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第19話
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「頭----!!!奴ら来た!!!」
見張り役の人が叫びながら洞窟の中に飛び込んできた。
どうやら、ダンさん率いる騎士達が来たらしい。
「そうか……ちょっくら行ってくっから、ここで嬢ちゃん達は待っててくれよ?」
シュアは剣を手に取り、洞窟を出て行った。
残されたのは私とリリアン二人だけ。
けれど、リリアンは結末を知っているからか、怖がる様子もなくクッションにもたれながら欠伸をしていた。
「緊張感の欠片もない姿ですね」
「あら?結末を知っているのに緊張する必要ある?」
「いや、こういう時こそヒロインらしくする場面じゃないんですか?」
「あぁ~、今回はいいのいいの」
私に手を振りながら遂には寝転がってしまった。
今回はいいとはどういう事だ?
もう既に団長の心を射止めたのか?それとも、そういう出会い方?
私があれこれ考えを巡らせていると、リリアンが「ふふっ」と微笑んだ。
「大丈夫よ。そんなに考え込まなくても」
「何を……」
言っているの?と聞き返そうとした所で「アルエ!!!」と名を呼ばれた。
振り向くとそこにはダンさんが血の着いた剣を手しに立っていた。
その血を見た瞬間、シュアさんの姿が脳裏に浮かんだ。
「シュアさん!!!」
「ちょっ!!アルエ!?」
私はリリアンの制止も聞かず、ダンさんの横を通り過ぎ洞窟の外に出た。
すると、辺りは血の海。さっきまで一緒に笑いあっていた人達が血を流して倒れていた。
(何……これ……)
グラッと目眩がして倒れそうになった所を抱きとめられた。
「──大丈夫か?」
「……ダンさん……」
久しぶりに間近で見るダンさんの顔は、いつもの常連のダンさんじゃなく、騎士団長ダンベルトの顔をしていた。
「シュアさん!!シュアさんは!?」
ダンさんの胸ぐらをつかみ、シュアさんの居場所を問いただした。
すると、ダンさんの顔が曇った。
「人の腕の中で他の男の心配か?」
「何言ってんの!?シュアさんは私の──!!」
ん?私の?何だ?
「……私の、何だ?」
ダンさんが私の肩を掴み、物凄い形相で聞いてきた。
(いやいや、その答え私が聞きたい!!)
しかも、近い!!
ダンさんの顔が近い!!
それも相まって上手い答えが出てこない。
私が黙っていると、更に追い討ちをかけるように「アルエ、私の目を見ろ」なんて言いながら顎を持ち上げられたもんだから、こっちは心臓が口から飛び出そうです!!
むしろ止まる!!心臓止まる!!
これは何でもいいから適当なことを言って逃げ出すしかないと判断した。
「シュ、シュアさんは……あ、あれです……兄!!兄のような方なんです!!」
「……国家転覆を狙ってる奴を兄と呼ぶのか?」
「そうです!!」
正常な判断が出来ないから即答してしまったが、後々考えたらこれ、凄くまずいこと言ってた……
(あれ?これって、反逆罪じゃね?)
国家転覆を企むリーダーを身内だと言っているようなもの。死んだな……
「……まあ、いい。話は後でゆっくり聞く」
そう言うダンさんはまるで獲物を追い詰める獣の様な目をしていた。
そのままダンさんは私を担ぎあげ逃げれない状況にしたが、私はすぐさま足をばたつかせ抗議した。
「ちょっ!!話はまだ終わってない!!シュアさんは!?シュアさんは無事なの!?」
「こら!!暴れるな!!安心しろ、コイツらは全員生きてる!!死んではいない!!」
「へ?」
ダンさんの言葉で倒れてる人達を見ると、血は出ているがみんな意識があり唸っていた。
ダンさん曰く、首謀者を聞き出す為に生かしておかなきゃいけないんだって。
それでも安心した。みんな生きてた。
「お前が呼んでいるシュアと言う男はここのリーダーだろ?そいつだけ逃したがな」
なんと、シュアさんはダンさんの一瞬の隙をつき逃げたようだった。
その言葉にホッとした。シュアさんが生きていた事は勿論、シュアさんなら捕まったみんなを何とかしてくれる。そう思ったから。
「……それはそうと、なんでリリアン嬢までこの場にいたんだ?」
ダンさんの言葉にハッとした。
「あっ!!そうだ!!リリアン!!ダンさん、リリアンを助けてあげて!!」
「は?何から助けるんだ?」
えっ?そりゃ……あれ?
「いや、でも、何でもいいからリリアンの所に行ってあげて!!」
「リリアン嬢にはグレッグが付いている。お前は俺が目を離すと何をしでかすか分からんからな」
あっ、いつものダンさんだ……
そう思うと、なんか嬉しくて顔がニヤけた。
けど、私がダンさんを占領しちゃうとリリアンの攻略が……そう思ってリリアンを見ると、私の心配を他所に、ウットリとしながら副団長に腕を絡ませ身を預けている姿があった。
(おいおいおい!!その人違うよ!!)
──攻略対象者こっち!!
確かに副団長って、貴方も攻略対象者じゃないの?って疑うほど綺麗な顔してるけど……それでいいのか?
