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第23話
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息を切らしながら詰所に到着した私だったが、目の前の光景を見て愕然とした。
なんと、リリアンは自分の周りに騎士達を囲わせ楽しそうにお喋りしていた。
(……ここは歌舞伎町か?)
「あっ!!来た来た、アルエ--!!!」
「………何してんですか、あんたは………」
私に気づいたリリアンは元気よく手を振りながら私を呼び寄せてきた。
周りの騎士達に「すみません!!すみません!!」と謝りながらリリアンの元へ。
リリアンの隣には副団長のグレッグがいた。
きっとお守り役として付けられたのだろうが、私としてはグレッグの様なちゃんとした人がリリアンの元にいてくれて安心した。
リリアンはグレッグの事が気に入ったらしく、腕を絡ませ離れない。
そんなグレッグは引き攣った笑顔で対応してくれている。
「ほら、リリアン帰りますよ」
「ええ~、まだいいじゃない。折角盛り上がってたのに」
いえ、盛り上がってるのは貴方だけです。
必死にリリアンの腕を掴んで立たせようとするが、一向に動こうとはしない。
思わず「副団長は対象外ですよ!!」と言いそうになったところで、リリアンの脇を抱えて立たせてくれた人がいた。
「ダンさん!!」
そう。騎士団長のダンさん。
「お嬢さん。そろそろお帰りの時間ですよ?」
ダンさんは優しく笑顔でリリアンに話しかけるが、リリアンは浮かない顔。
「……あ~ぁ、お邪魔虫の団長が来たんじゃ仕方ないわね」
リリアンはダンさんをギロッと睨みつけたが、ダンさんは笑顔を崩さない。
(あれ?)
なんだか様子がおかしい。
ダンさんは対象者なんだけど……
正直、複雑な心境。
ここは乙女ゲームの世界なんだ。ヒロインであるリリアンを応援しなければと思う一方、素直に応援できない自分もいる……
「アルエ!!何してんの!?帰るわよ!!」
「あっ!!はい!!」
騎士の方達に「お世話になりました」と頭を下げ、リリアンの後を追った。
◆◆◆
ところ変わって、私の部屋。
何故かリリアンも当然のように私の部屋にいる。
そして、延々と副団長のグレッグの話を聞かされている。
どうやら、今度一緒に町に行く約束を取り付けたらしい。
大方リリアンがゴリ押しして、押しに負けたグレッグが曖昧に返事を返したのを承知したと思っているのだろう。
(……副団長が攻略対象者なのか?)
本当にダンさんが攻略対象者なのか疑問になってきた。
「ちょっとアルエ!!聞いてるの!?」
「聞いてますよ……グレッグさんが可哀想って話ですよね?」
「なんでそうなるのよ!!……それより、あの騎士なによ?」
リリアンが指さしたのは、壁際に姿勢よく立っているジェフリー君。
「あぁ、彼はジェフリー君です」
「何よ、そのペットを紹介するような言い方は……」
「ペットじゃありません。私の監視役です」
「は?」
リリアンは私が何を言っているのか分からないと言った様子。
まぁ、あの場にいなかったリリアンには分からんだろうから、一連の経緯を話してやった。
その間もジェフリー君は微動だにせず壁際に立っていた。素晴らしい騎士精神。
「……という訳で、ジェフリー君がいる訳です」
「まぁ、彼がいる理由は分かったけど、よくあの団長が許したわね」
「ダンさんですか?ダンさんも承知してますよ?」
「ふ~~~ん」
まだ何か言いたそうなリリアンだったが、私はリリアンの話よりも先に聞きたいことがある。
「……あの、リリアン一つ聞きたいことがあるんですが……」
「なによ」
話す前に、チラッとジェフリー君の方を見て、ちょっとの間だけ二人だけにして欲しいとお願いした。
最初は「任務ですので無理です」などと言っていたが、リリアンが「女性の秘め事を知りたいならいてもいいけど?貴方、顔に似合わずそんな趣味があるのね?」などとほくそ笑みがながら言ったのが効いたのか、真っ赤な顔をして外に飛び出していった。
(何を想像したんだ?)
「ふん。チョロいわね」
「……リリアン、あんまりからかわないであげてくださいよ」
腕を組みながら勝ち誇ったようなリリアンにちょっとだけ苦言しておいた。
「では、本題ですが……──今回の事件の黒幕は誰ですか?」
そう私が聞きたかったのはシュアを雇った者が誰なのか。
この話をジェフリー君に聞かれるのはまずいから、この場から退場してもらったのだ。
リリアンはこのゲームを前世で攻略済みだ。ならば、黒幕を知っていて当然だろ。
……そう思っていたのだが……
「…………………………ない」
「は?」
「…………………らないのよ」
「なんて?」
「だから!!知らないって言ってんの!!」
出たよ。困ったら逆切れ。
というか、知らないとは?
このゲームクリアしたんと違うんかい!?
「……言いたいことがあるなら言いなさいよ」
「では、お言葉に甘えて言わせていただきますが、リリアンはこの世界を熟知しているのではないのですか?おかしいですね。そうなると黒幕を知らないなんて事ありますかね?私が聞いている話と違いますけど?」
一息に言い切った私にリリアンはたじろいだが、すぐに持ち直した。
「……結構言うわね。でもね、これだけは言わせて、確かにこの乙女ゲームは前世でやりこんでクリアしたわよ」
「では……」
「黒幕もわかるだろ」と続けようとしたらリリアンが口を挟んできた。
「あんたが言いたいことは分かるわよ。けどね、私は神じゃないのよ。全部を全部知っていると思ったら大間違いよ」
「……ただ単に忘れただけですよね?」
「──んぐっ!!」
忘れたなら忘れたと素直に言えばいいのにと思うが、この人の性格して無理なんだろうな。
しかし、リリアンが分からないんじゃどうしようもないな……
「あっ!!でも、キーマンは覚えてるわよ!!」
「それを早く言ってください!!」
「ふふふふふっ。聞きたい?」
ムカつくほどの笑顔で私に詰め寄ってきた。
今は遊んでいる場合では無い。
早くしないとジェフリー君が痺れを切らして部屋に入ってくるかもしれない。
「…………こんな事言える立場ではないんですが、早く言わないと友達やめますよ?」
この言葉を聞いたリリアンは明らかに焦ったように「分かったわよ!!」と言ってきた。
私は唯一の友達だからな。
「キーマンは、悪役令嬢のエリーザよ」
なんと、リリアンは自分の周りに騎士達を囲わせ楽しそうにお喋りしていた。
(……ここは歌舞伎町か?)
「あっ!!来た来た、アルエ--!!!」
「………何してんですか、あんたは………」
私に気づいたリリアンは元気よく手を振りながら私を呼び寄せてきた。
周りの騎士達に「すみません!!すみません!!」と謝りながらリリアンの元へ。
リリアンの隣には副団長のグレッグがいた。
きっとお守り役として付けられたのだろうが、私としてはグレッグの様なちゃんとした人がリリアンの元にいてくれて安心した。
リリアンはグレッグの事が気に入ったらしく、腕を絡ませ離れない。
そんなグレッグは引き攣った笑顔で対応してくれている。
「ほら、リリアン帰りますよ」
「ええ~、まだいいじゃない。折角盛り上がってたのに」
いえ、盛り上がってるのは貴方だけです。
必死にリリアンの腕を掴んで立たせようとするが、一向に動こうとはしない。
思わず「副団長は対象外ですよ!!」と言いそうになったところで、リリアンの脇を抱えて立たせてくれた人がいた。
「ダンさん!!」
そう。騎士団長のダンさん。
「お嬢さん。そろそろお帰りの時間ですよ?」
ダンさんは優しく笑顔でリリアンに話しかけるが、リリアンは浮かない顔。
「……あ~ぁ、お邪魔虫の団長が来たんじゃ仕方ないわね」
リリアンはダンさんをギロッと睨みつけたが、ダンさんは笑顔を崩さない。
(あれ?)
なんだか様子がおかしい。
ダンさんは対象者なんだけど……
正直、複雑な心境。
ここは乙女ゲームの世界なんだ。ヒロインであるリリアンを応援しなければと思う一方、素直に応援できない自分もいる……
「アルエ!!何してんの!?帰るわよ!!」
「あっ!!はい!!」
騎士の方達に「お世話になりました」と頭を下げ、リリアンの後を追った。
◆◆◆
ところ変わって、私の部屋。
何故かリリアンも当然のように私の部屋にいる。
そして、延々と副団長のグレッグの話を聞かされている。
どうやら、今度一緒に町に行く約束を取り付けたらしい。
大方リリアンがゴリ押しして、押しに負けたグレッグが曖昧に返事を返したのを承知したと思っているのだろう。
(……副団長が攻略対象者なのか?)
