16 / 33
第16話
しおりを挟む
シュアが言いかけた時、外から大きな爆発音が聞こえた。
ドカンッ!!!
「頭!!奴らだ!!」
「──ちっ!!思ったより早いな」
「えっ?はっ?なになに!?カチコミ!?」
さっきまでの雰囲気は何処へやら、みんな一斉に殺気立ち外へと駆けていった。
私は何がなんやらで、その場から動くことが出来ない。
「お前は危ないからちょっと待ってな。すぐ終わらせてくるからな」
そう言ってシュアも剣を手にして外へと向かった。
シーーーンと静まり返った洞窟の中には私だけが取り残された。
外からは怒号、悲鳴と共に剣がぶつかり合う音が響きわっている。
(一体何が起こってるの!?)
好奇心旺盛な私は恐怖心よりも好奇心が勝った。
そろそろと洞窟の入口から顔を出すと、騎士達とシュア達が戦っているのが見えた。
騎士相手に無謀だろ!!と思ったが、何と言うことでしょう……シュア……めっちゃ強い。
いや、マジで……
それに負けず劣らず子分達もそこそこ強い。
(はぁ~、初めて戦闘シーン見たけど、かっこいいわ……)
男同士が剣をぶつかり合わせて真剣勝負。中々見れるもんじゃない。
こんなの、ざらにあったらたまったもんじゃないけどね。
(これが吊り橋効果ってやつ?)
こんなの見せられたら、どんな男でもかっこよく見えてしまうよねぇ。
……ってそんな事言ってる場合じゃないわ。
騎士が出てくるなんて……一体シュアは何をしたの?
ただの盗賊なら騎士じゃなくて衛兵で十分事足りる。
「アルエ!!!!」
シュアの声にハッとした。
その瞬間、私の頬を剣が掠めた。
(あっっっっっぶねぇぇぇぇ……)
壁に突き刺さっている剣を見てサァーと全身の血が引いたのが分かった。
「馬鹿野郎!!!出てくるなっつっただろ!?」
「ご、ごめんなさい!!!」
シュアに怒鳴られ、こりゃ私がいたら邪魔だと判断し洞窟の中に戻ろうとした時、この場にいるはずのない聞き覚えのある声が聞こえた。
「──アルエ……だと?」
私はその声の主を分かってる。
でも、顔を見れない。顔を見ちゃったらこの現実を受け入れる事になるから……
「何故お前がここにいる!?アルエ!!」
いつもの優しい声じゃなく、明らかに怒っている声に私の肩が震えた。
(あぁ~あ、もうヤダ。確定じゃん)
リリアンの攻略対象者である騎士団長。
その正体が鍛冶屋なんて嘘ついて騙していた男、ダンさんだって……
私はゆっくり振り返りその姿を捉えた。
リリアンの特徴ノートの通り、いつもは下ろしている黒髪は後ろに流してあり、いつもより顔がはっきり見える。
そして、その装いは団服に勲章がいくつも付いていて、言わなくても団長だと言うことが見て取れる。
(くそ……団服かっこいいなぁ……)
「アルエ。色々と話すことがあるが、今はそんな状況では無い。とりあえず、私の元へ来なさい」
ダンさんは、手を差し出し私に来るよう言った。
……ははっ……団長っぽいや……
いつもは『俺』なのに『私』だって……可笑しいよダンさん。
なんでこんなに泣きたくなるの?
ダンさんに嘘つかれていたから?リリアンの攻略対象者だってはっきりしたから?
──どちらにせよ、今はダンさんの言うことは聞きたくない。
私はすぐ側にいたシュアの腕に抱きついた。
その行動に驚いたのがダンさん。
「アルエ!!?」
驚いたのはダンさんだけじゃなくてシュアも同じ。
「お、おい、どうした!?」
「……シュアさん。私を攫ってください」
「はぁぁぁ!?」
いや、何故驚く?最初に攫ったのはそちらですけど?
「……いいですか?私がいればあそこのおっさんは手出しできません。これは好機です」
「お、おぅ……」
シュアさんの耳元で私の使い道の良さをここぞとばかりに囁いた。
シュアさんは戸惑ってはいたが、このままでは埒が明かないと思ったのか、私の策に乗ってきた。
「お、おい!!コイツの命が欲しければ手を引け!!」
いいぞシュアさん!!悪役っぽい!!
シュアさんは私の首に剣をかざしてダンさん達騎士を脅した。
それを見た時のダンさんの恐ろしい顔つき。シュアさんも一瞬たじろいだ。
「アルエ……もう一度言うぞ。そいつの腕を離してこちらへ来い」
「嫌よ」
「アルエ!!!!!!」
空気がビリビリと震えた気がした。
周りの人達はもう私達に釘付けだ。
「そんなに怒鳴ったって嘘つきなダンさんの所になんて行かない!!」
「……お前、今そんな事言ってる場合じゃ……」
「そんな事!?ダンさんには大したことじゃないかもしれないけどね、平民の私からしたら大した事なのよ!!」
騎士団長だと分かってしまった今、いつも通りに振る舞える事は出来ない。
「早くこの場から消えて!!本当に死ぬわよ!!」
私はシュアさんから剣を奪い取り、自分で自分の首に剣を突き立てた。
自分では距離感が分からず、剣が肌に当たってしまったらしく、ツーと一筋の血が流れた。
それを見たダンさんは諦めたのか、騎士に命令した。
「……一旦引く!!全員撤退だ!!」
そして、去り際──……
「……騙していたのは悪かった。だが、この状況は別だ。次はお前の首根っこ掴まえてでも連れ帰るからな」
そう私を睨みつけながら、捨て台詞を吐いて森を出て行った。
──……こっっえぇぇぇ!!!