まあ、リリアンが良ければいいんだけどさ……
なんか変な感じになっちゃったけど、騎士団長イベントはこうして幕を閉じた。
見張り役の人が叫びながら洞窟の中に飛び込んできた。
どうやら、ダンさん率いる騎士達が来たらしい。
「そうか……ちょっくら行ってくっから、ここで嬢ちゃん達は待っててくれよ?」
シュアは剣を手に取り、洞窟を出て行った。
残されたのは私とリリアン二人だけ。
けれど、リリアンは結末を知っているからか、怖がる様子もなくクッションにもたれながら欠伸をしていた。
「緊張感の欠片もない姿ですね」
「あら?結末を知っているのに緊張する必要ある?」
「いや、こういう時こそヒロインらしくする場面じゃないんですか?」
「あぁ~、今回はいいのいいの」
私に手を振りながら遂には寝転がってしまった。
今回はいいとはどういう事だ?
もう既に団長の心を射止めたのか?それとも、そういう出会い方?
私があれこれ考えを巡らせていると、リリアンが「ふふっ」と微笑んだ。
「大丈夫よ。そんなに考え込まなくても」
「何を……」
言っているの?と聞き返そうとした所で「アルエ!!!」と名を呼ばれた。
振り向くとそこにはダンさんが血の着いた剣を手しに立っていた。
その血を見た瞬間、シュアさんの姿が脳裏に浮かんだ。
「シュアさん!!!」
「ちょっ!!アルエ!?」
私はリリアンの制止も聞かず、ダンさんの横を通り過ぎ洞窟の外に出た。
すると、辺りは血の海。さっきまで一緒に笑いあっていた人達が血を流して倒れていた。
(何……これ……)
グラッと目眩がして倒れそうになった所を抱きとめられた。
「──大丈夫か?」
「……ダンさん……」
久しぶりに間近で見るダンさんの顔は、いつもの常連のダンさんじゃなく、騎士団長ダンベルトの顔をしていた。
「シュアさん!!シュアさんは!?」
ダンさんの胸ぐらをつかみ、シュアさんの居場所を問いただした。
すると、ダンさんの顔が曇った。
「人の腕の中で他の男の心配か?」
「何言ってんの!?シュアさんは私の──!!」
ん?私の?何だ?
「……私の、何だ?」
ダンさんが私の肩を掴み、物凄い形相で聞いてきた。
(いやいや、その答え私が聞きたい!!)
しかも、近い!!
ダンさんの顔が近い!!
それも相まって上手い答えが出てこない。
私が黙っていると、更に追い討ちをかけるように「アルエ、私の目を見ろ」なんて言いながら顎を持ち上げられたもんだから、こっちは心臓が口から飛び出そうです!!
むしろ止まる!!心臓止まる!!
これは何でもいいから適当なことを言って逃げ出すしかないと判断した。
「シュ、シュアさんは……あ、あれです……兄!!兄のような方なんです!!」
「……国家転覆を狙ってる奴を兄と呼ぶのか?」
「そうです!!」
正常な判断が出来ないから即答してしまったが、後々考えたらこれ、凄くまずいこと言ってた……
(あれ?これって、反逆罪じゃね?)
国家転覆を企むリーダーを身内だと言っているようなもの。死んだな……
「……まあ、いい。話は後でゆっくり聞く」
そう言うダンさんはまるで獲物を追い詰める獣の様な目をしていた。
そのままダンさんは私を担ぎあげ逃げれない状況にしたが、私はすぐさま足をばたつかせ抗議した。
「ちょっ!!話はまだ終わってない!!シュアさんは!?シュアさんは無事なの!?」
「こら!!暴れるな!!安心しろ、コイツらは全員生きてる!!死んではいない!!」
「へ?」
ダンさんの言葉で倒れてる人達を見ると、血は出ているがみんな意識があり唸っていた。
ダンさん曰く、首謀者を聞き出す為に生かしておかなきゃいけないんだって。
それでも安心した。みんな生きてた。
「お前が呼んでいるシュアと言う男はここのリーダーだろ?そいつだけ逃したがな」
なんと、シュアさんはダンさんの一瞬の隙をつき逃げたようだった。
その言葉にホッとした。シュアさんが生きていた事は勿論、シュアさんなら捕まったみんなを何とかしてくれる。そう思ったから。
「……それはそうと、なんでリリアン嬢までこの場にいたんだ?」
ダンさんの言葉にハッとした。
「あっ!!そうだ!!リリアン!!ダンさん、リリアンを助けてあげて!!」
「は?何から助けるんだ?」
えっ?そりゃ……あれ?
「いや、でも、何でもいいからリリアンの所に行ってあげて!!」
「リリアン嬢にはグレッグが付いている。お前は俺が目を離すと何をしでかすか分からんからな」
あっ、いつものダンさんだ……
そう思うと、なんか嬉しくて顔がニヤけた。
けど、私がダンさんを占領しちゃうとリリアンの攻略が……そう思ってリリアンを見ると、私の心配を他所に、ウットリとしながら副団長に腕を絡ませ身を預けている姿があった。
(おいおいおい!!その人違うよ!!)
──攻略対象者こっち!!
確かに副団長って、貴方も攻略対象者じゃないの?って疑うほど綺麗な顔してるけど……それでいいのか?
まあ、リリアンが良ければいいんだけどさ……
なんか変な感じになっちゃったけど、騎士団長イベントはこうして幕を閉じた。
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