本当にダンさんが攻略対象者なのか疑問になってきた。
「ちょっとアルエ!!聞いてるの!?」
「聞いてますよ……グレッグさんが可哀想って話ですよね?」
「なんでそうなるのよ!!……それより、あの騎士なによ?」
リリアンが指さしたのは、壁際に姿勢よく立っているジェフリー君。
「あぁ、彼はジェフリー君です」
「何よ、そのペットを紹介するような言い方は……」
「ペットじゃありません。私の監視役です」
「は?」
リリアンは私が何を言っているのか分からないと言った様子。
まぁ、あの場にいなかったリリアンには分からんだろうから、一連の経緯を話してやった。
その間もジェフリー君は微動だにせず壁際に立っていた。素晴らしい騎士精神。
「……という訳で、ジェフリー君がいる訳です」
「まぁ、彼がいる理由は分かったけど、よくあの団長が許したわね」
「ダンさんですか?ダンさんも承知してますよ?」
「ふ~~~ん」
まだ何か言いたそうなリリアンだったが、私はリリアンの話よりも先に聞きたいことがある。
「……あの、リリアン一つ聞きたいことがあるんですが……」
「なによ」
話す前に、チラッとジェフリー君の方を見て、ちょっとの間だけ二人だけにして欲しいとお願いした。
最初は「任務ですので無理です」などと言っていたが、リリアンが「女性の秘め事を知りたいならいてもいいけど?貴方、顔に似合わずそんな趣味があるのね?」などとほくそ笑みがながら言ったのが効いたのか、真っ赤な顔をして外に飛び出していった。
(何を想像したんだ?)
「ふん。チョロいわね」
「……リリアン、あんまりからかわないであげてくださいよ」
腕を組みながら勝ち誇ったようなリリアンにちょっとだけ苦言しておいた。
「では、本題ですが……──今回の事件の黒幕は誰ですか?」
そう私が聞きたかったのはシュアを雇った者が誰なのか。
この話をジェフリー君に聞かれるのはまずいから、この場から退場してもらったのだ。
リリアンはこのゲームを前世で攻略済みだ。ならば、黒幕を知っていて当然だろ。
……そう思っていたのだが……
「…………………………ない」
「は?」
「…………………らないのよ」
「なんて?」
「だから!!知らないって言ってんの!!」
出たよ。困ったら逆切れ。
というか、知らないとは?
このゲームクリアしたんと違うんかい!?
「……言いたいことがあるなら言いなさいよ」
「では、お言葉に甘えて言わせていただきますが、リリアンはこの世界を熟知しているのではないのですか?おかしいですね。そうなると黒幕を知らないなんて事ありますかね?私が聞いている話と違いますけど?」
一息に言い切った私にリリアンはたじろいだが、すぐに持ち直した。
「……結構言うわね。でもね、これだけは言わせて、確かにこの乙女ゲームは前世でやりこんでクリアしたわよ」
「では……」
「黒幕もわかるだろ」と続けようとしたらリリアンが口を挟んできた。
「あんたが言いたいことは分かるわよ。けどね、私は神じゃないのよ。全部を全部知っていると思ったら大間違いよ」
「……ただ単に忘れただけですよね?」
「──んぐっ!!」
忘れたなら忘れたと素直に言えばいいのにと思うが、この人の性格して無理なんだろうな。
しかし、リリアンが分からないんじゃどうしようもないな……
「あっ!!でも、キーマンは覚えてるわよ!!」
「それを早く言ってください!!」
「ふふふふふっ。聞きたい?」
ムカつくほどの笑顔で私に詰め寄ってきた。
今は遊んでいる場合では無い。
早くしないとジェフリー君が痺れを切らして部屋に入ってくるかもしれない。
「…………こんな事言える立場ではないんですが、早く言わないと友達やめますよ?」
この言葉を聞いたリリアンは明らかに焦ったように「分かったわよ!!」と言ってきた。
私は唯一の友達だからな。
「キーマンは、悪役令嬢のエリーザよ」
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