ドカンッ!!!
「頭!!奴らだ!!」
「──ちっ!!思ったより早いな」
「えっ?はっ?なになに!?カチコミ!?」
さっきまでの雰囲気は何処へやら、みんな一斉に殺気立ち外へと駆けていった。
私は何がなんやらで、その場から動くことが出来ない。
「お前は危ないからちょっと待ってな。すぐ終わらせてくるからな」
そう言ってシュアも剣を手にして外へと向かった。
シーーーンと静まり返った洞窟の中には私だけが取り残された。
外からは怒号、悲鳴と共に剣がぶつかり合う音が響きわっている。
(一体何が起こってるの!?)
好奇心旺盛な私は恐怖心よりも好奇心が勝った。
そろそろと洞窟の入口から顔を出すと、騎士達とシュア達が戦っているのが見えた。
騎士相手に無謀だろ!!と思ったが、何と言うことでしょう……シュア……めっちゃ強い。
いや、マジで……
それに負けず劣らず子分達もそこそこ強い。
(はぁ~、初めて戦闘シーン見たけど、かっこいいわ……)
男同士が剣をぶつかり合わせて真剣勝負。中々見れるもんじゃない。
こんなの、ざらにあったらたまったもんじゃないけどね。
(これが吊り橋効果ってやつ?)
こんなの見せられたら、どんな男でもかっこよく見えてしまうよねぇ。
……ってそんな事言ってる場合じゃないわ。
騎士が出てくるなんて……一体シュアは何をしたの?
ただの盗賊なら騎士じゃなくて衛兵で十分事足りる。
「アルエ!!!!」
シュアの声にハッとした。
その瞬間、私の頬を剣が掠めた。
(あっっっっっぶねぇぇぇぇ……)
壁に突き刺さっている剣を見てサァーと全身の血が引いたのが分かった。
「馬鹿野郎!!!出てくるなっつっただろ!?」
「ご、ごめんなさい!!!」
シュアに怒鳴られ、こりゃ私がいたら邪魔だと判断し洞窟の中に戻ろうとした時、この場にいるはずのない聞き覚えのある声が聞こえた。
「──アルエ……だと?」
私はその声の主を分かってる。
でも、顔を見れない。顔を見ちゃったらこの現実を受け入れる事になるから……
「何故お前がここにいる!?アルエ!!」
いつもの優しい声じゃなく、明らかに怒っている声に私の肩が震えた。
(あぁ~あ、もうヤダ。確定じゃん)
リリアンの攻略対象者である騎士団長。
その正体が鍛冶屋なんて嘘ついて騙していた男、ダンさんだって……
私はゆっくり振り返りその姿を捉えた。
リリアンの特徴ノートの通り、いつもは下ろしている黒髪は後ろに流してあり、いつもより顔がはっきり見える。
そして、その装いは団服に勲章がいくつも付いていて、言わなくても団長だと言うことが見て取れる。
(くそ……団服かっこいいなぁ……)
「アルエ。色々と話すことがあるが、今はそんな状況では無い。とりあえず、私の元へ来なさい」
ダンさんは、手を差し出し私に来るよう言った。
……ははっ……団長っぽいや……
いつもは『俺』なのに『私』だって……可笑しいよダンさん。
なんでこんなに泣きたくなるの?
ダンさんに嘘つかれていたから?リリアンの攻略対象者だってはっきりしたから?
──どちらにせよ、今はダンさんの言うことは聞きたくない。
私はすぐ側にいたシュアの腕に抱きついた。
その行動に驚いたのがダンさん。
「アルエ!!?」
驚いたのはダンさんだけじゃなくてシュアも同じ。
「お、おい、どうした!?」
「……シュアさん。私を攫ってください」
「はぁぁぁ!?」
いや、何故驚く?最初に攫ったのはそちらですけど?
「……いいですか?私がいればあそこのおっさんは手出しできません。これは好機です」
「お、おぅ……」
シュアさんの耳元で私の使い道の良さをここぞとばかりに囁いた。
シュアさんは戸惑ってはいたが、このままでは埒が明かないと思ったのか、私の策に乗ってきた。
「お、おい!!コイツの命が欲しければ手を引け!!」
いいぞシュアさん!!悪役っぽい!!
シュアさんは私の首に剣をかざしてダンさん達騎士を脅した。
それを見た時のダンさんの恐ろしい顔つき。シュアさんも一瞬たじろいだ。
「アルエ……もう一度言うぞ。そいつの腕を離してこちらへ来い」
「嫌よ」
「アルエ!!!!!!」
空気がビリビリと震えた気がした。
周りの人達はもう私達に釘付けだ。
「そんなに怒鳴ったって嘘つきなダンさんの所になんて行かない!!」
「……お前、今そんな事言ってる場合じゃ……」
「そんな事!?ダンさんには大したことじゃないかもしれないけどね、平民の私からしたら大した事なのよ!!」
騎士団長だと分かってしまった今、いつも通りに振る舞える事は出来ない。
「早くこの場から消えて!!本当に死ぬわよ!!」
私はシュアさんから剣を奪い取り、自分で自分の首に剣を突き立てた。
自分では距離感が分からず、剣が肌に当たってしまったらしく、ツーと一筋の血が流れた。
それを見たダンさんは諦めたのか、騎士に命令した。
「……一旦引く!!全員撤退だ!!」
そして、去り際──……
「……騙していたのは悪かった。だが、この状況は別だ。次はお前の首根っこ掴まえてでも連れ帰るからな」
そう私を睨みつけながら、捨て台詞を吐いて森を出て行った。
──……こっっえぇぇぇ!!!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
66
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる