
「給仕の者を捕らえよ!」
ライの一言で給仕した侍女が騎士に囲まれ連行されて行く。「私は知りません!」とアネットと同じこと言うが、聞き入れる者はそこにはおらず、悲鳴のような叫び声だけが響き渡っている。
「ディロン。すまないが彼女を頼んだ」
「承知しました」
未だ意識の戻らないカルラを名残惜しそうに見つめるが、自分の仕事を全うする為に部屋を出て行った。
いつの間にか人集りもなくなり、残っているのは疑いをかけられたアネットだけ。
「ロゼさん……本当にありがとう……」
礼を言う為に残っていたらしく、手を握りしめ涙ながらに言われた。あの場で疑わなかったのは私だけ……それが如何に心細く不安であったか。その心情は計り知れない。
「良かったです。アネットさんの疑いが晴れて」
そう伝えると、ようやくアネットの表情が柔らかくなった。
「──何にも良くありませんよ」
背後から、禍々しいオーラを感じる。目の前のアネットの表情を見れば一目瞭然。これは、振り向いたら殺されるヤツだ。
「貴女という人は……自分が何をしたか分かってるんですか!」
「いたたたたたたた!!!!」
頭を全力で掴み上げられ、握り潰されるかと本気で思った。
「無事だったんだからいいじゃない!」
痛む頭を抑えながら結果オーライだと訴えるが、明らかにその場の空気が変わり、アネットの顔色も変わっていく。
「ほお?無事だから良かったと?そう、仰るんですね?」
「そ、そうだけど……」
なんだろう、この背中に氷山を背負った様な感じ……息が止まりそう。
「……分かりました」
それだけ言うと、振り返りもせずに部屋を後にして行った。
「何事ですか!?」
悲鳴が上がったのはカルラの部屋。私達も慌ててカルラの部屋へと急いだ。
既に人集りが出来ていて、他の妃候補らの姿もある。
部屋に入ってすぐに目にしたのは、ぐったりとしたままライに抱かれるカルラの姿。その顔には生気がなく、息も荒い。
「ディロンはまだか!?」
「はいはい、ここにおりますよ」
扉の前に出来た人集りを掻き分けて、姿を現したのはフローリアの指南役で医官であるディロン・ゴーガン。その後ろにはフローリアもいる。
カルラはお茶の時間だったらしく、テーブルの上には菓子とお茶の用意がされていた。悲鳴をあげたのは、側に控えていた給仕の侍女のもの。
「どうだ?」
「命に別状はありません」
「そうか」
ようやく険しかった顔が解れ、大きく息を吐いた。
「一体何があったんです?」
様子を見てグィードがライに声をかけると、ライは「あぁ」と苦々しく口を開いた。
「そこにある菓子を口にした瞬間倒れたんだ」
「自分が傍にいたというのに……クソッ」と悔しそうに顔を歪めていた。
テーブルにはお茶の用意がされており、問題の菓子もそこに置いてあった。可愛いリボンの付いたクッキーの袋が……
「これは、アネット嬢の?」
見間違えるはずない。だって、今まさに手に持っている物と同じものがテーブルの上に置かれているんだもの。
グィードが指摘すると、その場にいた者の視線が一気にアネットへと向けられた。
「た、確かにそのクッキーはわたくしが贈ったものですが、わたくしは知りません!」
「わたくしじゃない!」と自分が疑われると知るや否や誤解を解こうと必死になっている。
必死になればなるだけ、疑いの目が強まる。こういう時、人と言うものは疑心暗鬼に陥り、真実が見えなくなってしまう。
「これは、中毒症状ですね。口にした事で即効性が高まったのでしょう」
追い討ちをかけるようなディロンの言葉に「やっぱり」などと話す声が聞こえてくる。
アネットは襲いかかる視線に「違う、違う」と何度も呟きながらその場にしゃがみこみ、顔を覆って泣き崩れている。
「アネット嬢。すまないが話を聞かせてもらえるか?」
団長が声を掛けてしまえば、疑いが一層深まると言うもの。ライとて、本意では無いかもしれないが、騎士団長の役目として仕方の無いこと。
だけど、私はアネットがそんな事する様には思えない。
「ロゼさん?」とグィードが声をかけるが無視して、お茶が用意されているテーブルの前に立った。全員が見守る中、おもむろにクッキーを掴み取り、それをそのまま口の中へ……
「なっ!」
「何しているんです!?」
ライとグィードの声を皮切りに、ザワっとその場が騒がしくなる。
「吐き出しなさい!」
グィードは焦った様子でロゼの背中を激しく殴打するが、ゴクッと大きく喉が鳴った。
サーとグィードの顔が青くなり、口の中に手を入れられそうになった所で「待って待って!」と声を上げた。
「ちょっと落ち着いて下さいよ!見て!なんともないでしょ!?」
ロゼはその場でジャンプしたりして、自分の体に何も無いことを証明して見せる。
「……本当になんともないんですね?」
「ええ、大変美味しゅうございました。これでアネットさんの疑いは晴れましたよね?」
疑いを晴らす為に一番手っ取り早い方法を取ったが、思いのほか周りが引いていることに気が付き、やっちまった感は拭えない。
「それじゃあ、一体なにが……」
ライの視線の先には、まだ湯気の残るお茶が入ったカップがある。クッキーの他に口にしたものとなれば……という事だろうな。
「給仕の者を捕らえよ!」
ライの一言で給仕した侍女が騎士に囲まれ連行されて行く。「私は知りません!」とアネットと同じこと言うが、聞き入れる者はそこにはおらず、悲鳴のような叫び声だけが響き渡っている。
「ディロン。すまないが彼女を頼んだ」
「承知しました」
未だ意識の戻らないカルラを名残惜しそうに見つめるが、自分の仕事を全うする為に部屋を出て行った。
いつの間にか人集りもなくなり、残っているのは疑いをかけられたアネットだけ。
「ロゼさん……本当にありがとう……」
礼を言う為に残っていたらしく、手を握りしめ涙ながらに言われた。あの場で疑わなかったのは私だけ……それが如何に心細く不安であったか。その心情は計り知れない。
「良かったです。アネットさんの疑いが晴れて」
そう伝えると、ようやくアネットの表情が柔らかくなった。
「──何にも良くありませんよ」
背後から、禍々しいオーラを感じる。目の前のアネットの表情を見れば一目瞭然。これは、振り向いたら殺されるヤツだ。
「貴女という人は……自分が何をしたか分かってるんですか!」
「いたたたたたたた!!!!」
頭を全力で掴み上げられ、握り潰されるかと本気で思った。
「無事だったんだからいいじゃない!」
痛む頭を抑えながら結果オーライだと訴えるが、明らかにその場の空気が変わり、アネットの顔色も変わっていく。
「ほお?無事だから良かったと?そう、仰るんですね?」
「そ、そうだけど……」
なんだろう、この背中に氷山を背負った様な感じ……息が止まりそう。
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それだけ言うと、振り返りもせずに部屋を後にして行った。
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